キツネと龍と天神様

霧間愁

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庶幾う天神曰く

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 男は妖になる夢を見た。

 妖になった男は気ままに生きた。
 永遠にこのまま、生きていけると思っていた。

 何十年、いや何百年と生きた。
 と、ある時、花屋を営む女と見つけた。
 何処か見覚えのある、そんな女。
 妖は女に恋をして、声をかけた。

 あぁ、コレは夢だな。

 男は思った。思ったが、その夢を見続けることにした。
 妖をやめ人間になって、女にプロポーズする。
 数年、何十年と女と共に暮らして、そして女に最後を看取られて死んだ。幸せだった。

 あぁ、やっぱり夢だな。



 男は泣きながら、目が覚める。隣には誰もいない。
 あの夢の女は、別の部屋だ。

 朝餉をすまして、仕事に出かける準備を終わらせる。

 女の、遺影の前に坐って、線香をあげた。

「おはよう、今日は夢でお前に会えたよ。元気そうでよかった。お前は綺麗なままだな、俺なんて前髪に白いものが雑じってきたよ。年をとったなぁ。……、じゃ、いってきます」
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