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第四十七章
1461 正義のヒーロー
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( ヘンドリク )
あの討伐はほぼ不可能と言われる程の強敵、Sランクモンスター< キャロル・ナイト・ゾンビ >を倒して大騒ぎしている皆を見て、私はククッと笑う。
しかし戦いが終わりではない事は理解していて、後方で様子を伺っていたモンスター達がまた行進し始めるのを見て、全員が直ぐに戦闘配置についた。
一つの目標に向かって強大な力に立ち向かう事。
これこそが ” 悪 ” というモノに立ち向かうために必要なモノで……同時に ” 一人で強者 ” である事の弱さと、一つの結末というモノを改めて考え、虚しさを思い出す。
” 悪 ” を倒す事。
それが子どもの頃に読んだ絵本の様に単純な事でない事は……歳を取るごとに身に染みて理解していった。
まだ幼かった頃の自分はそんな事を考えた事もなく、超絶強いヒーローが悪者をやっつける絵本を読んでは、木の棒を手に持ち叫ぶ。
「 俺はいつか、めちゃんこ強くてカッコいいヒーローになって、世界を救うぞ!!
そして皆をハッピーにしてみせる! 」
目を輝かせながら語る青臭い夢。
それを現実のモノにするため、自分にできる事は何でもやって、必死にその夢に向かってひた走った。
そんな自分が当時、ダントツに嫌いだった絵本は、『 シュペリンの踊り猫 』
これだけは、大人になった後も好きになれずに常に本棚の奥の方で埃を被ったままになっていた。
” 主人公の猫は、ただ一人で勝手に踊って歌って……楽しんでいるだけじゃないか。 ”
” その結果、人が救われたなど、実際には何もしていないんだからとんだ他力本願の話だ。 ”
やっぱり主人公は強くて、カッコよくて、ババーン!と悪を倒していく事こそ正しいのだ! ”
そんな自分の信じる正義から見たこの絵本は、ただの努力なき者の願望を形にしただけの話でしかなかったのだ。
そのため、たまたまその本が目についた時に改めてそう思ったワシは、当時埃を被っていたその絵本を母に渡した。
「 これ、捨てておいて! 」
すると、それを受け取った母は、やれやれと呆れた様子で息を吐く。
「 あんた、小さい頃からこの本が本当に嫌いだね。
別にそれぞれ思う事は違うからいいけど……私はこの本が一番好きなんだけどねぇ……。 」
「 はぁ~?だってこんなん、猫が踊っているだけじゃん!
悪いヤツをカッコよく倒さないと、国は救われないじゃん! 」
ブーブーと文句を言うワシを、母は仕方ないなぁ……と言わんばかりに見下ろした。
「 悪いヤツを倒しておしまいじゃないんだよ、現実はね。
たった一人の強者に救われた世界の寿命ってやつは短いのさ。
いずれ分かる日がくるだろうよ。 」
まだ子供だったワシにとって、その言葉は自分の中にある正義を変える程の力はなく、べーッと舌を出す事であっさりと吹き飛んでいくものでしかなかった。
その言葉の意味を知るには、まだまだ経験値が足りなかったのだ。
その後、結局ワシは母の言葉を理解する事なく、選んだ冒険者という道を最短で走り抜けていく。
どうやらワシの資質は、自身の正義を貫こうとする心と非常にマッチした様で、どんどんと実力はついていった。
” 人々を苦しめるモンスターが出た! ”
” 凶悪な盗賊集団が街を襲おうとしている! ”
そんな話を聞きつければ、直ぐに現場に向かい圧倒的な実力で華麗に解決!
すると気がつけばあっという間にSランクまで駆け上がっており、いつの間にか、かつて思い描いた最強のヒーローの姿に自分がなっていた。
” ありがとう! ”
” ありがとう! ”
” あなたのお陰で私達は助かり、幸せです。 ”
誰もが幸せそうで、ヒーローである自分に感謝してくれる。
きっとこの時が人生の頂点だったと思う。
” どうだ!見たか!
やっぱり俺の考えは正しかっただろう! ”
まるで世界そのものに認められた様な気分になった自分は有頂天になって、そのまま信じる正義のまま、人助けを続けた。
こうして自分の最後の時まで、世界は変わる事なく続いていく。
そう信じて疑わなかったワシだったが、そんな想いがわずかに霞み始めたのは……初のSランクモンスター討伐に成功した時であった。
当時名を馳せていた名だたる戦闘系貴族の家や各戦闘機関から選ばれし実力者達で組まれた大型パーティー。
そのパーティーの一員として選ばれたワシは、いつも通りに人々を救うという想いを胸に戦闘に臨んだ。
結果は、沢山の冒険者達の指揮を取り、大活躍!
