88 / 93
88
いわく、御前の態度は淑女としていかがなものか。いわく、感情的で冷静さを欠いている。いわく、友人を温かく迎えないのはベルンシュタイン家の教育を疑わせる。
挙げ句には独善的な赦しへの通告が結びとなっています。
それは、今日の午後に邸へ来れば、すべてを水に流してやる……という知らせでした。
アルコールの香りがするようだと感じられたのは、気のせいではないようです。どうあっても不躾な通り、手紙には赤ワインのシミが点々と落ちていたのですから。
(急ぎとして朝から送らせるものがこれだなんて……)
私が昨日あの場を辞してから、程ない内に認められたとしか思えない時間です。
読み進めるうちに、私の指先はどうにも冷たくなっていったようです。込み上げてきたのは呆れと虚しさ。
それは怒りよりも先に胸の奥から噴き出しました。
これほどまでに私のことを軽んじた相手。そして価値観を押し付けてくることへの、底知れない虚しさが込み上げてきたのです。
(アルフレッド様は、ご自分が私に対してどんなことをされているのか、それがどれだけ失礼なことなのか。ちらりとも思い至っていないのですね……)
『諦めないからな!』
そう叫んでいた彼の声が、耳の内に残っているかのようで寒い心地が蘇ります。
(これが諦めない、と言った方のすることだなんて)
私を教育が必要な分からず屋として扱い、上から目線で教えを説こうとしています。
それどころか、我が伯爵家に対しても布告と捉えられかねない言葉たち。
「ご両親はご存知なのかしら、このような手紙……」
アルフレッド様に比べれば、まだ現状……カレン様の在り方に危機感を持っているように思われたお二人です。
けれども、この封蝋の押し方一つ。手紙に点々と落ちているワインのシミ一つ取っても、あの二人がこの手紙のことをご存知だとはとても思えません。
私は手紙を机の上に置きました。このようなものを前にして、震えることも涙を流すこともありません。
挙げ句には独善的な赦しへの通告が結びとなっています。
それは、今日の午後に邸へ来れば、すべてを水に流してやる……という知らせでした。
アルコールの香りがするようだと感じられたのは、気のせいではないようです。どうあっても不躾な通り、手紙には赤ワインのシミが点々と落ちていたのですから。
(急ぎとして朝から送らせるものがこれだなんて……)
私が昨日あの場を辞してから、程ない内に認められたとしか思えない時間です。
読み進めるうちに、私の指先はどうにも冷たくなっていったようです。込み上げてきたのは呆れと虚しさ。
それは怒りよりも先に胸の奥から噴き出しました。
これほどまでに私のことを軽んじた相手。そして価値観を押し付けてくることへの、底知れない虚しさが込み上げてきたのです。
(アルフレッド様は、ご自分が私に対してどんなことをされているのか、それがどれだけ失礼なことなのか。ちらりとも思い至っていないのですね……)
『諦めないからな!』
そう叫んでいた彼の声が、耳の内に残っているかのようで寒い心地が蘇ります。
(これが諦めない、と言った方のすることだなんて)
私を教育が必要な分からず屋として扱い、上から目線で教えを説こうとしています。
それどころか、我が伯爵家に対しても布告と捉えられかねない言葉たち。
「ご両親はご存知なのかしら、このような手紙……」
アルフレッド様に比べれば、まだ現状……カレン様の在り方に危機感を持っているように思われたお二人です。
けれども、この封蝋の押し方一つ。手紙に点々と落ちているワインのシミ一つ取っても、あの二人がこの手紙のことをご存知だとはとても思えません。
私は手紙を机の上に置きました。このようなものを前にして、震えることも涙を流すこともありません。
あなたにおすすめの小説
三度裏切られた私が、四度目で「離婚」を選ぶまで
狛犬
恋愛
三度、夫に裏切られた。
一度目は信じた。
二度目は耐えた。
三度目は――すべてを失った。
そして私は、屋上から身を投げた。
……はずだった。
目を覚ますと、そこは過去。
すべてが壊れる前の、まだ何も起きていない時間。
――四度目の人生。
これまでの三度、私は同じ選択を繰り返し、
同じように裏切られ、すべてを失ってきた。
だから今度は、もう決めている。
「もう、陸翔はいらない」
愛していた。
けれど、もう疲れた。
今度こそ――
自分を守るために、家族を守るために、
私は、自分から手を放す。
これは、三度裏切られた女が、
四度目の人生で「選び直す」物語。
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
ジェリー・ベケットは愛を信じられない
砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。
母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。
それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。
しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。
だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。
学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。
そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。
※世界観はゆるゆる
※ざまぁはちょっぴり
※他サイトにも掲載
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
愛はリンゴと同じ
turarin
恋愛
学園時代の同級生と結婚し、子供にも恵まれ幸せいっぱいの公爵夫人ナタリー。ところが、ある日夫が平民の少女をつれてきて、別邸に囲うと言う。
夫のナタリーへの愛は減らない。妾の少女メイリンへの愛が、一つ増えるだけだと言う。夫の愛は、まるでリンゴのように幾つもあって、皆に与えられるものなのだそうだ。
ナタリーのことは妻として大切にしてくれる夫。貴族の妻としては当然受け入れるべき。だが、辛くて仕方がない。ナタリーのリンゴは一つだけ。
幾つもあるなど考えられない。
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新