キツネと龍と天神様

霧間愁

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そぞろ歩きの天神曰く

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 寒いとも暖かいともとれる日差しの中、歩いていると薄赤い花びらが風に舞っていた。

「今年は早咲きでしたな」
 二本足で歩く猫の従者の一人が、誰に言うでもなくぽつりとこぼす。
「いやはや、花見も出来ませんでしたな」
 二本足で歩く鼠の従者が猫の従者に合いの手。
「うるさいのう、語らずの優雅さというモノを出せんのか、お前たちは」
 角が生えた巫女が、二匹を軽く蹴りとばした。
「痛いぞ、鬼」「煩い原因をつくっとるのはお前じゃ」「そうじゃそうじゃ」
 鬼の巫女は、微笑みを浮かべたまま従者二匹を踏みつぶそうとする。
「姫様、鬼が鬼じゃ」「鬼が鬼じゃ」
 鬼の巫女がもう一度蹴り飛ばそうと構えると、二匹の従者は蜘蛛の子のように散っていく。

 花びらが風に交じって駆け抜けていく。
 空は青い。
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