キツネと龍と天神様

霧間愁

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むしゃくしゃキツネ曰く

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 僕、キツネの肩を掴んだ猫が必死な様子でとめていた。いや、その眼には慈悲深さと嘲笑と哀れみが混じっていると感じてしまう。

 原因になった魔女さんとオオカミは目をそらし、こちらを見ることはない。
 やってやろうじゃねぇか、と息巻く僕に猫は「気をしっかりもて」と励ましてくる。「固定化された人化を再度行うと、死の危険すらある」と言う。
 いや、ここはひけないんだよ、僕はね。と優しく笑う。


 きっかけはオオカミさんが室内プールがあるジムで毎週泳いでいる、という話からだった。
 「水着を選ぶのが大変よね」「好みのデザインがない」「すぐにダメになる気がする」「体重を絞っても結局残る」等々という同じ言語なのに理解できない言葉がやり取りされ、僕は宇宙的な孤独を感じた。

 そして、最大の裏切り。
 その話への猫がその話に共感したことだ。

 は?
 猫、お前こっち側やと思ってたけど、違うんかワレェ……。



 落ち着いたころ合いに、魔女さんに納豆とアボカドを勧められた。
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