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「これはカスティエル侯爵家としての公式行事なの。貴女はあくまで隣領のご令嬢……我が家の公務に深く関わりすぎるのは、周囲に誤解を与えかねません。……わかりますね?」
カレン様は一瞬言葉に詰まったけれど、尚も言い募ります。
「……っ、でもでも。今までだって、私……家族みたいに……」
「これまではアルフレッドに婚約者がおりませんでしたから、多めに見ることもありました……けれど、今はリリアーナさんがいらっしゃるでしょ?」
夫人の言葉はあくまでも声の調子すら穏やかです。けれど内容としては、これ以上ないほどはっきりとカレン様を突き放すものでした。
「あなたは大切なお客様ですから、どうぞ屋敷でゆっくりお過ごしなさい。……行きましょう、あなた」
「ああ。リリアーナさん、また会えることを楽しみにしているよ」
侯爵夫妻は終始穏やかながら、決して意志を変えぬ毅然とした足取りで部屋を後にされました。
残されたのは、重苦しい沈黙が漂う応接室。
「なんで………だって私は………」
カレン様は夫人に拒絶されたショックでなのか顔を真っ青にさせ、震える指先で自分の衣服の裾を強く握りしめていました。
……一方のアルフレッド様は、そんな彼女の絶望にも気づく様子はありません。私の方へと微笑みかけてきました。
「母様たち、本当に君を気に入ったみたいだ。よかった、リリアーナ」
「ええ……」
(アルフレッド様は、本当にこの空気を何とも思っていないのかしら……)
そんなことを考えていた時。
私はもう一つ、お渡ししなければと思っていたものを、忘れていたことに気づきました。
「あ……アルフレッド様、申し訳ありません。夫人に、もう一つお渡ししたいものがあったのを失念しておりました。お追いしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。まだすぐそこに居るだろうし、行ってくるといい」
アルフレッド様の許可を得て礼を送ると、私は少しだけ足取りを早めて部屋を出ました。
「えっ、何!?私も行く!」
……背後でカレン様の声が聞こえましたが、今は構っていられません。
カレン様は一瞬言葉に詰まったけれど、尚も言い募ります。
「……っ、でもでも。今までだって、私……家族みたいに……」
「これまではアルフレッドに婚約者がおりませんでしたから、多めに見ることもありました……けれど、今はリリアーナさんがいらっしゃるでしょ?」
夫人の言葉はあくまでも声の調子すら穏やかです。けれど内容としては、これ以上ないほどはっきりとカレン様を突き放すものでした。
「あなたは大切なお客様ですから、どうぞ屋敷でゆっくりお過ごしなさい。……行きましょう、あなた」
「ああ。リリアーナさん、また会えることを楽しみにしているよ」
侯爵夫妻は終始穏やかながら、決して意志を変えぬ毅然とした足取りで部屋を後にされました。
残されたのは、重苦しい沈黙が漂う応接室。
「なんで………だって私は………」
カレン様は夫人に拒絶されたショックでなのか顔を真っ青にさせ、震える指先で自分の衣服の裾を強く握りしめていました。
……一方のアルフレッド様は、そんな彼女の絶望にも気づく様子はありません。私の方へと微笑みかけてきました。
「母様たち、本当に君を気に入ったみたいだ。よかった、リリアーナ」
「ええ……」
(アルフレッド様は、本当にこの空気を何とも思っていないのかしら……)
そんなことを考えていた時。
私はもう一つ、お渡ししなければと思っていたものを、忘れていたことに気づきました。
「あ……アルフレッド様、申し訳ありません。夫人に、もう一つお渡ししたいものがあったのを失念しておりました。お追いしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。まだすぐそこに居るだろうし、行ってくるといい」
アルフレッド様の許可を得て礼を送ると、私は少しだけ足取りを早めて部屋を出ました。
「えっ、何!?私も行く!」
……背後でカレン様の声が聞こえましたが、今は構っていられません。
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