親同士の決め事でしょう?

泉花ゆき

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夫人は吐き捨てるように言うと、汚らわしいものを見る目でカレンから視線を外した。
視線をそらされたカレンと言えば、今しがたまで焦っていたことも忘れて夫人からの忠告を暴言と捉えたようだった。

「あの……だからぁ……」

口の中でもごもごと言いながら、またたく間に不機嫌さをあらわにしている。しかしそちらを見ていない夫人はまだそのことに気が付いていない。
そんなことよりも、その姿を直視するのも嫌だという感情が勝っているようで力なく首を振った。

「言い訳はもう結構……今のあなたの姿そのものが、この侯爵邸に対する侮辱です」

カレンは叱責をいとったが、反論や弁解の余地などどこにもなかった。夫妻は帰宅したこの屋敷の正式な主人。
その主人が留守をしている合間にカレンがこの屋敷でいかに自分勝手で自堕落に振る舞っていたのかというのが、部屋と本人の惨状から簡単にうかがい知れるものだったからだ。

「アルぅ、おばさまが意地悪言うんだけどぉ……!」

許しを得ることはできないと気が付いたカレンは、方向を変えて隣のアルフレッドに助けを求めた。
未だアルコールの海を漂いながら揺れているアルの腕にべったりと絡みつきながら、まるで幼い子供のように訴える。

その言い様がまた夫人のいら立ちを逆撫でしていった。
彼女としては当然のことを主張しているまでに過ぎないのだから。

「意地悪ですって……!?」

「アルフレッド、答えなさい」

激昂している夫人の隣で、侯爵の低い声が響いた。アルフレッドはゆっくりと首を巡らせたが、父親の怒りに気づく様子もなくだらしなくへらへらと笑うばかり。

「はああい。僕が……そうです……リリアーナに、手紙を……教え、諭して……やったから……あいつも、じきに、ここへ……」

そしてまた、彼にとって一番の主張であるだろう言葉を繰り返すのみ。
これを聞いた侯爵はこれ以上の問答を無用と判断したようだった。硬い表情を崩さぬままに使用人を呼びつける。





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