親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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「ひっ……」

エリオットの声は重く低く響いて、エントランスの空気を凍りつかせます。
もはやエリオットにとってカレン様は、話の通じない人間ではないものとして認識した模様。

完全にカレン様の方を見ないものとして、アルフレッド様だけへと冷ややかな視線を送ります。

「アルフレッド様。あなたがその手に余る令嬢おもりを振りほどく努力すら放棄し……あろうことか姉にを宥めろと要求した時点で、我々の我慢は限界を超えました」

「そ、そんな……エリオット君まで……」

エリオットの視線が、アルフレッド様の肩越しにこちらを見ているカレン様を捉えました。
けれどそれはあくまで人間としてではなく、ただアルフレッド様に掛かる負担を眺めるだけの目。

エリオットが告げた最後通牒さいごつうちょうとも言える言葉に、カレン様は顔を真っ赤にして絶句しました。
けれどすぐに我に返ると、火がついたような勢いで喚き散らします。

「あんた、人を荷物みたいに……!何よその偉そうな口の利き方は!たかが伯爵家のガキのくせに私に説教するつもり!?ちょっと優しくしてやろうと思ったらつけ上がって……!」

カレン様はアルフレッド様の襟元を掴んだまま、私たちの背中に向けて言葉のつぶてを投げ続けます。

?……気安く私に触れようとしたその手を、二度と姉様や私に向けないでいただきたい。あなた方流の礼儀が移ってはたまらないので」

「はぁ~っ!?いい加減にしないとひどいわよ!」

エリオットは、もはや彼女の叫び声がただの騒音としてしか聞こえていないようでした。私に向き直ると、無言で出口への道を示します。その横顔には先ほどまでの苛立ちすら消え、ただ拒絶だけが残っていました。

「……それではアルフレッド様。本日の出来事は、父にもありのままを報告させていただきます」

私が最後の一礼を済ませると、エリオットは迷いのない足取りで歩き出しました。

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