親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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……けれども、彼女はただでは転びませんでした。ふと顔を上げると、今度は勝ち誇ったような歪な笑みを私に向けたのです。

「あはは!まっ、そうだよねー。アルも大人になったってことか」

そう言ったかと思うと、じろりと視線を私へ向けてきます。

「……でもね、リリアーナちゃん。アルが良くても、おばさま……侯爵夫人は別だよ?」

カレン様は、わざとらしく溜息をつきながらティーカップをソーサーに置きました。

「おばさまはね、昔からこの家の伝統をすごく大事にしてるの。お客様に出すお菓子だってこの土地の古いレシピのものじゃないと、本当はあんまり喜ばないんだ」

「まあ……」

私は何と言っていいのか分からず、アルフレッド様と顔を見合わせるようにします。

(アルフレッド様、もしかしても話していらっしゃらないのかしら……)

「そういうの、リリアーナちゃんのご実家では教わらなかった?」

「その……」

アルフレッド様の伝えていないことを私から切り出していいものかも分からず、答えに窮するのを見て……カレン様はさらに身を乗り出してきました。

「やっぱりね。まあ、伯爵家だもんね。仕方ないか~。私なんて物心つく前からここに出入りしてるから、おばさまのタブーは全部わかってるつもり」

「……」

そう言うと、得意そうにドカッと背もたれへと深く座り直して膝を組み替えます。そして、アルフレッド様へ話を向けました。

「ね~え、アル。今度私が新しいレシピ、おばさまに教えてあげようか?リリアーナちゃんが持ってきたみたいな流行りの苦いやつじゃなくて……もっとこの家にふさわしい、伝統的なやつをさ!」

アルフレッド様は、カレン様の言葉の裏にある私への嫌味に全く気づいていないようでした。それどころか、彼は無邪気に頷いてしまったのです。

「それは助かるよ。母様は確かに、最近の新しいお菓子には少し疎いところがあるからね」

「でっしょ~!?」

カレン様の鼻がひくひくと膨らむのが見えました。

「……けれどリリアーナが選んでくれたこれも、母様ならきっと喜んでくれると思うよ?」

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