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第三十八章
1205 伯爵様
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( モルト )
マリオン様は、なぜか自身の住む街の小学院には行かずに、わざわざ馬車で一時間も揺られてレガーノの小学院に通う非常に変わった方だ。
レガーノも含む、そこら一帯を全て総括しているのがスタンティン家。
そのためレガーノで貴族として商売をしている俺とニールの両親は、定期的に街の管理状況や収入、支出などを纏めた書類を直に届けに行かねばならず、小学院に入る前にマリオン様を目にする機会が何度かあった。
幼い俺の目から見たスタンティン家は、まぁ、ザ・貴族といったイメージで、マリオン様もそんなイメージ。
つまりこの国に溢れている身分主義に偏った考えを持っていると思っていたため、俺はどうも苦手で……挨拶に連れて行かれる際は毎回嫌で嫌で仕方がなかった。
しかし、両親曰く、スタンティン家は平民に毛が生えた程度の俺達男爵家に対しても、酷い態度は取らず、多少とっつきにくいが話も聞いてくれるらしい。
確かに嫌がらせをしてくるわけでも暴言を吐かれるわけでもなかったため、本当にキチンと上役をこなしてくれる良き上司の様だ。
そのため両親は、俺達にスタンティン家の子息であるマリオン様と積極的に仲良くしてほしいと思っていて、ゆくゆくは取り巻きの末端の末端の末端にでもしてもらえたら嬉しいな!という考えを持っていた。
しかしその時、既にマリオン様の周りには沢山の取り巻き達や、側近候補達がいて、俺とニールの入り込む隙など、1ミリ足りとも空いてはいなかったのだ。
それに同じ街に伯爵家より上の公爵家の子息がいるとなれば、必ずそちらにつかなければならないので、元々無理な話ではあったが……。
両親はそのことでガッカリしたみたいだが……正直俺はホッとしていた。
実際に目にしたマリオン様は、流石は伯爵家と納得せざるを得ない、人を圧倒する様なオーラと、トップに立つに相応しいカリスマ性を持った人で……俺の様に、神経質で周りの目を気にする人間にとって、こういった人は毒だと思ったからだ。
自分に絶対的な自信がない俺は、物事の良い事や悪い事を、周りの人間の目によって答えを出してしまう事があった。
更に、今の状態が周りの人間にはどう映っているのか?自分はどう思われているのか?
それで悩んで悩んで……そんな時にパッ!と現れる完璧な存在に見えるカリスマヒーローが現れてしまえば……。
その人の言う事は全部 ” 正しい ” 。
だから全て意見を合わせてしまえば、駄目な自分を隠す事ができる!
そんなズルい事を考え、いつしか自分という存在が ” 個人 ” ではなく一つの ” 集合体 ” になる────そんな未来が見えて、ゾッ……と背筋を凍らせる。
だからマリオン様に仕えなくて良いと聞いた時、俺は胸を撫で下ろし、ニールも同様にホッ……と安堵していた様だった。
多分ニールの様に、大雑把で流されやすいヤツにとっても、マリオン様の様なタイプは合わないと悟ったのだろう。
────と言っても、マリオン様からしたら俺達など雑草の様なモノだから、” どうかお側に置いて下さいませ~! ” と頼み込んだって、追い払われていたに違いない。
だから今後は近づく事などない。
そう思っていたのだが…………その予想は大外れ。
マリオン様は、リーフ様がレオンにおんぶされて登学院……から数日後。
突然、自身の取り巻き達をゾロゾロと引き連れて、リーフ様とその取り巻きをしていた俺達の所にやってきた。
名目上は ” 爵位が上の公爵家のリーフ様へご挨拶 ”
しかし本音は、自分の方が立場は上だぞというマウントをかけにきたのだ。
俺とニールは、直ぐにザッ!とマリオン様の取り巻きを見回したが、どいつもこいつもスタンティン家と普段から懇意にしている本物の貴族の子供たちで、俺達より遥かに爵位は上。
下手に口を出す事ができない。
そのため黙ってリーフ様とマリオン様のやり取りを見ているしかなかった。
ピリピリしている空気の中、マリオン様は早速パーフェクトな礼をし、そのまま挨拶が遅れた事への謝罪を終えると、そこからリーフ様への揺さぶりを開始する。
「 リーフ様の住んでらっしゃる豪邸は、王都の方々でも驚く程の広さであるとお聞きしました。
さぞや広々と使えて快適でしょうね。 」
( 従業員がたった数人しかいないのに、そんな豪邸に住むなど烏滸がましい。
家族に捨てられた捨て子風情が。 )
「 リーフ様は公爵家と思えない程、親しみやすい雰囲気を持っておられますね。
うっかり失礼な態度をとってしまったら申し訳ありません。
もしかしてあまり積極的に話し掛けない方が失礼をしなくていいかもしれませんね。
緊張してしまいそうですし……。 」
( 貴族らしさの欠片もない、下品な貴族もどきめ。
平民代表の様な容姿をしているし、死んでも敬った態度を取らないからな。
お前なんて今日から全員で無視してやる。 )
言葉の端々から滲み出る悪意100%の本音に、俺とニールは大きく顔を顰めたが、マリオン様の取り巻き達は、クスクスと笑いマリオン様に賛同を示した。
