【完結】聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん

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28 何言ってんの??

(大樹)

「これはこれはニコラ殿下。」

ザイラスがそう言って頭を下げると、近くにいたアルベルトも同じく頭を下げる。
俺はニコラ……と記憶を引っ張り出し目の前の人物について思い出した。

あ~確か正妃様の子供、レオンハルトの弟か。

資料室で読んだ王族の名前からそれを理解し、『へぇ~、こいつがな~。』などと思いながらついついジロジロと不躾な視線を送ったが、ニコラは全く気にした様子を見せない。
それどころかこんな小汚いおっさんである自分に、非常に好意的な視線を向けてきたので、およよ??と少々戸惑ってしまう。

「……ど、どうも~?」

とりあえず軽い挨拶を返したが、レオンハルトとは違いこのニコラという男はやはり全く気を悪くした様子はなく嫌味のない笑顔を見せてきた。

耳に聞こえるのは全く乱れのない心音。
どうやらアルベルトが言った通り、ニコラは性悪正妃であった母親とは全く似なかったらしい。
対してレオンハルトはニコッと笑いながら挨拶を返すが、何とも複雑な心音を鳴らす。

まぁ複雑な気持ちなのは分かる、分かる。

そう考えながらあえて口をださなかったが……その間も手を離してくれないレオンハルトに少々困っていた。

いや、お手々つなぎって……迷子の子供か。

さり気なく外そうとしても更に強く握り返してくるため、仕方なくそのままにしていたが、ニコラはおやっ?とそれに気づき更にニコニコと笑う。

「随分とお二人は仲がよろしくなったのですね。
戦いは時に人の心を通わせると言いますが……とにかく犠牲者も出さずにこうした功績を上げられたのは本当に凄い事だと思います。
今後も国のために尽力する兄様を支えていきたいと思っております。
此度は心よりお礼を申し上げます。」

『王位争いから潔く身を引き、次期王になるレオンハルトの力になりたい。』

本心からそう言っている事が分かったので、ニコラという男に好感を持った俺はニコッと軽く笑顔を見せる。
別に何かの意図があって笑ったわけではなかったのだが、何故かレオンハルトの雰囲気が冷え冷えとしていくのを感じ、俺は驚いてレオンハルトを見上げた。

「……随分嬉しそうに笑うのですね。────私の時にはあんなに酷い態度だったくせに……。」

ボソとつぶやかれる言葉は非常に刺々しく、『不快』『怒り』を全面に出したものだったので、俺はおろかニコラもザイラスもアルベルトも驚いて言葉をなくす。
そのまま全員で黙っていると、ブツブツとレオンハルトは更に続けて不満を口にし始める。

「そもそも恥ずかしくはないのですか?色々な人間に触れられてヘラヘラ笑って。
やっている事が娼婦と同じですよ。あぁ、お金が欲しいなら差し上げましょうか?
────で?いくら欲しいんですか?」

「……レ、レオンハルトく~ん?君は、一体どうしたのかな~?」

初めて見るレオンハルトの様子に戸惑い、掴まれていない方の手でレオンハルトの肩に触れようとしたのだが……その手をバシッ!と掴まれてしまい、更にそのまま両手を引っ張られる。
それによりおでこがつくくらいの距離までお互いの顔が近づきギョッ!としたが、レオンハルトは動揺する様子もなく、その目は非常に冷ややかのまま。

「子供扱いしないでもらえますか?俺が子供じゃない事は大樹様がよ~く知ってますよね?」

先程の情事を匂わす言葉に慌てたのは俺のほうで、目が点になっている周りの人達に聞こえない様ヒソヒソとレオンハルトに囁いた。

「おっ……お前、ホントどうしちゃったんだよ……。
ほら、変な噂回っちゃうぞ~?
こんなくたびれたおっさんと……なんて不名誉な噂立っちゃったら、ちょ~っと不味いんじゃないの~?絶対可哀想って思われるやつ。」

「……別に?私は何にも不味くないですし、可哀想ではありません。
嘘じゃないですしね。
可哀想なのは大樹様の方でしょう?私に好き勝手に扱われて可哀想に。
反応が慣れていませんでしたけど、お体は大丈夫ですか?
いつも余裕たっぷりの大樹様があんなに乱れて私に縋って────……。」

「わ────────っ!!!お前、ホント何言っちゃってんの!!?」

とんでもない事を言い出したレオンハルトに驚き、即座に振りほどいた手でその口を塞いだが……レオンハルトは焦るどころか、非常に満足そうな様子であった。
そしてニコラやザイラス、アルベルトのみならず、何事かと注目していた周囲の人達にまで見せつける様にニヤッと意地悪い笑顔を見せたため、俺は慌ててその場からレオンハルトを連れ去った。
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