親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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ひとしきり和やかな会話が続いた後、侯爵閣下が懐中時計を取り出しました。中を一瞥したあとでカチリと蓋を閉じます。

「……おっと、もうこんな時間か。リリアーナさん、楽しい時間は過ぎるのが早いものだね。実はこの後、夫人と共に領内の教会へ向かわねばならんのだ」

「教会へ、でございますか?」

私が問い返すと、夫人が補足するように優しく頷かれました。

「ええ。当家が長年支援している孤児院があるのだけれど……今日はその子供たちのための、収穫祭の事前式典があるのです」

それから夫人は、名残惜しそうにご自分の頬へ手を添えました。

「ごめんなさいね、本来であればリリアーナさんと夕食もご一緒したかったのに。正式な目録を捧げる儀式もあるから、領主夫婦として欠席するわけにはいかなくって」

「お気持ち、とても嬉しく思います。ご挨拶する時間を頂いてありがとうございました……それに、大切な公務のお時間前にお引止めしてしまい申し訳ございません」

私が深く頭を下げると、夫人は期待に満ちた瞳で見つめてくださいました。

「謝ることなんてありませんよ。むしろあなたのように聡明で、気遣いのできる方が将来の侯爵夫人として隣にいてくださるなら……こうした慈善活動でもどれほど心強いことか」

そして、アルフレッド様へも声をかけます。

「アルフレッド、リリアーナさんをしっかりお守りするのですよ」

「もちろんです、母様」

アルフレッド様が誇らしげに応じる中、横からつんざくような声が響きました。

「おばさま!その式典、私も行きます!」

カレン様は身を乗り出すと、まるですがりつくようにして夫人の腕を掴みます。

「ほら私って、子供たちともすぐ仲良く出来るし?いろいろ気が利くって言われるし、細かいとことか気が付くし……大事な式典だったら絶対に連れて行ったほうがいいと思う。ね!?」

「カレン。……気持ちは嬉しいけれど」

……けれども、すがられた侯爵夫人の眼差しは冷静なものでした。

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