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こうなればもう、義母や夫の顔色を窺う……と言うより、日々をやり過ごすように過ごしている場合ではありません。
一刻も早く離縁の手続きに取り掛かり子爵家へ帰って、しかるべき申請をしてしまわなければ……
(……もう、我慢することもないわよね)
蘭珠は、一度俯かせた視線を義母へと戻します。
(……気の毒な人だわ。あなたが喜んでいる連花の報告も、どこまで本当なのか分かったものではないのに……)
あの朝食の席で報告があった後、涼珩と少し話が出来ましたが……彼は一年前と変わらず、何も知識のないように思えました。
連花が慌てて引き離しに来たところを見ると、彼女は何か知っているのかもしれませんが……
あの様子では恐らく何らかの企みがそこにはあり。
最悪の想定として、腹の子の父親が誰とも知れない相手であることも考えなくてはならない、と。
蘭珠は考えていました。
しかし……
(そちらの話はもう、私には何の関係もないこと……)
離縁を決めた名門凌家の世継ぎがどうなるのか、そんなことを案じても蘭珠にはどうしようもないことでした。
文字通り、これから縁の離れる相手のことですから……
「この度のお話は謹んでお受けいたします」
シンプルなドレスの裾を柔らかに広げて、蘭珠は頭を下げました。
そして義母の返事を待たずして扉の方へ向かい……
短い挨拶とともに退室します。最後に見えたのは、酒器を振りかぶったような義母の姿。
扉越しの室内から、ゴトン、というような鈍い音が聞こえました。
一刻も早く離縁の手続きに取り掛かり子爵家へ帰って、しかるべき申請をしてしまわなければ……
(……もう、我慢することもないわよね)
蘭珠は、一度俯かせた視線を義母へと戻します。
(……気の毒な人だわ。あなたが喜んでいる連花の報告も、どこまで本当なのか分かったものではないのに……)
あの朝食の席で報告があった後、涼珩と少し話が出来ましたが……彼は一年前と変わらず、何も知識のないように思えました。
連花が慌てて引き離しに来たところを見ると、彼女は何か知っているのかもしれませんが……
あの様子では恐らく何らかの企みがそこにはあり。
最悪の想定として、腹の子の父親が誰とも知れない相手であることも考えなくてはならない、と。
蘭珠は考えていました。
しかし……
(そちらの話はもう、私には何の関係もないこと……)
離縁を決めた名門凌家の世継ぎがどうなるのか、そんなことを案じても蘭珠にはどうしようもないことでした。
文字通り、これから縁の離れる相手のことですから……
「この度のお話は謹んでお受けいたします」
シンプルなドレスの裾を柔らかに広げて、蘭珠は頭を下げました。
そして義母の返事を待たずして扉の方へ向かい……
短い挨拶とともに退室します。最後に見えたのは、酒器を振りかぶったような義母の姿。
扉越しの室内から、ゴトン、というような鈍い音が聞こえました。
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