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第五十二章
1573 夢の様な光景
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(ドノバン)
細くつり上がった目元に、人を常に見下している様な冷たい藍色の瞳。
口元はいつも『への字』に閉じられていて、穏やかさの正反対をいく雰囲気を持つ三十代半ば程の男性は、現在の第一騎士団の副団長を努めている男だ。
前髪を上にあげた強いパーマが掛かったアクアマリン色の長い髪を、ピンッと後ろに弾くのが苛立っている時の癖な様で、今もその行動を嫌という程している。
第一騎士団副団長、<レクリム・ディオ・オデマージュ>。
爵位はライロンド家と並ぶ【辺境伯】だ。
デカい図体で見下ろしてくるレクリムをユーリスが真っ向から睨み返していると、その横から進み出てカルパスの前に立つ人物が現れた。
ワインレッドカラーの落ち着いた色をした長い髪を耳に掛け、カルパスをギロリと睨みつけるその顔は、パッと見れば女性の様にも見えるほど整った顔をしている。
しかし高身長にガッチリしている体格から、女性には見えない。
更にレクリム同様、人を見下す様な冷たいオリーブ色の瞳をしていて、どんなに美しくても相手に嫌な感じを与えてしまう三十代前半くらいの男性は、もう一人の第一騎士団副団長だ。
第一騎士団副団長、<アイシン・クオリ・デザーム>
アイシンからの殺気立った視線を、カルパスは平然と受け止めクスリッと笑う。
「おや?どなたかと思えば、第一騎士団の方々でしたか。
いつもは滅多にお目にかかれないお二人のお顔を見れるとは……現在の第一騎士団はよっぽどお暇なんですね。
なんでも、第二騎士団に尽く仕事を取られているとか……。
その間は王宮内の掃除でもしているのですか?
いっそ、その活躍の場が殆どない鎧を脱ぎ捨て、侍女の制服でも着てみたらいかがでしょう。」
「相変わらず腹が立つ姑息なネズミ男めっ……!」
アイシンとレクリムがピクピクと口元を震わせながら睨みつけると、ユーリスがカルパスの隣でブブーッ!!と吹き出した。
「そっ……それでは特注をしなければなりませんね!流石にサイズがないと思いますので!」
「…………。」
────ブチッ……。
何かが切れた音がレクリムの額から聞こえ、その瞬間レクリムはユーリスに殴り掛かる。
しかし、ユーリスはそれを余裕で避けて、そこからはパンチとキックの激しい打ち合いへと突入した。
「このっ無礼なクソガキがぁぁぁぁっ!!!!」
「老害代表はとっとと引退して下さいよ、うっとおしい!!」
怒鳴り合うユーリス達に続く様に、アイシンはカルパスの頭を狙ったキックを繰り出したが、カルパスは同じくキックでそれを受け切る。
「……その余裕そうな顔をグチャグチャにしてやるよ。」
「……お好きにどうぞ?ただし、できたら……の話ですけど。」
そのまま二人はキックの応酬が始まり、それぞれが後ろに待機している第二騎士団の団員と第一騎士団の団員達も一斉に飛び出した。
数としては第一騎士団が圧倒的に多く、第二騎士団の方が不利になると思われたが……そこで第二騎士団側についたのは、ライロンド家のダリオスとマービン、そしてリーフの学友達だ。
「はっはっは~!!ライロンド家は、これより第二騎士団と友好関係を築く予定だったが……これはまたとない共闘チャンスが巡ってきたな!
マービン!ここはしっかりアピールしていくぞ!」
「ふんっ!言われるまでもない!
