親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

文字の大きさ
52 / 92

52

「……確かに僕は学園には通っておりません。それ自体は事実ですから、お気になさらず」

エリオットは私に向け、特に感情を波立たせてもいなさそうな穏やかな声でそう告げました。その落ち着いた横顔を見て、この子の方があの二人よりもよほど大人なのだと私は小さく息を吐きます。

けれども、ここで余計な口を挟んだのはアルフレッド様でした。

「よすんだカレン、エリオット君は確かに学園には行っていないが……それは彼が幼い頃から王城に上がっているからだ」

「は?お城?……なによ、下働きか何かで入ってるの?」

貴族令息令嬢が自らよりも格上の貴族邸や王宮にて働くことは珍しいことではありません。カレン様はそちらであるようだと勘違いされたようですが……

「いや、そうではなくて……彼はそちらで王子たちと共に学んでいるんだよ。学園ではなく、専門の教育師たちがついている、王子の側近候補なんだ……!」

アルフレッド様はすべてを話されてしまいました。

「僕だって彼の存在には一目置いているくらいなんだから……そうだろ、リリアーナ!」

この国で誰が王族に仕えているかなどは少し調べれば分かることで、隠す必要もありません。アルフレッド様も広い意味では王子と同年代であり、高位貴族としてそのことを知っていたのでしょう。

事実、我が邸にとっても誇るべきことですが……この場では野蛮な動物に餌を与えるようなことにしかならないのでは、と嫌な予感がよぎりました。

アルフレッド様はエリオットの優秀さを自慢することで、少しでもこの場の空気を良くしようとしたのかもしれません。 
けれども……

「はぁ~!?あんな生意気な子供が王子の側近候補!?信じられない、どうしてあんな子が……!」

カレン様は一度、カッとなったようにアルフレッド様を問い詰めます。
けれども再びエリオットを見たカレン様のその目は、まるで獲物を見定めた肉食獣のように鋭く光ったのです。

嫌な予感は、カレン様の表情が変わったことで的中したことを知るのでした。

あなたにおすすめの小説

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

なぜ、虐げてはいけないのですか?

碧井 汐桜香
恋愛
男爵令嬢を虐げた罪で、婚約者である第一王子に投獄された公爵令嬢。 処刑前日の彼女の獄中記。 そして、それぞれ関係者目線のお話

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

愛はリンゴと同じ

turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。 夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。 ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。 幾つもあるなど考えられない。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載