まにゅ恋

とら

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佐々木の場合(一)

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「……は?」
 思わず俺は聞き返した。
 聞こえなかったのではない。何言ってんだ、この担任は、の聞き返しだ。
「だから」
 佐藤先生は根気よく言い直した。
「高橋が学級委員やりたくないって言ってるんだ。代わりにお前がやってくれないか、佐々木」
 なんだそれは。
(ひいきなんじゃないか、それ)
 不信感が沸き上がってくる中、佐藤先生は構わず続ける。
「佐々木もそういうのむいてるだろ」
「いや、ですが」
 とりあえず反撃してみる。
「成績優秀な方が学級委員やる決まりでしょ?」
 そういう暗黙の了解がこの学校にはあった。
 認めたくはないが、一年のときトップに立っていたのは高橋真純だった。中学入学式のあいさつは自分がしたので入学試験のトップは間違いなく俺だったが、その後一年高橋に勝ったことはなく、二位に甘んじていた。
 だから二年生になってクラス替えをして高橋と同じクラスになったことを知って、学級委員は高橋がやるものと思っていたのだ。
(それなのになんだ、やりたくないって言うのは)
 かけている眼鏡を直しながら怒りをごまかしてると、佐藤先生は、
「いや、佐々木も成績優秀なんだからいいだろ? じゃあ、よろしくな」
 人の話も聞かず、じゃあ、と去って行く。
「……………」
 イラっと見送る先で、廊下で佐藤先生が高橋を見つけた。話はきこえないが、高橋に嬉しげに報告している。
(デレデレすんなっ)
 青筋を額に浮かべる勢いで見ていると、佐藤先生が俺を指差した。高橋がこっちを見る。
 すぐに高橋がすたすたと俺に近づいてくる。
 何人かの他の生徒が高橋を目で追った。
 それぐらい高橋は目立つ容姿をしていた。
 大きな目が印象のきれいな顔立ち。小さな頭に細い四肢。女の子みたいで、ゴツゴツした感じがまるでない。その気はなくてもうっかり目がいってしまう。───それが俺の前で立ち止まった。
 真っ直ぐ俺を見上げて高橋は言った。
「学級委員やってくれるんだって? ありがとう」
 何人かの生徒が興味深そうにこっちを見ている。
「……………」
 確かにきれいな顔立ちをしている。
 だか、と思う。
(男だ、これは!)
 どいつもこいつも!
 イラっとしながら、俺は言ってやろうと口を開いた。
「あのな、高橋───」
 そう思い通りになると思うなよ、と続けようとして───、
「よぉ佐々木!」
 今度同じクラスになった吉川が話に入ってきた。
「高橋と何話してんの?」
 これから話そうとしてんだよっと軽い調子の吉川に、目くじらを立てていると、
「高橋、渡辺先生が呼んでたぜ」
「? そう? ありがとう」
 不思議そうに言って高橋が去って行った。
「おいっ、俺の話はまだなんだよ!」
 ぎゃあとなる俺をまあまあと吉川がなだめる。
「だめだよ。うちの学校で一番の美人にあんま怒ったりすんなよー」
「何が美人だ! あれは男だろうが!」
「わかってるよー。でもこんな地方の男子校にあるまじき美人なんだからさー、大事にしようよ」
「意味がわからん!」
「まあまあ。高橋はさー、むさ苦しい男子校の中のオアシスなんだからさー。潤いがあっていいじゃないか」
「何がオアシスだ!」
 どいつもこいつも! なんなんだ!
 みんなどうかしてる!
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