【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
776 / 1,649
第二十二章

760 悲しい話

しおりを挟む
(フラン)

以前悪さをしようとした貴族の生徒達。
それに注意をしようと、私自らがその生徒達の元に行ったのだが……彼らは偶然通りかかったリーフ殿を見つけた瞬間、ヒヒィ───ン!と子馬の様な声を上げ一目散に逃げていってしまった。
それを思い出すと私も……!

「…………~っ。」

思わず口から飛び出そうになる笑いを必死に抑え込み、改めてその学院内で嵐の中心に存在しているリーフ殿のことについて考える。

その容姿からメルンブルク家から酷い扱い……いや、憎まれている存在であるリーフ・フォン・メルンブルク殿。

現在メルンブルク家の人間達はリーフ殿をどうにかして秘密裏に消そうと躍起になっている様だが、現在全て失敗に終わっている様だ。
だが、学院の入学院試験の際、リーフ殿の暗殺未遂事件があったと聞いた時は流石に驚いた。
それを元第二騎士団団長であるドノバン殿から聞いて、その気配の消し方からも、恐らくはトップレベルの実力者達を相当数集めての作戦だったのが伺える。

『何かしらの対策を……。』

そうドノバン殿に提案しようとした瞬間、私の脳裏にはリーフ殿の隣にいる恐怖の存在が浮かび上がった。
途端に震えだす私を見て、ドノバン殿はバチンっとウィンクをし『大丈夫だから気にすんな~。』と言って私の肩を軽く叩く。
そして更に続けて『まぁ、2人には学生生活ってやつを謳歌させてやってくれよ。』とだけ言い残し去っていった。

「……リーフ殿は自分の両親を、そして自分を取り巻く環境を恨んだりはしないのだろうか?」

ボソッと呟いた言葉にセリナとレナは笑いを治め、曖昧な笑みを浮かべたまま黙った。

両親は子供にとって『始まりの場所』で、絶対的に安全なその場所から子供は世界の姿を見て育っていく。
世界は厳しく、残酷で、冷酷で、そんな場所に何も持たずに丸裸で出ていけば、あっという間に自分の全てが壊され引きちぎられてしまうだろう。
だから最初、リーフ殿と会うまでは『自分を捨てた親を憎み、世を憎み、全てのモノ達に復讐を……。』と考えている人物であると想像していたが、その考えは100%裏切られた。

「う~ん……。何だかリーフ君ってちょっと変わった距離感を持っているというか……凄く客観的なんですよね。
でも、自分には関係ないって感じの客観的ではなくて、何だか違う世界に住んでいる人って感じかな?
だから恨みとか憎しみとか、そういった感情を持つイメージがないんですよね~。
私、リーフ君を見ると、あの猫ちゃんを思い出すんですよ。
あの踊る───……。」

「あぁ、【シュペリンの踊り猫】ですか?」

レナが思い出せずに考え込んでいると、横からセリナが答えた。
するとレナは思い出したと言わんばかりに「そう、それそれ!」と答えた後、話を続ける。

「あの猫ちゃんってフラッとどこからか現れて、勝手に踊りだして、周りの人たちがそれにつられて踊りだすじゃないですか~。
戦火によって焼かれた地や建物を直すわけでもなく、けが人を治したり何か言葉を掛けるわけでもない。
ただ歌って踊るだけ。
なのに周りの人たちは動き出すんですよ。
自分にできることを探して動き出す、その結果国は蘇っちゃうんです。
その頃には猫ちゃんはどこにもいなくなっていて、それ以後誰一人その姿を見たものはいない───って形で終わっているから、諸説では絶望に沈んだ人たちに『希望』を与えては去る妖精の話では?とも言われてますよね。」

「……確かに言われてみれば似てるかもしれんな。
では、今まさに踊っているリーフ殿の後ろで、生徒達は踊りながらついて行っているところか。」

中々当を得ている話に多少の愉快を感じそう答えたが、横でそれを聞いていたセリナは、少なくとも愉快は感じてなさそうな様子でポツリと呟いた。

「その本、確かにそういった見方があるのですが……私はとても悲しい話に見えるんですよね。
人々に『希望』を与えた猫は、その後、一体どこに行くのでしょう?
一生一人で楽しく踊って人々に『希望』を与え続ける?
それって凄く孤独で……どの世界にも居場所がないんじゃないかってどうしても思ってしまいます。」

考えたことのない視点からの言葉に、レナと私はまた黙る。

確かに孤独といえば孤独……なのかもしれないな。

何となくスッキリしない気持ちを抱いていると、塔の前に待機していたクルトとルーンがこちらに気づいて直ぐに駆け寄ってきた。

「フラン学院長!来てらしたのですか!」

「セリナにレナまでいるのかよ!勢揃いで見学なんて初めてだな。」

クルトとルーンは私達を見渡し、驚いた様子をみせたがその後直ぐに「「気持ちは分か(るけどな!)りますがね!」」と言って笑い、その後ろにズラッと並ぶ他の教員達も同様に笑った。
しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

処理中です...