38 / 92
38
既にカレン様とのお話合いなど何もなかったかのように、エリオットへと気さくに話し掛けています。
「お会いできて光栄です、アルフレッド様。……急なことなのですが、姉には至急自邸にて確認してほしい事柄が出来まして。本日はこれでお暇をしようかと考えております」
エリオットは定型句を返すと、特に会話を広げることもなくまるで事務報告でもするかのように淡々と帰宅の意思を告げました。
侯爵閣下ですら、ご公務でお忙しいということもあったでしょうが……エリオットのこの言い分にはすぐに納得してくださったと言うのに。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!リリアーナ、まだ話があるんだ……頼む、急に帰るなんて言わないでおくれよ」
アルフレッド様は退かずに食い下がり、焦ったように私の手を取ろうとします。けれどもエリオットがさりげなく私の前に一歩踏み出し、その手を遮りました。
「申し訳なく存じます、アルフレッド様。……けれども」
弟の配慮をありがたく感じながらも、私はアルフレッド様へとカーテシーを送りました。
「私のような部外者がこれ以上こちらに滞在し、望ましくない営みの妨げになるのは本意ではございません……早々に退散させていただきたく思います」
そう告げたことではっきりと、私がアルフレッド様とカレン様……お二人の会話内容を知っているということを伝えます。
……傍らでは、エリオットが表情を固くしたのが分かりました。
「リリアーナ……!君はやはり……!」
……アルフレッド様は、悲痛なほどの声を出されます。
(私が居ないと思って出した、カレン様への慰めの言葉ですものね……でも……)
……もしも耳に入るはずがない、と考えていたのなら。それはあまりにも不用心なように感じました。
「リリアーナ……違うんだ。その……さっきのは、カレンが泣いていて、仕方なく……」
アルフレッド様の言葉は、しどろもどろでした。彼は私が何かを聞いたことは分かったようです。けれどもどこまで会話を聞いていたのかの確証は持てないで居るようでした。
「……」
「な、何とか言ってくれ、リリアーナ……」
「お会いできて光栄です、アルフレッド様。……急なことなのですが、姉には至急自邸にて確認してほしい事柄が出来まして。本日はこれでお暇をしようかと考えております」
エリオットは定型句を返すと、特に会話を広げることもなくまるで事務報告でもするかのように淡々と帰宅の意思を告げました。
侯爵閣下ですら、ご公務でお忙しいということもあったでしょうが……エリオットのこの言い分にはすぐに納得してくださったと言うのに。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!リリアーナ、まだ話があるんだ……頼む、急に帰るなんて言わないでおくれよ」
アルフレッド様は退かずに食い下がり、焦ったように私の手を取ろうとします。けれどもエリオットがさりげなく私の前に一歩踏み出し、その手を遮りました。
「申し訳なく存じます、アルフレッド様。……けれども」
弟の配慮をありがたく感じながらも、私はアルフレッド様へとカーテシーを送りました。
「私のような部外者がこれ以上こちらに滞在し、望ましくない営みの妨げになるのは本意ではございません……早々に退散させていただきたく思います」
そう告げたことではっきりと、私がアルフレッド様とカレン様……お二人の会話内容を知っているということを伝えます。
……傍らでは、エリオットが表情を固くしたのが分かりました。
「リリアーナ……!君はやはり……!」
……アルフレッド様は、悲痛なほどの声を出されます。
(私が居ないと思って出した、カレン様への慰めの言葉ですものね……でも……)
……もしも耳に入るはずがない、と考えていたのなら。それはあまりにも不用心なように感じました。
「リリアーナ……違うんだ。その……さっきのは、カレンが泣いていて、仕方なく……」
アルフレッド様の言葉は、しどろもどろでした。彼は私が何かを聞いたことは分かったようです。けれどもどこまで会話を聞いていたのかの確証は持てないで居るようでした。
「……」
「な、何とか言ってくれ、リリアーナ……」
あなたにおすすめの小説
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
愛はリンゴと同じ
turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。
夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。
ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。
幾つもあるなど考えられない。
ジェリー・ベケットは愛を信じられない
砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。
母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。
それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。
しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。
だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。
学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。
そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。
※世界観はゆるゆる
※ざまぁはちょっぴり
※他サイトにも掲載
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し