まにゅ恋

とら

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まにゅ恋34

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 本当は地元に帰ったらすぐやろうと思ってたんだけど、その日は疲れていてそのまま休んでしまった。……いろいろあったんだな、とあらためて思ってしまう。
 ───後日。
「間宮。お前ん家行っていい?」
 夏休みの中盤、携帯で俺は間宮に言った。
「……は?」
 電話口で間宮がぼんやりと聞き返した。
「……いや、だからさ。うちの親いるし。あんまり……真純に関わって欲しくなくて」
「わかってる。でも一度ちゃんとあいさつしたいんだ」
 小さく拒絶の色を見せる間宮に、俺は押し切った。
 渋る間宮に待ち合わせの場所をこじつけて、俺は出掛けた。

 * * *

「天音さんに何か言われた?」
 知ってる公園を目印にして、間宮と待ち合わせた。会うなりそう言われて俺は「そうじゃないよ」と否定する。
「やっぱりあいさつした方がいいと思ったんだよ」
 気が進まないのかまだ家に案内しない間宮を急かして押し掛けた。
 二階建ての間宮と表札のある家に来て、少し緊張した。
「お邪魔します」
 玄関口で細面の小柄な女性が出迎える。間宮とは似ていない。少し気が強そうな印象だった。その人が俺を見て動きを止める。
「はじめまして。高橋です」
 にこりと余所行きの笑顔であいさつする。
「間宮くんにはお世話になってます」
「─────」
 間宮のお母さんはしばらくじっと俺の顔をみていたが、やがてやんわりと笑顔になった。
「高橋くん。期末試験で一位だったのよね」
「あ、ハイ……」
 間宮とはそういう話してるのかな、と俺は間宮を見た。間宮は視線を外して話には加わってこない。
「これ母からです。部屋上がっていいですか?」
「あら、ありがとう。もちろん上がって。いまお茶持ってくから」
 家に上げてもらい、二階に上がる際、ぽつりと間宮のお母さんが小声で言ったのがわかった。
「……高校までだからね」
「──────」
 気が引いた。
(わかってるんじゃないか?)
 俺が間宮のなんなのかわかってる気がした。
(なぜだ?)
 間宮が言ったとは思えない。
(どうして?)
 なんかバレることしたんだろうか。
(気のせいかな)
 ───間宮の部屋に入って、
 ガクリと膝をついた。
 部屋に俺の写真が飾られていた。
「…………っ」
「どうしたの真純っ」
 バレるバレない以前の話だ。
「お前俺の写真飾んなよ」
 頭を抱えながら言うが、間宮はなんで? と目を丸くしている。
 しょうがないな……。
 ある意味楽観的と言うか───。
(高校までは何も言われないんだろうか)
 それまで利用価値があると思われてるのか。
 ───じゃあその後は?
 間宮のお母さんの思考を考えてしまう。
 それぞれ大学に行って、それぞれ言われるまま彼女作って、それぞれ生きて行くことになるよう誘導されるのだろうか。
 納得せざるを得ない日がくるのだろうか。
(……いやだ、と思った)
 そんな未来は受け入れられない。
 ぞっとするぐらいいやだった。
 間宮の隣には自分がいたかった。
 いつからこんなこと思うようになったんだろう。
「お茶ここ置いとくわね」
 間宮のお母さんが部屋のテーブルにお茶とお菓子を置いて出ていった。
「──────」
「何考えてるの?」
 間宮が言って、ドアの鍵を閉めた。
「間宮?」
「親に反対されたら、別れるつもりだった?」

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