ロストユニバース(リメイク)

清水っち&お手伝いy

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家族

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ロストユニバース 第1章1話
 薄暗い森の中を少年が歩いていた。全身が濡れていて熱も出ているようだ。
 ふらつき、時に転びながらも。少年はそのたびに起き上がりどこかを目指して歩いていた。
 そして少年がしばらく歩いた後。目の前に男が現れた。

「んっなんでこんな時間にこんなおさない少年が」

 少年はふらつきながらも歩いていたが、ついに男の目の前で倒れてしまう。

「 おいどうした!!」

 目の前で倒れた少年に驚いた男が駆け寄って行く。
 少年を抱きかかえ男は声をかけた。
「だいじょぶか!!」
 声をかけたが、返事はなく。少年は気を失っていた。
 少年を抱えて、男はすぐに家に帰った。

「イリーナ、大変だ!」
「リチャードどうしたのその子」
「仕事をしていたら、急に表れて倒れちまったんだっ!」
「それは大変。今ヘミンの服を取ってくるから、あなたは服を脱がして体を拭いていて頂戴」
「わかった!」

 濡れていた服を替え、体を拭かれた少年はベットに寝かされていた。

「それで何があったのよ」
「この子が森をほっつき歩いてて、そんで俺の前で倒れたんだ」
「あんなに濡れて、熱も高いし。いったい何があったのかしら」
「それは俺にもわからねぇ」

 二人して頭をひねっていると、部屋の中に二人の子供が入って来た。

「わーい。んっ? だれーそいつ」
「ヘミン、今は部屋の外に行ってなさい」
「ほらヘミン、お母さんと一緒にご飯の準備をしましょ」
「わかった!」
 イレーナがうまいことヘミンを部屋から連れだしていった。
リチャードは、ただただ少年を心配そうに見つめていた。

  2日後。少年の熱は無事に引き。体調は安定していた。
「熱はだいぶ下がってきたが、それでも無理は禁物だ。もう少し寝てなさい」
「うん」

 少年はうなずきそして「ありがとう」と言った。
 そして、もう一日が経つと。少年はベットから起き上がれるようになった。

「もうこれで大丈夫だろう。そういえばお前さん家はどこなんだい」

 リチャードは疑問に思っていた。山の中になぜ子供がいたのか。そしてこの子はどこの子なのだろうかと。
 木こりをしているリチャードの家は山の中にあり。この周りには家がなかった。近くの村も子供の足では少し遠い。

「わからない……」
 少年は表情を暗くしながらそう答えた。

「自分の家が分かんないのか?じゃあ名前は」
「わからない……」
「名前もか」

 リチャードはそのあとも家族のことなどを聞いてみたが、少年は何も覚えてはいなかった。
 リチャードは困り果てていた。この少年をどうしようかと。このまま放ってしまうことは簡単だが。それでは気分が悪かった。
 そしてリチャードは決断した。自分の家の子として育てようと。近くの村に連れて行って、この子の家を探そうと。
 まずリチャードはこの少年の名前を決めることにした。家族になったんだから、お前と呼ぶのは不便だったからだ。
「リアム。お前の名前はこれからリアムだ」
「リア……ム」
 リアムと言う名はヘミンの死んだ兄の名前だった。ヘミンが生まれる前に死んでしまったので、ヘミンは兄がいるということもリアムと言う名も知らなかった。

 少年の名前がリアムと決まってから数日が経った。
 リアムは家の中から庭で遊ぶヘミンを見ていた。話しかける勇気がでなかったのだ。だがこの日は違った。ヘミンの方からリアムに話しかけてきたのだ。

「リアム何してるんだ。そんなところで見てないで一緒にあそぼうよ!」
「うん!」     
 話しかける勇気はなかったが、話しかけられてからは早かった。すぐに二人は仲良くなったのだ。
「気をつけて遊ぶのよ」
「わっかてるよ!じゃあ、いってきまーす」
「いってきます」

 イレーナに見守られながら降らしは遊びに出かけた。
 外に出た二人はボール遊びをしていた。
「リアム、パス!」
「うん」
 リアムは走りながボールを受け取る。
 木の枠の中にボールをキックし、リアムは見事ゴールした。
 二人は立ち止まって、はあはあと息を乱していた。
 そして疲れた二人は、大木の下で休んでいた。

