41 / 72
佐々木の場合(三)
しおりを挟む
(なんなんだ! あいつは!)
廊下を怒りにまかせて歩いていると、何人かの同級生が見ていったが、そんなのは構わなかった。
(なんだって平気で自分の価値が下がる真似ができるんだ!)
どうかしている!
───そもそも。
あれだけ周りが絶賛している容姿も本人は無頓着な気がした。
吉川が高橋に「すげーきれいな顔してるよねー」と誉めたら、「いや、普通だけど」と返していたのを思い出す。
歩みをゆるめて俺は思考を続けた。
勉強も死ぬほど頑張ってる感じはしない。なのに成績はいい。運動もそつなく出来るくせに運動部には入っていない。
周りは高橋に興味津々なのに、本人は一人でいることを好んで、つるんでいるのは堀ぐらいだ。
(……なんなんだ)
大丈夫なのか、と変に心配になってくる。
あまり自分に関心がないんじゃないか、と思ってしまう。と同時に他人にも関心がないんじゃないかとも───。
あれだけ恵まれたモノを持っているのに。
───いつの間にか保健室の近くに来ているのに気付いた。
放課後、生徒会室まで行く気だったのに、逆方向に来ていた。引き返そうとして───高橋を見かけた。
一人ではない。上履きのラインの色から三年の先輩だと知れた。確か宮田さんだ。あまりいい噂は聞かない。そんな人が高橋に熱心に喋りかけ、保健室に一緒に入ろうとしている。
(……まずいんじゃないか)
確か保健室の先生は今日いなかったはずだ。
変なマネするんじゃないのか───?
でも、とも思ってしまう。
知ったことか、少しは痛い目に合えばいいんだ、とも思ってしまう。───だが、
「……………」
俺は高橋らに近づいた。
「高橋」
声をかけると宮田先輩があからさまにうろたえた。
「渡辺先生が呼んでたぞ」
言うと、高橋はぱちくりと瞬きした。
「そう? ありがとう」
俺に礼を言って、高橋が去って行く。
「……じゃあ俺も」
逃げようとする宮田先輩に、
「あんまり仕出かさない方がいいんじゃないですか?」
そっと釘をさす。
「な、なんだよ! 後輩のくせに生意気だぞ!」
「内申書にひびいても知りませんよ?」
怒り出す宮田先輩は、俺の言葉に押し黙った。そのままカッとしたように、高橋とは逆方向に逃げて行った。
(……ったく)
こういうの高橋多いのか?
面倒だな、そういうのも。
でも本人は警戒心ゼロだったな、と思いながら校舎を出て、別校舎の生徒会室に向かおうとしていると、
「佐々木」
と呼ばれた。堀だった。
「高橋守ってくれてありがとう」
と言われた。
「……別に守ったわけじゃ」
見てたのか、と居心地が悪くなっていると、
「高橋こういうの多くて。俺もできるだけ対処してるけど、部活で手が回らない時があって。だから俺が駄目なとき佐々木が面倒見てくれないか?」
「……は? なんで俺なんだよ」
「変な気起こさないやつが必要なんだ。そういうのから避けたいんだ」
「本人に言えよ」
「いや、その本人無自覚で。自分が言い寄られてるのわかってないんだ」
「……は? なんじゃそりゃ?」
「とりあえず考えておいてくれないか」
「じゃあ誰かとくっつけちゃえばいいじゃないか? 変に人気あるし」
「そういうわけにもいかないだろ。って、ちょっと待ってて」
こっちの意思も聞かず堀がその場を離れた。
(なんだよ……)
呆然としていると、
「……おい」
背後から声がかかった。高橋だった。
「渡辺先生、俺のこと呼んでないって言ってたぞ」
怒っているようだった。
「なんで嘘いったんだよ」
「いや、嘘って……」
「今後止めてよね」
そのまま言い残して荷物を持って校門を出ていく。帰るようだ───。
(……って、はあぁぁぁぁっ?!)
なんだよ、助けたのに! やんなきゃ良かったっ。
イラっとしていると堀がいつの間にか戻ってきていた。
「高橋なんだって?」
状況がわかってない堀に今後一切助け船なぞ出さん! と言おうとしていると、
「───あの」
小さく声をかけられた。
「高橋真純……さんと友達なんですか?」
他校の生徒だった。ボサボサの髪。黒ぶちの眼鏡をかけている。
「はあぁっ?!」
誰が友達だ?!
