【完結】もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん

文字の大きさ
21 / 26
社会人編

21 堂々のご登場だよ……

しおりを挟む
「翔、どうやって会社の中に入ってきたんだよ……。」

取り巻きの男たちの話など完全無視で、俺のネクタイを直し始めてしまった翔に尋ねると、翔はニコッと笑う。

「普通に受付の女性に頼んだら通してくれたけど?
それに俺、この会社にも融資しているからさ、そもそも出入りなんて自由でしょ?本当は潰しちゃいたいんだけどな~。
そしたら源は失業して、家にいてくれるし。」

「…………。」

とんでもない事を言い出す翔に青ざめていると、突然バタバタバタ~!!と部署内に誰かが駆け込んできた。

「こ、こ、これはこれは空野様ぁぁぁぁぁ!!!大変お世話になっておりますぅぅぅ~!!」

バッ!!と頭を深々と下げる社長を見て、一瞬で空気を呼んだ蝶野さんと取り巻き以外の社員たちは、同じく頭を下げる。
それを見て翔はうっすら笑みを浮かべながら「楽にしていいよ。」と伝え、それに伴って全員が頭を上げた。

「今日は源に忘れ物届けにきただけだから。」

「さ、左様でございますか~!ええ~と……そちらの源様は、空野様の御親戚か何かだったのですか?」

ダラダラと汗を流しながらそう尋ねる社長。
この時点で多分全員翔が偉い人だと思った様だ。

取り巻きの男たちは、青を通り越して真っ白になり、勢いをすっかりなくしていたが────蝶野さんは翔の事を勿論知っているので、パァァァ!と嬉しそうに目を輝かせる。

『会えて嬉しい!』

そう全身で表現すふ蝶野さんに多少呆れながら、誤解を解くため説明を始めた。

「いえ、親戚ではなくて……幼馴染で今はルームシェアしています。」

「────へっ??」

「はっ??」

アズマと和恵がクエスチョンマークを浮かべて首を傾げる。

『えっ?彼女と同棲してるんじゃ……?』

そう雄弁に語る二人には苦笑いを返しておいた。
翔は少しムッ!としたようだが、とりあえずお外用のお澄ましスマイルを浮かべながら、俺の中傷がびっしり書かれた紙を取り出す。

「────で?何?これ?『オジさん相手にパパ活』?『男相手に体を売っている』?
源はそんな事してないけど。この会社って随分暇なんだね。」

翔はその紙を、皆に見せつける様にゆっくり、ゆっくりと破り捨てた。
その紙がパラパラと地面に落下したタイミングを見て……社長が土下座をする。

「も、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!!!全力で犯人を血祭りにあげるのでぇぇぇ~どうかどうかお許しくださ~い!!」

『血祭り』という言葉に取り巻きの男たちは大きく体を震わせたが、翔は彼らの方へ視線を向け、そのままトドメをさす。

「そうそう、俺さっき君たちが言っていた言葉、よく聞こえなかったんだ。もう一度同じ事言ってくれる?」

「い、いえ……お、俺達は何も────「早く。」

言葉を遮って言う翔にビクッ!!とした取り巻きたちは、ボソボソと言葉らしきモノを呟き全員が下を向いた。
翔はニコニコしているが相当怒っている様だ。

昔使いかけの消しゴムを他の子にあげた時と同じ。

その時の凄まじい翔の怒りっぷりを思い出し、ブルっ!と体が震えてしまったが……同時に嬉しくもあった。

翔は俺を信じてくれる。
そして俺のために怒ってくれているから。

しかし────ここで社会人の男としてのプライドもニョキッと飛び出してくる。

自分のことくらい自分で解決したい。
翔に解決してもらうなんて絶対嫌だ。

「翔、怒ってくれてありがとう。でも、俺は自分で怒るからいい。」

俺は翔を押しのけ、取り巻きの男たちの前に出た。

「やることがみみっちいんだよ、この大バカ野郎!!!
社会人なら黙って仕事しろ!!こんな馬鹿げた事を持ち込んで大騒ぎするな!!
俺に何か言いたきゃ仕事が終わってから来いよ、相手してやるから。分かったか!!」

