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第二十三章
778 変えるために
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「へぇ~。そうなんですか~。
────んん??でも、水葬する場所にしては『希望と始まり』って名前、何だか不思議な感じがする……。」
『お別れの~』とか『神聖なる~』などならしっくりくるけど……?
何だかそれだと正反対の意味に聞こえなくもないと思い、軽く尋ねてみたのだが……思いの外フラン先生は真剣な様子でそれに答えてくれた。
「それは名前の由来が、その街で起こった歴史によって名付けられたモノなのだからだ。
────約1500年前、初めてドロティア帝国の侵略を受けた際、その<ボイール>でも激しい戦闘が行われ、街の者達は必死の抵抗を試みた。
しかし戦いに特化したドロティア帝国は強く、更に抵抗している間にも次々と他の街が落とされていき、戦いは一方的なモノへと変わっていったそうだ。
そしてとうとう最後は門を突破され、殺されるのを待つだけの状況になってしまった。
……本当に酷い状況であったと、ガンドレイド王国に残る歴史書には思わず目を背けたくなる様な現実が書かれているよ。
『人』はそこまで残酷になれるものなのか?と思う程にな……。」
フラン学院長はそれを思い出し、気分が悪くなったのか一旦言葉を切る。
そしてふぅと息を吐き出した後、また話を続けた。
「そして<ボイール>に残された人々の選んだ道は『自決』だった。
酷い拷問を受けて殺されるよりは……と考えた街民達は、全員その場所に向かったそうだ。
そして先頭に立っていた者が飛び降りようとした、その瞬間────アルバード王国が隊を率いて助けにきてくれたのだ。
<ボイール>は、初めてアルバード王国が助けに入った街で、そして初めてドロティア帝国の兵に勝利した場所になった。
そしてそれを始まりとしてアルバード王国は次々と街を開放していき、ついにはドロティア帝国をガンドレイド王国から退けた────というわけだ。」
「そうだったのか……。だから『希望と始まりの~』っていう名前がついているんだね。」
納得した俺が腕を組みながら頷くと、フラン学院長もウム!と頷いてそれを肯定した。
「ドワーフ族はそれに感謝をし、その恩を決して忘れぬため、その神聖な場所にイシュル像とその戦いに使って壊れた武器達を直して飾ったのだよ。
今では有名な観光地にもなっているから、いつでも見に行けるぞ。
アルバード王国から最短で行ける場所故、今や<ボイール>は一番の観光客が多い事でも有名だしな。」
俺はその話しを、へぇ~と聞いていた、その時だった。
────バシュッ!!!!
突然空中に大きな音が鳴り響き、次の瞬間赤い煙が空に向かってまっすぐ伸びていった。
それを目にしたフラン学院長を始めとした教員達や、その場にいる生徒達全員の顔色が変わる。
「緊急伝煙っ!!あれは……冒険者ギルドの方かっ!」
フラン学院長がそう叫ぶと、煙と同時に飛びだっていた大量の<伝電鳥>達が四方八方に散らばり『声』を伝える。
《緊急事態発生!各所警戒大、至急戦闘準備を!
守備隊は速やかに街の人々の避難開始、更に冒険者ギルド、傭兵ギルド、ライトノア学院は各担当エリアへ!!
繰り返す────……。》
緊急を要する内容に全員がざわつく中、俺は『ついに来たか!!』と息を飲む。
あの悪夢とも言えるグリモアの惨劇。
それを創り出す黒いモヤモヤの化け物がついに来た!
フラン先生はざわつく周囲を一喝する様に、大声で教員達に指示を出し始めた。
「クルトと前衛担当教員は、学院内にいる生徒達を闘技場へ避難誘導開始!
ルーンと後衛担当教員は、闘技場に防御結界と更に学院内の結界も重ねがけを!
そしてセリナとレナ率いる残りの教員達は、南門へ向かい戦闘準備!
何が起ころうとも、何人たりとも街や学院へ入れるな!」
「「「「────はっ!!!」」」」
一斉に返事を返した教員達は直ぐに動き出し、それぞれ指示された場所へと迅速に向かう。
「お──い!!この場にいる生徒達は聞こえたと思うが、直ぐに闘技場へと向かえ!
そして必ず教員達の指示があるまで、そこで待機だ!頼んだぞ!」
唯一その場に残っていたクルト先生は大声で叫ぶと、他の教員達同様、直ぐに走り去ってしまった。
周りにいる生徒達は突然の物々しい雰囲気に驚きざわざわしだし、いつものメンバー達も狼狽えながら俺の方へ駆け寄ってくる。
「一体何が起きたのかなぁ?さっちゃん怖いよ~。もしかして凄いモンスターでも襲ってきたのかな?」
「いや、モンスター行進じゃないのか?だったらやべーよな……大丈夫かよ。」
「もしかしてその兆候が……?」
サイモンが不安そうな声を上げると、レイドとメルちゃんがモンスター行進の可能性を考えたらしく難しい顔で唸った。
しかし、同じく難しい顔をしているモルトがそれを否定する。
「────いや、モンスター行進なら、緊急伝煙が上がる前になにかしらの連絡が各所に来ているはずだ。」
「確かにおかしいっすね……。とりあえずは、先生の言う通り闘技場に行った方がよさそうっす。」
ニールが手を頭の後ろに組み、困った様に大きくため息をつくと、それに対しリリアちゃんは頷き「とにかく情報が足りない時はむやみに動くべきではないわね。」と冷静な判断を下す。
ソフィアちゃんは、そんな皆と不安そうにしている周りの生徒達を見渡し、安心させようと声を上げた。
「皆さん、どうか落ち着いて下さい。
たしかに今は情報が足りませんので、むやみに動かず一旦闘技場へと向かって下さい。
私とアゼリアはこれから教会へ向かい、情報を集めて参りますので、どうか信じてお待ち下さい。」
アルバード王国の第1王女の言う言葉に、全員がお互い目を合わせながら頷き、ゆっくりと移動を開始しようとした、その時。
俺は空を見上げて、両手の拳を高らかに上げて大声で叫んだ。
「おっしゃぁぁぁぁ────!!!何であっても俺が絶対にぶっ飛ばしてやるぞ────!!」
耳がキ──ンとするような大声に皆が耳を塞いだが、叫んで気合を入れた俺は続けて皆に告げた。
「皆!俺冒険者だからギルドに行ってくるね!じゃあ、また後で!
レオ────ン!!行くぞっ!!」
「はい。」
なんだかいつもより上機嫌でふわふわした雰囲気のレオンが、すかさず多次元ボックスから俺の冒険者用の白シャツと焦げ茶のベスト、自分用の黒いマントを取り出すと、二人揃ってそれに素早く着替える。
そしていつもの戦闘スタイルになった俺は、ポカ~ン……とする皆の視線が集まる中、身体強化を掛けて全速力でギルドへと向かって走った。
未来をこの手で変えるために。
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