姑が勝手に連れてきた第二夫人が身籠ったようですが、夫は恐らく……

泉花ゆき

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名門凌夫人は連花リェンホアの声には答えずどこか上の空で身支度を進めていくのみで……

「ちょっと出てくるわ」

あげく、使用人頭にそのような言葉を残して外へ出て行ってしまいました。
取り残された連花リェンホアは、豪華としか言いようのない品々に囲まれながら、ぽかんとその姿を見送るのみです。

(どういうことぉ……?)




――カツ、カツ、カツ

廊下に硬い靴底の音を鳴らしながら足早に歩く凌夫人。
頭の中で、さっき聞いた連花リェンホアの言葉が離れてくれません。

(第一夫人……そう……あの子が今度は……)

せっかく蘭珠ランジュを追い出したというのに、という想いが胸の中で膨れ上がっていきます。
けれど、連花リェンホアは名門凌家念願である子を孕んでいる身……

彼女の身体を大事にしなければならない。
少なくとも、あと一年ほどの間は、です。

頭では分かっているはずなのに、凌夫人は心のどこかで、黒い感情が生まれていくのを覚えました。

「……馬鹿馬鹿しい」

凌夫人は薄手袋に包まれた親指の爪を無意識の内にギリッと噛み……使用人に用意させた凌家所有の馬車へ乗り込みます。

「……例のところへ行ってちょうだい」

「かしこまりました」

そう指図をすると、御者や使用人は心得たものとして短く丁重に返事をして。

凌夫人がこの道を行くのは……今ではもう生家へ帰してしまいましたが、かつて蘭珠ランジュを嫁に迎えてから始まったことです。
この一年間で、もう何度も通っている場所を目指して馬車は走り出したのでした。
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