ここで動かないと、後で尻を叩かれるからな!」
ダリオスは気合満々でキラッ!と目を光らせ、マービンもそれとそっくりな目で飛び出していく。
「……あんにゃろ~すっかり元通りじゃねぇ~の。」
俺は憐れにも、チェリルにまた一人捕まった王宮貴族達を見つめながら、横目でチラッとダリオスを盗み見た。
『思い立ったら自分の心のままに。』
それを突き通すかつての友を見て嬉しくなって笑ったが────また一人、断末魔をあげ女にされてしまった王宮騎士を見てその喜びは吹き飛ぶ。
「…………。」
思わず自分の股間をソッと隠すと……次に飛び出してきたのは、リーフの学友達だ。
「よっしゃー!!俺だってやってやるぜ!たのし~い!やっほ~い!!」
「ちょっと~ワンワンうるさ~い。ここで沢山アピールして、リーフ様のいい子いい子してもらおう♡」
「メルも……。」
「取り巻き一号モルト!ここは引けないぞ!」
「取り巻き一号ニール!俺に任せるっす~!」
リーフの学友達と、いつもくっつきまわっているモルトとニールは、全員がまるでスキップする様に走り出した。
「おぉ~……。ホント、嘘みたいな光景だな~。」
俺は改めて血気盛んにおっぱじめた周りを見回し、ニヤッ~と笑う。
そして楽しそうな皆の様子につられる様に、ヒィヒィと逃げ回る王宮騎士達をスキップしながら追いかけ回した。
細くつり上がった目元に、人を常に見下している様な冷たい藍色の瞳。
口元はいつも『への字』に閉じられていて、穏やかさの正反対をいく雰囲気を持つ三十代半ば程の男性は、現在の第一騎士団の副団長を努めている男だ。
前髪を上にあげた強いパーマが掛かったアクアマリン色の長い髪を、ピンッと後ろに弾くのが苛立っている時の癖な様で、今もその行動を嫌という程している。
第一騎士団副団長、<レクリム・ディオ・オデマージュ>。
爵位はライロンド家と並ぶ【辺境伯】だ。
デカい図体で見下ろしてくるレクリムをユーリスが真っ向から睨み返していると、その横から進み出てカルパスの前に立つ人物が現れた。
ワインレッドカラーの落ち着いた色をした長い髪を耳に掛け、カルパスをギロリと睨みつけるその顔は、パッと見れば女性の様にも見えるほど整った顔をしている。
しかし高身長にガッチリしている体格から、女性には見えない。
更にレクリム同様、人を見下す様な冷たいオリーブ色の瞳をしていて、どんなに美しくても相手に嫌な感じを与えてしまう三十代前半くらいの男性は、もう一人の第一騎士団副団長だ。
第一騎士団副団長、<アイシン・クオリ・デザーム>
アイシンからの殺気立った視線を、カルパスは平然と受け止めクスリッと笑う。
「おや?どなたかと思えば、第一騎士団の方々でしたか。
いつもは滅多にお目にかかれないお二人のお顔を見れるとは……現在の第一騎士団はよっぽどお暇なんですね。
なんでも、第二騎士団に尽く仕事を取られているとか……。
その間は王宮内の掃除でもしているのですか?
いっそ、その活躍の場が殆どない鎧を脱ぎ捨て、侍女の制服でも着てみたらいかがでしょう。」
「相変わらず腹が立つ姑息なネズミ男めっ……!」
アイシンとレクリムがピクピクと口元を震わせながら睨みつけると、ユーリスがカルパスの隣でブブーッ!!と吹き出した。
「そっ……それでは特注をしなければなりませんね!流石にサイズがないと思いますので!」
「…………。」
────ブチッ……。
何かが切れた音がレクリムの額から聞こえ、その瞬間レクリムはユーリスに殴り掛かる。
しかし、ユーリスはそれを余裕で避けて、そこからはパンチとキックの激しい打ち合いへと突入した。
「このっ無礼なクソガキがぁぁぁぁっ!!!!」
「老害代表はとっとと引退して下さいよ、うっとおしい!!」
怒鳴り合うユーリス達に続く様に、アイシンはカルパスの頭を狙ったキックを繰り出したが、カルパスは同じくキックでそれを受け切る。
「……その余裕そうな顔をグチャグチャにしてやるよ。」
「……お好きにどうぞ?ただし、できたら……の話ですけど。」
そのまま二人はキックの応酬が始まり、それぞれが後ろに待機している第二騎士団の団員と第一騎士団の団員達も一斉に飛び出した。
数としては第一騎士団が圧倒的に多く、第二騎士団の方が不利になると思われたが……そこで第二騎士団側についたのは、ライロンド家のダリオスとマービン、そしてリーフの学友達だ。
「はっはっは~!!ライロンド家は、これより第二騎士団と友好関係を築く予定だったが……これはまたとない共闘チャンスが巡ってきたな!
マービン!ここはしっかりアピールしていくぞ!」
「ふんっ!言われるまでもない!
ここで動かないと、後で尻を叩かれるからな!」
ダリオスは気合満々でキラッ!と目を光らせ、マービンもそれとそっくりな目で飛び出していく。
「……あんにゃろ~すっかり元通りじゃねぇ~の。」
俺は憐れにも、チェリルにまた一人捕まった王宮貴族達を見つめながら、横目でチラッとダリオスを盗み見た。
『思い立ったら自分の心のままに。』
それを突き通すかつての友を見て嬉しくなって笑ったが────また一人、断末魔をあげ女にされてしまった王宮騎士を見てその喜びは吹き飛ぶ。
「…………。」
思わず自分の股間をソッと隠すと……次に飛び出してきたのは、リーフの学友達だ。
「よっしゃー!!俺だってやってやるぜ!たのし~い!やっほ~い!!」
「ちょっと~ワンワンうるさ~い。ここで沢山アピールして、リーフ様のいい子いい子してもらおう♡」
「メルも……。」
「取り巻き一号モルト!ここは引けないぞ!」
「取り巻き一号ニール!俺に任せるっす~!」
リーフの学友達と、いつもくっつきまわっているモルトとニールは、全員がまるでスキップする様に走り出した。
「おぉ~……。ホント、嘘みたいな光景だな~。」
俺は改めて血気盛んにおっぱじめた周りを見回し、ニヤッ~と笑う。
そして楽しそうな皆の様子につられる様に、ヒィヒィと逃げ回る王宮騎士達をスキップしながら追いかけ回した。
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