婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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王都の貴族街を歩くミナの気分はいい。特になどは最高潮だった。

騎士団長の息子であるカインと、宰相の息子であるレイ。見栄えの良い二人の貴公子を両脇に従えて歩けば、通り過ぎる同年代の令嬢たちが羨ましそうにこちらを振り返る。

その視線を浴びるたびに、ミナは自分が物語の主人公であることを再確認して優越感に浸っていた。

……が。
肝心の買い物が始まると、思っていたものとは全く違う展開になっていく。ミナの期待はみるみる内に萎んでいった。

「わあ!素敵!」

「……ん?そうだな、確かに綺麗だ」

ミナが華やかなジュエリーショップのショーウィンドウを指をさす。
そうしながらカインの袖を引くと、彼からもいい感触が返ってくる。

「ねえカイン様、あのネックレスって私に似合うと思うなあ」

だと言うのに、そうやって水を向けるとカインは困ったように眉を下げた。

「綺麗だが……ミナ、その値段は流石に。僕の家は騎士の家系だから、贅沢品にはあまり縁がないんだ」

「ああ、そう……?」

(何それ使えない。何のために連れてきたのか分かったもんじゃないわ)

ミナはするっとカインの隣を抜けてレイの腕へと腕を絡ませる。そうしながら、別の店舗を仰ぎ見た。

「レイ様、あそこにあるドレスとっても素敵ね!」

けれども今度はレイが眼鏡のブリッジを押し上げながら、ため息交じりに首を振った。

「今の予算では不可能です。君にそこまで高価なものを与えるわけにはいかないんだ」

「……え?」

ミナが驚きの目で彼を見ると、レイは困ったように視線を逸らした。

「……婚約者がいる身分で何を遊んでいるのかと親に叱責されてしまいますし、立場というものもあって……」

中庭でヴィクトリアに叱責された、先日の一件はそれなりに尾を引いているらしい。
ミナは舌打ちしたい気分だった。

ジェラルドを連れていた時なら、二つ返事で店ごと買い占める勢いだったはずなのに。この二人の財布は驚くほどに用をなさない。

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