婚約者に浮気されたので、肩代わりしてた公務その他をお返しします

泉花ゆき

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ステージから遠い入口のこの位置からでは、ヴィクトリアとソフィアが何を話していたのかまでは聞き取ることができない。
ミナにわかることは、嫌味を言う気満々で出て行ったソフィアが、少しヴィクトリアと話しただけで毒気を抜かれてしまっているということだけだ。

それどころか、二人の会話を皮切りにするように令嬢たちがヴィクトリアを囲んでいくではないか。
それは決して悪感情を持って排斥しようというような動きではなく、明らかな称賛と敬意にあふれたまなざしで、女性たちがヴィクトリアの元へ集まっているのだった。

(何よ、どういうこと……!?)

ソフィアが全く使えないことは分かった。
だとしても、ステージの上のあの騒ぎは何だっていうのか。

ホールの中では一段高くなったステージの上で、ヴィクトリアが数多の令嬢たちに囲まれている。
群がる令嬢たちの輪の中に彼女はいる。

ジェラルドの隣で、ミナは息を呑んだ。腕に力を込めるのも忘れ、ただ呆然と正面を見つめる。

それはヒロインの……ではなかったのか?

ここに来る前に自分を追い越していった、またはすれ違った生徒たちのように。
誰も彼もが、残らずヴィクトリアに魅了されているようではないか。

ホールの入り口に立つジェラルドとミナ。
二人の影は、華やぐ空気から切り離されたかのように重く沈んでいた。

ジェラルドなどはホールの中心で令嬢たちに囲まれる婚約者の姿を、ただ凝視することしかできなかった。


視線の先にいるヴィクトリアは、彼がこれまで選び買い付けるように言いつけたドレスを着ていない。彼女の肌をくすませるだとかそんなことはジェラルドは考えていなかったが……ともかくヴィクトリアが、ジェラルドが選んだ淡い色のドレスを着ていないのだ。

代わりに纏っているのは、まるでこれまでのものとは異なっている深い色のドレス。その色は彼女の透き通るような白さを際立たせ、高潔な意志さえも浮き彫りにしているようだった。

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