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バサリ、と乾いた音が室内に響く。また一つ、書類の山が雪崩を起こした音だ。
「くそっ、なんでこんなにあるんだ!?」
国の第二王子でヴィクトリアの婚約者であるジェラルドは、王立学園の執務室にて頭を抱えて唸った。
目の前にあるのは、執務机の上が見えなくなるほど積み上げられた書類の山だ。確認が必要なもの、整理の必要なもの、ジェラルドがやっとの思いで提出したというのにすぐに訂正が入り戻ってきてしまったもの……
ミナが教室で騒ぎを起こしてから、数日が過ぎていた。 彼女の教科書が破られていた事件は、結局うやむやになっていた。
ミナが泣き叫んで逃げ出した後、ジェラルドは彼女を追いかけ……寮の部屋に閉じこもった彼女を慰めるのに一晩を費やした。
『怖いわ!みんなが私をいじめるの………』
『大丈夫だ、ミナ。僕は君の味方だから……!』
繰り返して嘆く彼女を抱きしめ宥め続ける夜だった。
犯人が誰であるとか鞄の中身がどうだとか、そんなことはジェラルドにとってどうでもよかった。
愛する女性か傷ついているという事実だけで、彼がミナを守る理由は十分だったからだ。
……けれども、代償は大きかった。
ジェラルドがミナにかまけている間にも、公務は待ってくれない。以前なら放っておいても翌朝には綺麗に片付いていたはずの仕事が、今は放っておけば放っておくだけ増えてしまっている。
「おい、これはどうなっているんだ。数字が合わないぞ!」
ジェラルドは書類を運んできた男子生徒を怒鳴りつける。
「も、申し訳ありません殿下。けれど、その計算は以前ヴィクトリア様が……」
「またヴィクトリアか……!どいつもこいつも、あの女の名前ばかり出しやがってっ」
ジェラルドはペンを投げつけた。インクが飛び散り机を汚すが彼に気にする余裕はない。
ヴィクトリア、それはジェラルド曰く可愛げのない婚約者だった。ある日突然、公務をしろと机に笑顔で書類を置いていって以来……ヴィクトリアは本当に、ジェラルドのためには何もしなくなった。
執務室にも顔を出さず、ジェラルドへの進言もしない。ただ穏やかに授業を受け、放課後はさっさと帰宅してしまう。
……おかげでジェラルドは何日も何日も公務に追われることとなった。
(王立学園の運営は、これほどまでに雑多な業務で成り立っていたのか………)
ジェラルドは今まで、完成された書類にサインをするだけで済んでいた。これほどの手間がかかるとは想像もしていなかったのだ。
「……呼び出せ」
ジェラルドはギリッと歯噛みしながら命じた。
「ヴィクトリアをここへ呼べ!今すぐにだ!」
「くそっ、なんでこんなにあるんだ!?」
国の第二王子でヴィクトリアの婚約者であるジェラルドは、王立学園の執務室にて頭を抱えて唸った。
目の前にあるのは、執務机の上が見えなくなるほど積み上げられた書類の山だ。確認が必要なもの、整理の必要なもの、ジェラルドがやっとの思いで提出したというのにすぐに訂正が入り戻ってきてしまったもの……
ミナが教室で騒ぎを起こしてから、数日が過ぎていた。 彼女の教科書が破られていた事件は、結局うやむやになっていた。
ミナが泣き叫んで逃げ出した後、ジェラルドは彼女を追いかけ……寮の部屋に閉じこもった彼女を慰めるのに一晩を費やした。
『怖いわ!みんなが私をいじめるの………』
『大丈夫だ、ミナ。僕は君の味方だから……!』
繰り返して嘆く彼女を抱きしめ宥め続ける夜だった。
犯人が誰であるとか鞄の中身がどうだとか、そんなことはジェラルドにとってどうでもよかった。
愛する女性か傷ついているという事実だけで、彼がミナを守る理由は十分だったからだ。
……けれども、代償は大きかった。
ジェラルドがミナにかまけている間にも、公務は待ってくれない。以前なら放っておいても翌朝には綺麗に片付いていたはずの仕事が、今は放っておけば放っておくだけ増えてしまっている。
「おい、これはどうなっているんだ。数字が合わないぞ!」
ジェラルドは書類を運んできた男子生徒を怒鳴りつける。
「も、申し訳ありません殿下。けれど、その計算は以前ヴィクトリア様が……」
「またヴィクトリアか……!どいつもこいつも、あの女の名前ばかり出しやがってっ」
ジェラルドはペンを投げつけた。インクが飛び散り机を汚すが彼に気にする余裕はない。
ヴィクトリア、それはジェラルド曰く可愛げのない婚約者だった。ある日突然、公務をしろと机に笑顔で書類を置いていって以来……ヴィクトリアは本当に、ジェラルドのためには何もしなくなった。
執務室にも顔を出さず、ジェラルドへの進言もしない。ただ穏やかに授業を受け、放課後はさっさと帰宅してしまう。
……おかげでジェラルドは何日も何日も公務に追われることとなった。
(王立学園の運営は、これほどまでに雑多な業務で成り立っていたのか………)
ジェラルドは今まで、完成された書類にサインをするだけで済んでいた。これほどの手間がかかるとは想像もしていなかったのだ。
「……呼び出せ」
ジェラルドはギリッと歯噛みしながら命じた。
「ヴィクトリアをここへ呼べ!今すぐにだ!」
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