キツネと龍と天神様

霧間愁

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朝帰りのキツネ曰く

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 僕、キツネは闇夜に鳴いた。

 山に独り、ぽつねん。
 日々の生活が満たされていると、唐突に無性に孤独を感じたくなる時がある、贅沢な悩みだと思うわー。と、ある時、酔った勢いでオオカミさんと魔女さんに言ってしまった。
 あぁ、怒られるなコレ。と思っていたら、オオカミさんに抱きしめられ、魔女さんからは「それが普通だ」と肯定された。

「孤独はね、今の自分の幸せを確認するために大切なことだから、ちゃんと孤独になった方がいい。幸せを再認識するための大事な時間だ」
「お前が帰ってこれるように、ちゃんと待っているから」

 心地よい闇の中、人工物のない静寂と森の声。月は雲に隠れている。

 心地よくて僕は、寂しくなった。でも独りって楽だ。
 楽なのに段々と寂しくて、皆の顔が見たくなった。
 感情と思考めいた何かが、整理整頓されていく感覚。

 明日、帰ろう。



 帰ってきて「ただいま」と言った時は恥ずかしくて、嬉しくて心地よかった。
 僕も誰かの帰りを待てるような、そんな存在になろう。

 そう思えたある日の朝だった。
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