まねをしてくる令嬢に婚約者を取られたので、偽りの情報で破滅させます

泉花ゆき

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物心がついてから今に至るまで、私には反抗らしい反抗もした覚えがありません。両親を失望させることが、何よりも怖かったのです。  

──ガタン……

馬車が大きく揺れて、私の思考は中断されました。
屋敷の敷地内に入ったようです。

いつもなら、家に帰れるという安心感に包まれるはずなのに、今日だけは逃げ出したくなってしまいました。

「……いいえ、しっかりしなくては。私は何も悪いことはしていないはずだもの」

自分に言い聞かせるように、膝の上で拳を握り締めました。

……メアリィ様の、あの不気味な言葉。

『またお揃いのもの持ちましょうよ』

あれは、これからも私を追い回すという宣言に他なりません。
家を守るためにも、まずは現状を正しく伝えなければならないのです。

やがて馬車が止まりました。
御者が扉を開けてくれるのを待って、私はゆっくりと外へ足を踏み出しました。

けれども、重い足取りで玄関に向かおうとした時、ふと異変に気づきます。

(屋敷の玄関先が、何だか騒がしい……?)

普段なら、何人かの使用人たちが帰宅した私を迎えてくれるはずです……けれど今は、数人が集まって何事か話し込んでいます。
そこには、使用人たちを取り仕切る執事の姿もありました。

「一体、何事ですの?」

私の問いかけに、執事がハッとしてこちらを向きました。
その顔には驚きと、どこか安堵したような色が混じっています。

「これは、セレスティーヌ様。お帰りなさいませ。……実は、かねてより捜査をお願いされておりました、あのネックレスの件に動きがありまして」

「ネックレスの件……!?」

私は目を瞬かせました。
数週間前……宝石のついたネックレスが、私の部屋から消えてしまったのです。
どこかで落としたのか、あるいは誰かが持ち出したのか分からず……お父様に頼んで内密に調べてもらっていました。

(それはいつの間にか、メアリィ様の首に掛かっていたのだけれど……)

「犯人が……見つかったのですか……?」

「はい。たった今、確かな証拠が見つかりました。……今、その者をこちらへ連れてくるよう手配したところです」

執事の言葉が終わるか終わらないかのうちに、玄関の中から泣き叫ぶような声が聞こえてきました。

「お許しください!違うんです、これは……私は、私はただ……っ!」

二人の屈強な下男に両脇を抱えられ引きずり出されてきたのは、一人の若い女性でした。
その姿を見て、私は息を呑みました。……彼女は、私の身の回りの世話を任せていた……私付きのメイドの一人だったからです。

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