【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

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第二十六章

(リリア)888 一番の女

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(リリア)

目の前で伏せたまま動けない様子のナックルは、ヒクヒクと口角を上げながら媚びるような目で私を見上げる。

「た、助けてくれ……。」

「悪かった……。」

「つい調子に乗っちまって……。」

そんな命乞いをしてくる姿は過去に見た誰かさんそっくりで、心の奥底から嫌悪感と不快感が湧き、盛大に眉を潜めた。

兄さんやリーフ様、大事な仲間たちを害そうとするゴミ男を許すわけないのに。

私はひたすら命乞いをしながらも、これからも人を踏み台にして生きていくであろうナックルを冷たい目で見下ろし、昔の事を思い出していた。

◇◇
周囲の人に対して、初めて感じた気持ちはちょっとした嫌悪感。

周りより発達が良かった膨らみ始めた胸や、バランスよく伸びていく長い手足。
そんな体をジロジロと見てくる異性の同級生や先生、道行く見知らぬ人達に、その視線の意味は分からずとも、好ましいと感じる類のものでないことは確かだった。
そしてその視線達は私が大きくなっていくのに比例して、強く、気味の悪い欲まで混じってくる様になると、私の心にはそれに対する怒りや憎しみが常に蔓延るようになる。

『いいよね~。リリアちゃんはスタイル良くて。私なんて貧乳だし~、何か大人って感じで羨ましい。』

異性からの気持ち悪い視線に加え、同性の同級生からは自分を下げる様で上げるマウント。
更に教師顔負けの頭脳を持っていた私に対し『子供のくせに気持ち悪い』とハッキリ言ってくる人達もいた。
悪意を含む沢山の感情が乗った視線達は、常に私を苦しめる。
そしてそんな好意的ではない視線達は私だけに向くものではなく、男の身で一人子供を産んだ母やエルフ族の価値観に全く合わない容姿を持って生まれた兄にも向けられていた。

人と違うモノを持つということは、常に私と世界の間に大きな一線を引く。
自分の立ち位置が分からないまま、周りからの嫌悪や嫉妬などのぐちゃぐちゃな感情に晒されて、私は毎日を過ごさなければならなかった。

私はただ、大好きな母と兄と共に三人で暮らしたかっただけ。
しかし周りはそれを叶えてはくれない。

私が生まれながらに持っていた人より優れていた能力《頭脳》は、エルフの国では非常に重宝されるモノで、まだ成人前にも関わらずその話を聞きつけた沢山の権力者達や金持ち達がお見合いの話を持ってくる様になる。
『自分の息子と~』という話はまだ可愛いモノで、その殆どが親子ほどの年齢差、かつ結婚までしているというのに、今の正妻を愛人に降格させて────などという、ふざけたモノが多々あった。

『優秀な正妻がいれば家業は安泰。今の妻は愛人にするから正妻となって家業をもっともっと発展させてくれ!』

『事業を拡大したいと思っているから、ぜひその頭脳を僕の妻となって正しく使ってほしい。』

『高い知能を持った跡取りがほしいので、沢山子供を生んで欲しい。』

私という『個』を完全に無視した言い分には、怒りと憎しみしか浮かばないというのに、そんな男たちは自信に満ちた顔をしながら沢山の高価な贈り物を持って家にやってくる。

『自分の愛を受け取るなら、欲しいものは何でも買ってあげるよ。嬉しいよね?』

そう語る目でジロジロと私の顔や体を見てくる男達。
それを見ながら私はある日、フッと思った。

この人達にとって『愛』って何なんだろう?

その答えは分からなかったが、少なくともその『愛』とやらに『私の気持ち』は要らないモノらしい。

その日もそういったふざけた事を言う男が来ていたので、母がさっさと幻影魔法で追い払ってくれたが、毎日毎日続く男達の訪問に流石の母も疲れたらしい。
乱暴な仕草でソファーに座った後は、怒りの形相でチィィッ!!と大きな舌打ちをした。

「欲にまみれた男の目ってさ、どうしてあんなに分かりやすいのかね~。もう少し隠して欲しいよ。
あわゆくば、都合よく使いたいって見え見えなんだよね~。二人はああいうのどう思う?」

「きも~い。」

「────不快。」

兄さんと私がキッパリ答えると、母はOK!と言わんばかりに親指を立てる。

「それで良し!世の中にはそういったタチの悪~い男はそれなりにいて、そいつらの甘い誘惑に耳を傾けたら地獄行き。
特に、女の子のリリアは賢く立ち回らないと駄目だよ。
そうやって近づいてくる男は身ぐるみ全部剥いでポイッ!するくらいじゃないと!」

カッカする母の言葉を聞いて『成人前の子供に言う事か?』と思ったが、母は母なりに私と兄さんの将来の事を心配していたのだと思う。

この時点で、私にとって『男』と言う存在は害悪でしかなく、嫌悪を通り越して憎んですらいたため、その後に続く母の言葉は……全く頭に入ってこなかった。

そんな環境下に置かれ続けたからか、私の精神は恐ろしい早さで成熟していく。
すると、自分という存在が客観的にどういった存在なのかという事も理解してしまった。

《一番にするのには非常に都合が良く、愛されることはない女》

これが客観的に見た『私』の姿。
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