更には俺とニールに憐憫を込めた目を向け、ヒソヒソと陰口を叩く。
マリオン様は、なぜか自身の住む街の小学院には行かずに、わざわざ馬車で一時間も揺られてレガーノの小学院に通う非常に変わった方だ。
レガーノも含む、そこら一帯を全て総括しているのがスタンティン家。
そのためレガーノで貴族として商売をしている俺とニールの両親は、定期的に街の管理状況や収入、支出などを纏めた書類を直に届けに行かねばならず、小学院に入る前にマリオン様を目にする機会が何度かあった。
幼い俺の目から見たスタンティン家は、まぁ、ザ・貴族といったイメージで、マリオン様もそんなイメージ。
つまりこの国に溢れている身分主義に偏った考えを持っていると思っていたため、俺はどうも苦手で……挨拶に連れて行かれる際は毎回嫌で嫌で仕方がなかった。
しかし、両親曰く、スタンティン家は平民に毛が生えた程度の俺達男爵家に対しても、酷い態度は取らず、多少とっつきにくいが話も聞いてくれるらしい。
確かに嫌がらせをしてくるわけでも暴言を吐かれるわけでもなかったため、本当にキチンと上役をこなしてくれる良き上司の様だ。
そのため両親は、俺達にスタンティン家の子息であるマリオン様と積極的に仲良くしてほしいと思っていて、ゆくゆくは取り巻きの末端の末端の末端にでもしてもらえたら嬉しいな!という考えを持っていた。
しかしその時、既にマリオン様の周りには沢山の取り巻き達や、側近候補達がいて、俺とニールの入り込む隙など、1ミリ足りとも空いてはいなかったのだ。
それに同じ街に伯爵家より上の公爵家の子息がいるとなれば、必ずそちらにつかなければならないので、元々無理な話ではあったが……。
両親はそのことでガッカリしたみたいだが……正直俺はホッとしていた。
実際に目にしたマリオン様は、流石は伯爵家と納得せざるを得ない、人を圧倒する様なオーラと、トップに立つに相応しいカリスマ性を持った人で……俺の様に、神経質で周りの目を気にする人間にとって、こういった人は毒だと思ったからだ。
自分に絶対的な自信がない俺は、物事の良い事や悪い事を、周りの人間の目によって答えを出してしまう事があった。
更に、今の状態が周りの人間にはどう映っているのか?自分はどう思われているのか?
それで悩んで悩んで……そんな時にパッ!と現れる完璧な存在に見えるカリスマヒーローが現れてしまえば……。
その人の言う事は全部 ” 正しい ” 。
だから全て意見を合わせてしまえば、駄目な自分を隠す事ができる!
そんなズルい事を考え、いつしか自分という存在が ” 個人 ” ではなく一つの ” 集合体 ” になる────そんな未来が見えて、ゾッ……と背筋を凍らせる。
だからマリオン様に仕えなくて良いと聞いた時、俺は胸を撫で下ろし、ニールも同様にホッ……と安堵していた様だった。
多分ニールの様に、大雑把で流されやすいヤツにとっても、マリオン様の様なタイプは合わないと悟ったのだろう。
────と言っても、マリオン様からしたら俺達など雑草の様なモノだから、” どうかお側に置いて下さいませ~! ” と頼み込んだって、追い払われていたに違いない。
だから今後は近づく事などない。
そう思っていたのだが…………その予想は大外れ。
マリオン様は、リーフ様がレオンにおんぶされて登学院……から数日後。
突然、自身の取り巻き達をゾロゾロと引き連れて、リーフ様とその取り巻きをしていた俺達の所にやってきた。
名目上は ” 爵位が上の公爵家のリーフ様へご挨拶 ”
しかし本音は、自分の方が立場は上だぞというマウントをかけにきたのだ。
俺とニールは、直ぐにザッ!とマリオン様の取り巻きを見回したが、どいつもこいつもスタンティン家と普段から懇意にしている本物の貴族の子供たちで、俺達より遥かに爵位は上。
下手に口を出す事ができない。
そのため黙ってリーフ様とマリオン様のやり取りを見ているしかなかった。
ピリピリしている空気の中、マリオン様は早速パーフェクトな礼をし、そのまま挨拶が遅れた事への謝罪を終えると、そこからリーフ様への揺さぶりを開始する。
「 リーフ様の住んでらっしゃる豪邸は、王都の方々でも驚く程の広さであるとお聞きしました。
さぞや広々と使えて快適でしょうね。 」
( 従業員がたった数人しかいないのに、そんな豪邸に住むなど烏滸がましい。
家族に捨てられた捨て子風情が。 )
「 リーフ様は公爵家と思えない程、親しみやすい雰囲気を持っておられますね。
うっかり失礼な態度をとってしまったら申し訳ありません。
もしかしてあまり積極的に話し掛けない方が失礼をしなくていいかもしれませんね。
緊張してしまいそうですし……。 」
( 貴族らしさの欠片もない、下品な貴族もどきめ。
平民代表の様な容姿をしているし、死んでも敬った態度を取らないからな。
お前なんて今日から全員で無視してやる。 )
言葉の端々から滲み出る悪意100%の本音に、俺とニールは大きく顔を顰めたが、マリオン様の取り巻き達は、クスクスと笑いマリオン様に賛同を示した。
更には俺とニールに憐憫を込めた目を向け、ヒソヒソと陰口を叩く。
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