廊下を怒りにまかせて歩いていると、何人かの同級生が見ていったが、そんなのは構わなかった。
(なんだって平気で自分の価値が下がる真似ができるんだ!)
どうかしている!
───そもそも。
あれだけ周りが絶賛している容姿も本人は無頓着な気がした。
吉川が高橋に「すげーきれいな顔してるよねー」と誉めたら、「いや、普通だけど」と返していたのを思い出す。
歩みをゆるめて俺は思考を続けた。
勉強も死ぬほど頑張ってる感じはしない。なのに成績はいい。運動もそつなく出来るくせに運動部には入っていない。
周りは高橋に興味津々なのに、本人は一人でいることを好んで、つるんでいるのは堀ぐらいだ。
(……なんなんだ)
大丈夫なのか、と変に心配になってくる。
あまり自分に関心がないんじゃないか、と思ってしまう。と同時に他人にも関心がないんじゃないかとも───。
あれだけ恵まれたモノを持っているのに。
───いつの間にか保健室の近くに来ているのに気付いた。
放課後、生徒会室まで行く気だったのに、逆方向に来ていた。引き返そうとして───高橋を見かけた。
一人ではない。上履きのラインの色から三年の先輩だと知れた。確か宮田さんだ。あまりいい噂は聞かない。そんな人が高橋に熱心に喋りかけ、保健室に一緒に入ろうとしている。
(……まずいんじゃないか)
確か保健室の先生は今日いなかったはずだ。
変なマネするんじゃないのか───?
でも、とも思ってしまう。
知ったことか、少しは痛い目に合えばいいんだ、とも思ってしまう。───だが、
「……………」
俺は高橋らに近づいた。
「高橋」
声をかけると宮田先輩があからさまにうろたえた。
「渡辺先生が呼んでたぞ」
言うと、高橋はぱちくりと瞬きした。
「そう? ありがとう」
俺に礼を言って、高橋が去って行く。
「……じゃあ俺も」
逃げようとする宮田先輩に、
「あんまり仕出かさない方がいいんじゃないですか?」
そっと釘をさす。
「な、なんだよ! 後輩のくせに生意気だぞ!」
「内申書にひびいても知りませんよ?」
怒り出す宮田先輩は、俺の言葉に押し黙った。そのままカッとしたように、高橋とは逆方向に逃げて行った。
(……ったく)
こういうの高橋多いのか?
面倒だな、そういうのも。
でも本人は警戒心ゼロだったな、と思いながら校舎を出て、別校舎の生徒会室に向かおうとしていると、
「佐々木」
と呼ばれた。堀だった。
「高橋守ってくれてありがとう」
と言われた。
「……別に守ったわけじゃ」
見てたのか、と居心地が悪くなっていると、
「高橋こういうの多くて。俺もできるだけ対処してるけど、部活で手が回らない時があって。だから俺が駄目なとき佐々木が面倒見てくれないか?」
「……は? なんで俺なんだよ」
「変な気起こさないやつが必要なんだ。そういうのから避けたいんだ」
「本人に言えよ」
「いや、その本人無自覚で。自分が言い寄られてるのわかってないんだ」
「……は? なんじゃそりゃ?」
「とりあえず考えておいてくれないか」
「じゃあ誰かとくっつけちゃえばいいじゃないか? 変に人気あるし」
「そういうわけにもいかないだろ。って、ちょっと待ってて」
こっちの意思も聞かず堀がその場を離れた。
(なんだよ……)
呆然としていると、
「……おい」
背後から声がかかった。高橋だった。
「渡辺先生、俺のこと呼んでないって言ってたぞ」
怒っているようだった。
「なんで嘘いったんだよ」
「いや、嘘って……」
「今後止めてよね」
そのまま言い残して荷物を持って校門を出ていく。帰るようだ───。
(……って、はあぁぁぁぁっ?!)
なんだよ、助けたのに! やんなきゃ良かったっ。
イラっとしていると堀がいつの間にか戻ってきていた。
「高橋なんだって?」
状況がわかってない堀に今後一切助け船なぞ出さん! と言おうとしていると、
「───あの」
小さく声をかけられた。
「高橋真純……さんと友達なんですか?」
他校の生徒だった。ボサボサの髪。黒ぶちの眼鏡をかけている。
「はあぁっ?!」
誰が友達だ?!
0
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる