キツネと龍と天神様

霧間愁

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察しがよい天神曰く

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 横断歩道手前、歩道の端に雀が一匹、食べ過ぎで死にかけておりました。

 生物というのは、その生命を終えるときに走馬灯なるものをみるというのは、本当の様で、その雀も自分の人生、いえ雀生を振り返っておりました。
「あぁ、よい雀生だったなぁ。美味しいもの一杯食べれたし、空腹で食べ物を探し回るということがなかった。何処に行けば飯にありつけれるか、何処にどんな飯があるか覚えていたし、探し出すこともできた。実に優秀な雀だったと自負している。でも、なんでかモテなかった」
 彼女欲しかったなぁ、と思いながら人間に踏まれないようによろよろと移動しました。
「性的魅力がないってことなんだろうけど、飯を探し出せるという能力は雀としては有能だと思うんだけどな。あぁ、女心は解らんままだなぁ」
 瞼が重い。このまま烏の餌くらいにはなるだろう、と思っていると一匹の雌の雀。
「あ、ちょっとちょっと、こんなところで死んでもらっては困ります。お亡くなりになる前に、飯の場所を全部教えてください。群れの為に」

 死にかけの雀は、その言葉に嫌気がさして死ぬのをやめた。
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