14 / 14
14
しおりを挟む
物心がついてから今に至るまで、私には反抗らしい反抗もした覚えがありません。両親を失望させることが、何よりも怖かったのです。
──ガタン……
馬車が大きく揺れて、私の思考は中断されました。
屋敷の敷地内に入ったようです。
いつもなら、家に帰れるという安心感に包まれるはずなのに、今日だけは逃げ出したくなってしまいました。
「……いいえ、しっかりしなくては。私は何も悪いことはしていないはずだもの」
自分に言い聞かせるように、膝の上で拳を握り締めました。
……メアリィ様の、あの不気味な言葉。
『またお揃いのもの持ちましょうよ』
あれは、これからも私を追い回すという宣言に他なりません。
家を守るためにも、まずは現状を正しく伝えなければならないのです。
やがて馬車が止まりました。
御者が扉を開けてくれるのを待って、私はゆっくりと外へ足を踏み出しました。
けれども、重い足取りで玄関に向かおうとした時、ふと異変に気づきます。
(屋敷の玄関先が、何だか騒がしい……?)
普段なら、何人かの使用人たちが帰宅した私を迎えてくれるはずです……けれど今は、数人が集まって何事か話し込んでいます。
そこには、使用人たちを取り仕切る執事の姿もありました。
「一体、何事ですの?」
私の問いかけに、執事がハッとしてこちらを向きました。
その顔には驚きと、どこか安堵したような色が混じっています。
「これは、セレスティーヌ様。お帰りなさいませ。……実は、かねてより捜査をお願いされておりました、あのネックレスの件に動きがありまして」
「ネックレスの件……!?」
私は目を瞬かせました。
数週間前……宝石のついたネックレスが、私の部屋から消えてしまったのです。
どこかで落としたのか、あるいは誰かが持ち出したのか分からず……お父様に頼んで内密に調べてもらっていました。
(それはいつの間にか、メアリィ様の首に掛かっていたのだけれど……)
「犯人が……見つかったのですか……?」
「はい。たった今、確かな証拠が見つかりました。……今、その者をこちらへ連れてくるよう手配したところです」
執事の言葉が終わるか終わらないかのうちに、玄関の中から泣き叫ぶような声が聞こえてきました。
「お許しください!違うんです、これは……私は、私はただ……っ!」
二人の屈強な下男に両脇を抱えられ引きずり出されてきたのは、一人の若い女性でした。
その姿を見て、私は息を呑みました。……彼女は、私の身の回りの世話を任せていた……私付きのメイドの一人だったからです。
──ガタン……
馬車が大きく揺れて、私の思考は中断されました。
屋敷の敷地内に入ったようです。
いつもなら、家に帰れるという安心感に包まれるはずなのに、今日だけは逃げ出したくなってしまいました。
「……いいえ、しっかりしなくては。私は何も悪いことはしていないはずだもの」
自分に言い聞かせるように、膝の上で拳を握り締めました。
……メアリィ様の、あの不気味な言葉。
『またお揃いのもの持ちましょうよ』
あれは、これからも私を追い回すという宣言に他なりません。
家を守るためにも、まずは現状を正しく伝えなければならないのです。
やがて馬車が止まりました。
御者が扉を開けてくれるのを待って、私はゆっくりと外へ足を踏み出しました。
けれども、重い足取りで玄関に向かおうとした時、ふと異変に気づきます。
(屋敷の玄関先が、何だか騒がしい……?)