普段何も言わない俺が大激怒したから、随分と驚いた様だ。
目が点になるソイツらにフンッ!と鼻息荒く睨んだ後は、社長や部長、人事の人や他の社員たちに向かって頭を下げる。

「この度はお騒がせして申し訳ありません。私の私生活の事でご迷惑をおかけしました。」

「いやいや、いいんだ。君も他の社員達もいい大人なんだから、プライベートの事まで何か言う権利なんてないよ。
問題はこっちの誹謗中傷する様な紙だからね。」

「ありがとうございます。」

部長が慌てた様に答えると、後ろで社長がキュキュ~ンとウルウルお目目で俺に祈りを捧げてくる!
とりあえず社長もとばっちりだったので、深々と頭を下げておいた。

「あ、あの!!!」

とりあえず一旦事態は終息へと向かい始めたと思ったのに、突然蝶野さんが声をあげる。
それに驚いて全員そちらへ視線を向けると────蝶野さんはキラキラした目で翔の前に走り寄ってきた。

「空野君!久しぶり!私、ずっと空野君に会いたかったの!
あんなに仲良くしてたのに、突然連絡が取れなくなって……本当に悲しかった。
でも理由は分かってるよ?根本君が原因だよね?
お願いだから根本君の嘘を信じないで……。
何を言われたか分からないけど、ちゃんと話し合って誤解を────……。」

「ん~?誰?」

めんどくさそうにそう言い放つ翔の前で蝶野さんは固まる。
しかしブルブルと震えながら、なんとか引き攣った笑顔をうかべた。

しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

【「麗しの眠り姫」シリーズ】苦労性王子は今日も従兄に振り回される

黒木  鳴
BL
「麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る」でセレナードたちに振り回されるお世話係ことエリオット王子視点のお話。エリオットが親しい一部の友人たちに“王子(笑)”とあだなされることになった文化祭の「sleeping beauty」をめぐるお話や生徒会のわちゃわちゃなど。【「麗しの眠り姫」シリーズ】第三段!!義兄さまの出番が少ないのでBL要素は少なめです。

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【完結済】スパダリになりたいので、幼馴染に弟子入りしました!

キノア9g
BL
モテたくて完璧な幼馴染に弟子入りしたら、なぜか俺が溺愛されてる!? あらすじ 「俺は将来、可愛い奥さんをもらって温かい家庭を築くんだ!」 前世、ブラック企業で過労死した社畜の俺(リアン)。 今世こそは定時退社と幸せな結婚を手に入れるため、理想の男「スパダリ」になることを決意する。 お手本は、幼馴染で公爵家嫡男のシリル。 顔よし、家柄よし、能力よしの完璧超人な彼に「弟子入り」し、その技術を盗もうとするけれど……? 「リアン、君の淹れたお茶以外は飲みたくないな」 「君は無防備すぎる。私の側を離れてはいけないよ」 スパダリ修行のつもりが、いつの間にか身の回りのお世話係(兼・精神安定剤)として依存されていた!? しかも、俺が婚活をしようとすると、なぜか全力で阻止されて――。 【無自覚ポジティブな元社畜】×【隠れ激重執着な氷の貴公子】 「君の就職先は私(公爵家)に決まっているだろう?」 全8話

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

片思いの練習台にされていると思っていたら、自分が本命でした

みゅー
BL
オニキスは幼馴染みに思いを寄せていたが、相手には好きな人がいると知り、更に告白の練習台をお願いされ……と言うお話。 今後ハリーsideを書く予定 気がついたら自分は悪役令嬢だったのにヒロインざまぁしちゃいましたのスピンオフです。 サイデュームの宝石シリーズ番外編なので、今後そのキャラクターが少し関与してきます。 ハリーsideの最後の賭けの部分が変だったので少し改稿しました。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

処理中です...