キツネと龍と天神様

探索好きの天神曰く

　女は探求者とか捜索者とか言われた。
　それが特に嫌という感情はなかったし、自分の生き様をそんな風な捉えたこともない。
　ただ、自分は厄介ごとに巻き込まれやすいというのは、自覚している。

　女はそんな事を考えながら、小さい女の子を無理矢理に連れ去ろうとする男に飛び蹴りをした。

　蹴り飛ばされた男はごみ収集場所に飛んでいく。
「えっとごめん、あの男の人は貴女の知り合い？」
　女の子は首を振った。
　この辺りの交番の場所を思い出しながら、女は助けた女の子を抱き上げる。小さな悲鳴をあげられたて、女は優しく微笑んで「ごめんね」と言った。

　そのまま交番に駆け込むと、事情を説明する。女が自分の名前を出すと、ベテラン警官の一人が納得したように笑った。
　女の子に「有名人なの？」と訊ねられたが、女は首を振った。

　女は家まで送ることをお願いして、交番外にいた車に近づく。
　中には蹴り飛ばした男がいる。女が近づいてくることに気が付いたのか車は走り出した。