キツネと龍と天神様

霧間愁

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愛好の天神曰く

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 少し前の話。
 珈琲を嗜むために行きつけの喫茶店でくつろいでおった。

「ホントこの国は、腐ってるわ」
「まぁ、しょうがないわよ」

 小さな喫茶店のきゃりあうーまんと呼ばれるであろう女二人が、小さくない声で話し始めて小一時間。

「個人情報駄々洩れなんだけど」
「あっちの国は、そんなことなかったな」

 二人の結論は、この国が嫌いな様だった。

「税金も社会保障制度も全部クソみたいな国よね」
「ホントそう。税金はあっちの国の方が優遇されてたし、社会保障はこっちの国の方が断然良かった」
「そうそう」

 なるほど。ただ、一部分切り取って比較すると客観的じゃなくなっていくぞ、という言葉を飲み込んで、かわりに珈琲を飲む。
 店員をよんで、お代わり。

「いつまでいるの?」
「えぇ、わかんない。でも、一生この国にいるわけじゃないし」

 ただの愚痴か。
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