姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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連花リェンホアのこぼれるような笑みと、それに寄り添って腹部へと視線を送る涼珩リャンハン
一見すると睦まじい夫婦の在り方に見えるのですが……

「さあ涼珩リャンハン様、参りましょうよぉ。わたくしもまだまだお話が……」

動こうとしない涼珩リャンハンに痺れを切らして、連花リェンホアが甘えた声でねだります。
涼珩リャンハンは少し困惑した様子で蘭珠ランジュの方をちらっと見て……

「いや、だが僕はまだこれと話が……」

「……」

既に指示語で呼ばれることが続いているため、蘭珠ランジュは無表情で黙すのみ。

それを連花リェンホアがどう考えたのか、これと呼ばれている蘭珠ランジュを前にして、完全に力関係が上になったのだと実感したのでしょう。
連花リェンホア涼珩リャンハンの腕に腕を絡めて、少しつま先立ちをしました。そして、涼珩リャンハンの耳元へ口を近付けます。

けれども、視線は蘭珠ランジュの方へ意地悪く向いていたし、内緒話をするにはよく通る声をしていました。

「そんな、一年もいて子供の作れなかった人と何を話すことがあるんです?」

(……この女もこんな考えなのかしら?)

蘭珠ランジュとしては不愉快極まりない言い方ですが。
その言葉は、涼珩リャンハンのプライドを少しくすぐったようでした。ぴく、と反応して、二人の顔を見比べます。

「そ、そうか……それはそうだが……」

「ほらぁ、お義母様がお待ちですわぁ」

涼珩リャンハンの気持ちが揺らいだことを見逃さず、連花リェンホア涼珩リャンハンの体の向きを広間の方へ向けて、背をそっと押します。
そして、涼珩リャンハンからは見えない位置で、蘭珠ランジュの方を見ながら……

涼珩リャンハン様、先に行っていて下さいませ。わたくしは今度こそ、ゆっくりと歩いて向かいますぅ」
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