その功績が認められ、ワシは王より直接の言葉を得られる機会を得た。
当時の王と沢山の王族、貴族、そして四カ国同盟の王たちが映像で見守る中、ワシは王よりお褒めの言葉と有り余る富と栄誉を与えられる。
キラキラと輝くシャンデリアに照らされ、その眩しさに目を細めた。
きっと未来も同じ様に明るいに違いない。
そう信じてやまず、他にも活躍した者たちが同じ様に王にお褒めの言葉を与えられている中、ワシの前には輝く道がパッ!と現れた。
” 世界を救った ”
” 自分は夢を叶えた! ”
” これからは皆ずっと平和で幸せに────……。 ”
一歩……また一歩と、そんな楽園の様な世界へ向かう道を歩きだすと……突然王が他の貴族達に向かってある一つの提案をする。
あの討伐はほぼ不可能と言われる程の強敵、Sランクモンスター< キャロル・ナイト・ゾンビ >を倒して大騒ぎしている皆を見て、私はククッと笑う。
しかし戦いが終わりではない事は理解していて、後方で様子を伺っていたモンスター達がまた行進し始めるのを見て、全員が直ぐに戦闘配置についた。
一つの目標に向かって強大な力に立ち向かう事。
これこそが ” 悪 ” というモノに立ち向かうために必要なモノで……同時に ” 一人で強者 ” である事の弱さと、一つの結末というモノを改めて考え、虚しさを思い出す。
” 悪 ” を倒す事。
それが子どもの頃に読んだ絵本の様に単純な事でない事は……歳を取るごとに身に染みて理解していった。
まだ幼かった頃の自分はそんな事を考えた事もなく、超絶強いヒーローが悪者をやっつける絵本を読んでは、木の棒を手に持ち叫ぶ。
「 俺はいつか、めちゃんこ強くてカッコいいヒーローになって、世界を救うぞ!!
そして皆をハッピーにしてみせる! 」
目を輝かせながら語る青臭い夢。
それを現実のモノにするため、自分にできる事は何でもやって、必死にその夢に向かってひた走った。
そんな自分が当時、ダントツに嫌いだった絵本は、『 シュペリンの踊り猫 』
これだけは、大人になった後も好きになれずに常に本棚の奥の方で埃を被ったままになっていた。
” 主人公の猫は、ただ一人で勝手に踊って歌って……楽しんでいるだけじゃないか。 ”
” その結果、人が救われたなど、実際には何もしていないんだからとんだ他力本願の話だ。 ”
やっぱり主人公は強くて、カッコよくて、ババーン!と悪を倒していく事こそ正しいのだ! ”
そんな自分の信じる正義から見たこの絵本は、ただの努力なき者の願望を形にしただけの話でしかなかったのだ。
そのため、たまたまその本が目についた時に改めてそう思ったワシは、当時埃を被っていたその絵本を母に渡した。
「 これ、捨てておいて! 」
すると、それを受け取った母は、やれやれと呆れた様子で息を吐く。
「 あんた、小さい頃からこの本が本当に嫌いだね。
別にそれぞれ思う事は違うからいいけど……私はこの本が一番好きなんだけどねぇ……。 」
「 はぁ~?だってこんなん、猫が踊っているだけじゃん!
悪いヤツをカッコよく倒さないと、国は救われないじゃん! 」
ブーブーと文句を言うワシを、母は仕方ないなぁ……と言わんばかりに見下ろした。
「 悪いヤツを倒しておしまいじゃないんだよ、現実はね。
たった一人の強者に救われた世界の寿命ってやつは短いのさ。
いずれ分かる日がくるだろうよ。 」
まだ子供だったワシにとって、その言葉は自分の中にある正義を変える程の力はなく、べーッと舌を出す事であっさりと吹き飛んでいくものでしかなかった。
その言葉の意味を知るには、まだまだ経験値が足りなかったのだ。
その後、結局ワシは母の言葉を理解する事なく、選んだ冒険者という道を最短で走り抜けていく。
どうやらワシの資質は、自身の正義を貫こうとする心と非常にマッチした様で、どんどんと実力はついていった。
” 人々を苦しめるモンスターが出た! ”
” 凶悪な盗賊集団が街を襲おうとしている! ”
そんな話を聞きつければ、直ぐに現場に向かい圧倒的な実力で華麗に解決!
すると気がつけばあっという間にSランクまで駆け上がっており、いつの間にか、かつて思い描いた最強のヒーローの姿に自分がなっていた。
” ありがとう! ”
” ありがとう! ”
” あなたのお陰で私達は助かり、幸せです。 ”
誰もが幸せそうで、ヒーローである自分に感謝してくれる。
きっとこの時が人生の頂点だったと思う。
” どうだ!見たか!
やっぱり俺の考えは正しかっただろう! ”
まるで世界そのものに認められた様な気分になった自分は有頂天になって、そのまま信じる正義のまま、人助けを続けた。
こうして自分の最後の時まで、世界は変わる事なく続いていく。
そう信じて疑わなかったワシだったが、そんな想いがわずかに霞み始めたのは……初のSランクモンスター討伐に成功した時であった。
当時名を馳せていた名だたる戦闘系貴族の家や各戦闘機関から選ばれし実力者達で組まれた大型パーティー。
そのパーティーの一員として選ばれたワシは、いつも通りに人々を救うという想いを胸に戦闘に臨んだ。
結果は、沢山の冒険者達の指揮を取り、大活躍!
その功績が認められ、ワシは王より直接の言葉を得られる機会を得た。
当時の王と沢山の王族、貴族、そして四カ国同盟の王たちが映像で見守る中、ワシは王よりお褒めの言葉と有り余る富と栄誉を与えられる。
キラキラと輝くシャンデリアに照らされ、その眩しさに目を細めた。
きっと未来も同じ様に明るいに違いない。
そう信じてやまず、他にも活躍した者たちが同じ様に王にお褒めの言葉を与えられている中、ワシの前には輝く道がパッ!と現れた。
” 世界を救った ”
” 自分は夢を叶えた! ”
” これからは皆ずっと平和で幸せに────……。 ”
一歩……また一歩と、そんな楽園の様な世界へ向かう道を歩きだすと……突然王が他の貴族達に向かってある一つの提案をする。
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