「リアムってどこから来たの?」
「わかんない」
「そうなんだ。なんかごめん」
「ん~ん気にしないで」

 二人は何も話さないまま、空を見ていた。

「思い出せないん。ぼくがなんであのもりにいたのか、そして家がどこなのか。家族の事も、何にも」
「思い出せるといいね! おれもお母さんたちと離れたら悲しいもん」

 そして6ヶ月が経った。
 この6ヶ月の間リアムは思ったことがあった。
 このままで良いんだろうか、ここでのんびり暮らていていいんだろうか。
 何かやらなきゃいけないことがあった気がする。
 ないか大事なことが……と。そしてそのたびに頭痛に襲われるのだ。
 痛む頭を押さえそして最後にいつも同じことを考えるのだ。
 大事な何かのために旅をしていた気がすると。

 ある日の夜。
「ねえリチャードさん、イリーナさん。は、話があるんだけど」
「どうしたの?」
「ほら何でも話してごらんなさい」

 意を決してリアムは口を開いた。

「僕旅に出たいんだ」
「何だって?」
「旅に出るって。とにかく話してみなさい」

 イリーナもリチャードも困惑していた。

「どうしても旅へでなくちゃいけないんだ。このままじゃ駄目なんだ。僕には、大事な役目があるんだ」
「旅なんてっ」
「リチャードは黙ってて。リアム、何か思い出したことがあるの?」
「うん。僕何か大事なことのために旅をしてた気がするんだ」
「そう。でもあなたはまだ子供なのよ。旅なんて危ないわ」

 イリーナの言うことは正しかった。この世界は危険にあふれている。盗賊や妖獣と呼ばれる化け物だっているのだ。そんな世界を子供一人が手美をするというのだから。止めるだろう。
 だがリアムの決意は固かった。おもむろに右手を上げて、何かをつぶやくと手の上に黒い炎が現れた。それも火の玉の形で宙に置いているのだ。
「大丈夫。魔法だって使えるし」

 これには、リチャードもイリーナも目を見開いて驚いた。魔法という言葉を耳にしたことはあっても目にしたのはこの時が初めてだったのだから。

「全部じゃないけど。僕思い出したんだ」

 そう言ってリアムは思い出したことを二人に話し始めた。
 何か大事な使命があって、そのために旅をしていたこと。そして川に落ちてしまったこと。
 その使命をしなければ、世界が大変なことになるということ。
 イリーナとリチャードはそろってため息をついた。話の内容もそうだが、リアムの目が本気だったからだ。
 2日後。家の前には旅の支度をしたリアムとイリーナ、リチャード、ヘミンがいた。

「イカれたやつには、気を付けろ。この世にはろくなやつがいやしねえからな。あと妖獣にも気をつけろ。魔法を使えるって言っても、お前さんはまだ子供なんだから。それから俺が昔使ってた ジェム  大事に持っとけよ。あとは……」
「あなた話が長いわよ。リアムちゃんとご飯を取りなさい、それと飲み物をしっかり飲まないと駄目よ。あとは体調に気をつけなさい」
「お前も話し長いじゃねえか」
「私はいいのよ」

 その場が笑いに包まれた。

「わかってるよ。イリーナさん、リチャードさん。今までこの6ヵ月間がありがと。いろいろ無理言ったり、迷惑かけちゃってごめんなさい」
「いいんだ。だって」
「私たちは家族でしょう?]
「イレーナそれは俺が言おうとしたのに!」
「言うのが遅いあなたが悪いのよ」

 リアムはその言葉に少し涙を流した。家族だと言われたことがうれしかったのだ。

「リアム、俺リアムが帰ってくるの待ってるからな!」
「うん、ヘミンお兄ちゃん」
「あら、お兄ちゃんですって。ヘミン、これからちゃんとお兄さんらしくしなきゃね」
「うん! リアムは俺の弟だから。だから、困ったときは絶対に助けにいくらからな!」
「じゃあ僕はヘミンお兄ちゃんに助けられないくらい強くなる」
「じゃあ俺はもっと強く」
「ほらそこまでにしておかないと、話が終わらなくなっちまうぞ」

 ずっと続きそうなその会話をリチャードが止めに入った。

「リアム、貴方は私たちの家族よ。だからいつでも帰って来なさい」
「イリーナの言う通り。血はつながってなくても、家族なんだ。お前の帰ってくる場所はこの家だからな」
「はい!」
「行ってこい」
「気をつけるのよ 」 
「また帰ってこいよー!!」
「行ってきます!!」

 家を離れ、森の中をリアムは歩いていた。その胸中は寂しさで溢れていた。
 家族と別れて、すごい寂しい。だけどこの出会いと別れを乗り越えて、新たな一歩を踏み出すんだ!
 これから何があるかわからないけど、何があろうとも屈しない。
 それを乗り越え、記憶を取り戻し。必ず目的を果たす。
 出会いと別れを経験し、新たな決意を胸に。リアムは一歩また一歩とその歩みを進めるのだった。
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