普段なら、何人かの使用人たちが帰宅した私を迎えてくれるはずです……けれど今は、数人が集まって何事か話し込んでいます。
そこには、使用人たちを取り仕切る執事の姿もありました。
「一体、何事ですの?」
私の問いかけに、執事がハッとしてこちらを向きました。
その顔には驚きと、どこか安堵したような色が混じっています。
「これは、セレスティーヌ様。お帰りなさいませ。……実は、かねてより捜査をお願いされておりました、あのネックレスの件に動きがありまして」
「ネックレスの件……!?」
私は目を瞬かせました。
数週間前……宝石のついたネックレスが、私の部屋から消えてしまったのです。
どこかで落としたのか、あるいは誰かが持ち出したのか分からず……お父様に頼んで内密に調べてもらっていました。
(それはいつの間にか、メアリィ様の首に掛かっていたのだけれど……)
「犯人が……見つかったのですか……?」
「はい。たった今、確かな証拠が見つかりました。……今、その者をこちらへ連れてくるよう手配したところです」
執事の言葉が終わるか終わらないかのうちに、玄関の中から泣き叫ぶような声が聞こえてきました。
「お許しください!違うんです、これは……私は、私はただ……っ!」
二人の屈強な下男に両脇を抱えられ引きずり出されてきたのは、一人の若い女性でした。
その姿を見て、私は息を呑みました。……彼女は、私の身の回りの世話を任せていた……私付きのメイドの一人だったからです。
111
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
【完結】恋人にしたい人と結婚したい人とは別だよね?―――激しく同意するので別れましょう
冬馬亮
恋愛
「恋人にしたい人と結婚したい人とは別だよね?」
セシリエの婚約者、イアーゴはそう言った。
少し離れた後ろの席で、婚約者にその台詞を聞かれているとも知らずに。
※たぶん全部で15〜20話くらいの予定です。
さくさく進みます。
今から婚約者に会いに行きます。〜私は運命の相手ではないから
毛蟹
恋愛
婚約者が王立学園の卒業を間近に控えていたある日。
ポーリーンのところに、婚約者の恋人だと名乗る女性がやってきた。
彼女は別れろ。と、一方的に迫り。
最後には暴言を吐いた。
「ああ、本当に嫌だわ。こんな田舎。肥溜めの臭いがするみたい。……貴女からも漂ってるわよ」
洗練された都会に住む自分の方がトリスタンにふさわしい。と、言わんばかりに彼女は微笑んだ。
「ねえ、卒業パーティーには来ないでね。恥をかくのは貴女よ。婚約破棄されてもまだ間に合うでしょう?早く相手を見つけたら?」
彼女が去ると、ポーリーンはある事を考えた。
ちゃんと、別れ話をしようと。
ポーリーンはこっそりと屋敷から抜け出して、婚約者のところへと向かった。
王妃ですが都からの追放を言い渡されたので、田舎暮らしを楽しみます!
藤野ひま
ファンタジー
わたくし王妃の身でありながら、夫から婚姻破棄と王都から出て行く事を言い渡されました。
初めての田舎暮らしは……楽しいのですが?!
夫や、かの女性は王城でお元気かしら?
わたくしは元気にしておりますので、ご心配御無用です!
〔『仮面の王と風吹く国の姫君』の続編となります。できるだけこちらだけでわかるようにしています。が、気になったら前作にも立ち寄っていただけると嬉しいです〕〔ただ、ネタバレ的要素がありますのでご了承ください〕
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは夫と婚姻してから三年という長い時間を振り返る。
その間、夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
【完結】記念日当日、婚約者に可愛くて病弱な義妹の方が大切だと告げられましたので
Rohdea
恋愛
昔から目つきが悪いことをコンプレックスにしている
伯爵令嬢のレティーシャ。
十回目のお見合いの失敗後、
ついに自分を受け入れてくれる相手、侯爵令息のジェロームと出逢って婚約。
これで幸せになれる───
……はずだった。
ジェロームとの出逢って三回目の記念日となる目前、“義妹”のステイシーが現れるまでは。
義妹が現れてからの彼の変貌振りにショックを受けて耐えられなくなったレティーシャは、
周囲の反対を押し切って婚約の解消を申し出るが、
ジェロームには拒否され挙句の果てにはバカにされてしまう。
周囲とジェロームを納得させるには、彼より上の男性を捕まえるしかない!
そう結論づけたレティーシャは、
公爵家の令息、エドゥアルトに目をつける。
……が、彼はなかなかの曲者で────……
※『結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが』
こちらの話に出て来るヒーローの友人? 親友? エドゥアルトにも春を……
というお声を受けて彼の恋物語(?)となります。
★関連作品★
『誕生日当日、親友に裏切られて婚約破棄された勢いでヤケ酒をしましたら』
エドゥアルトはこちらの話にも登場してます!
逃走スマイルベビー・ジョシュアくんの登場もこっちです!(※4/5追記)
私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる