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ベッドの上、奈緒は身体をよじって与えられる快楽から逃れようとする。両手首を縛られてベッドのパイプに固定されているし、広げた脚も押さえつけられているから、ほとんど逃れられないのだけど。
ウィーンという無機質な機械音と、奈緒の喘ぐ声が、静かな部屋を満たしていく。
「も、晴翔くん、お願い……、止めて、」
「まだだめー。あと5回イったらな」
「そんな、もう無理っ」
「大丈夫。奈緒の『無理』は、もっとして、って意味なこと、知ってるんだから」
「あぁ……んっ」
敏感な場所に玩具を押しつけられて、奈緒は悲鳴をあげて身体を震わせる。
「奈緒、イく時はちゃんと言わないと。今のはカウントしないから」
「や、待って、だってもう頭の中ぐちゃぐちゃで分かんな……あぁっ」
立て続けの絶頂に、がくがくと震える奈緒の頬に触れて、晴翔は優しく笑う。
「ほらまた。ちゃんと言わないと、いつまでも終わらないよ?……あ、もしかしてそれが狙い?」
「ちが、違う……っ」
首を振って否定するけれど、奈緒の身体はもっと酷くされたいと疼いている。きっと晴翔は、それもお見通しだ。
だけど、一番欲しいものはもう決まっている。
奈緒は必死で息を整えながら、晴翔を見上げた。
「も、お願い……晴翔くん……が、欲しいのっ」
喘ぐように搾り出した声に、晴翔は息をのんで口元を押さえた。
「……っ、それはクるな」
少し余裕のなさそうな表情で、晴翔は奈緒の手を縛っていた紐を解く。
「奈緒、もっと抱きついて」
大好きな声が、耳元で囁く。奈緒は、晴翔の首に腕を回すとしっかりと抱きついた。
「この時だけは素直に抱きついてくれるよな、奈緒」
「ん……晴翔くん、あったかいから、くっつくの好き……、あ、んんっ」
話している最中に一気に貫かれて、奈緒の腕に力がこもる。
「俺も、奈緒に抱きつかれるの好き。必死にしがみついてくるところとか、本当可愛い」
「や、あ、待って、激し……」
揺さぶられて、奈緒の言葉は細切れに途切れる。晴翔は奈緒の言葉を奪うように深く口づけたあと、快楽に蕩ける顔をのぞきこんだ。
「奈緒、俺のこと好き?」
「あ、んんっ、好き、晴翔くんが、好き」
「もっと言って、奈緒」
「晴翔くん、好き、大好き……っ」
「可愛い、奈緒。絶対離さないから。ずっと俺のそばにいて」
晴翔の言葉に応えるように、奈緒はしがみつく腕に力を込めた。
◇
翌日、奈緒は大学を休んだ。夜通し晴翔に抱かれ、とても講義を受けられる状態ではなかったから。
友人たちには、体調不良で休むと伝えてある。前日も講義に出なかったせいか、友人も疑うことなく信じたらしく、お大事に、のメッセージが送られてきた。
「奈緒、何してるの?」
うしろからかけられた声に、奈緒はスマホから目を離して顔を上げる。
「皆から、お大事にねってメッセージ来てたから」
「午前中は奈緒、足腰立たなかったしな」
揶揄うような口調に、奈緒は少しだけ唇を尖らせる。
「晴翔くんが無茶するから……っ」
「だって、奈緒もノリノリだったじゃん。全然お仕置きにならなかったもんな」
顔をのぞきこまれて、奈緒は赤くなった頬を押さえた。その手には、銀の指輪が光っている。
晴翔はそんな奈緒の頭をくしゃりと撫でると、奈緒の手をとった。
奈緒の左手の薬指にはまっているのは、普段の奈緒の服装には似合わない、ごついデザインの指輪。晴翔が好んで着けるブランドのものだ。晴翔の左手にも、お揃いのデザインの指輪が光っている。
2人の関係を、晴翔はこれまで以上に大っぴらにすることにしたらしい。大きなダイヤのついた指輪と迷った結果、揃いの指輪を着けることにしたのだ。奈緒の指に光る指輪を、晴翔は満足そうに見つめる。
「指輪、絶対外すなよ。それも」
「うん」
笑顔でうなずく奈緒の首元で光るのは、華奢なチョーカー。バングルと揃いのそれは、ベッドの外でも奈緒を縛りつけておきたい晴翔の独占欲の現れ。見た目は可愛らしいアクセサリーだけど、2人にとってそれは、首輪であり手錠だ。
「よし、じゃあ行くか」
「行くって、どこに?」
奈緒は首をかしげた。昼から指輪などを買うために色々と連れ回されていたけど、まだ行くところがあるのだろうか。
「前に奈緒、行ってみたいって言ってただろ」
晴翔が口にしたのは、有名なテーマパークの名前。地方出身の奈緒にとって、一度は行ってみたい場所だった。
「今から行ったら、夜のショーには間に合うから」
どう?と笑いかけられて、奈緒は大きくうなずく。
「嬉しい!一度行ってみたかったんだ」
「良かった。これからは、ちゃんとデートもしような。もちろんバイトは大事だけど、たまには俺を優先してくれたら嬉しい」
「うん、これからはそうする」
差し出された手を握って、奈緒は笑った。
後日、2人が手を繋いで歩いているのを見た晴翔の友人たちは、一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐに受け入れた。
彼ら曰く、晴翔が奈緒にべた惚れなのは見ていて分かったし、今までクールな対応だった奈緒がついにデレた!ということで、むしろ祝杯をあげる勢いで喜んだとか。
ウィーンという無機質な機械音と、奈緒の喘ぐ声が、静かな部屋を満たしていく。
「も、晴翔くん、お願い……、止めて、」
「まだだめー。あと5回イったらな」
「そんな、もう無理っ」
「大丈夫。奈緒の『無理』は、もっとして、って意味なこと、知ってるんだから」
「あぁ……んっ」
敏感な場所に玩具を押しつけられて、奈緒は悲鳴をあげて身体を震わせる。
「奈緒、イく時はちゃんと言わないと。今のはカウントしないから」
「や、待って、だってもう頭の中ぐちゃぐちゃで分かんな……あぁっ」
立て続けの絶頂に、がくがくと震える奈緒の頬に触れて、晴翔は優しく笑う。
「ほらまた。ちゃんと言わないと、いつまでも終わらないよ?……あ、もしかしてそれが狙い?」
「ちが、違う……っ」
首を振って否定するけれど、奈緒の身体はもっと酷くされたいと疼いている。きっと晴翔は、それもお見通しだ。
だけど、一番欲しいものはもう決まっている。
奈緒は必死で息を整えながら、晴翔を見上げた。
「も、お願い……晴翔くん……が、欲しいのっ」
喘ぐように搾り出した声に、晴翔は息をのんで口元を押さえた。
「……っ、それはクるな」
少し余裕のなさそうな表情で、晴翔は奈緒の手を縛っていた紐を解く。
「奈緒、もっと抱きついて」
大好きな声が、耳元で囁く。奈緒は、晴翔の首に腕を回すとしっかりと抱きついた。
「この時だけは素直に抱きついてくれるよな、奈緒」
「ん……晴翔くん、あったかいから、くっつくの好き……、あ、んんっ」
話している最中に一気に貫かれて、奈緒の腕に力がこもる。
「俺も、奈緒に抱きつかれるの好き。必死にしがみついてくるところとか、本当可愛い」
「や、あ、待って、激し……」
揺さぶられて、奈緒の言葉は細切れに途切れる。晴翔は奈緒の言葉を奪うように深く口づけたあと、快楽に蕩ける顔をのぞきこんだ。
「奈緒、俺のこと好き?」
「あ、んんっ、好き、晴翔くんが、好き」
「もっと言って、奈緒」
「晴翔くん、好き、大好き……っ」
「可愛い、奈緒。絶対離さないから。ずっと俺のそばにいて」
晴翔の言葉に応えるように、奈緒はしがみつく腕に力を込めた。
◇
翌日、奈緒は大学を休んだ。夜通し晴翔に抱かれ、とても講義を受けられる状態ではなかったから。
友人たちには、体調不良で休むと伝えてある。前日も講義に出なかったせいか、友人も疑うことなく信じたらしく、お大事に、のメッセージが送られてきた。
「奈緒、何してるの?」
うしろからかけられた声に、奈緒はスマホから目を離して顔を上げる。
「皆から、お大事にねってメッセージ来てたから」
「午前中は奈緒、足腰立たなかったしな」
揶揄うような口調に、奈緒は少しだけ唇を尖らせる。
「晴翔くんが無茶するから……っ」
「だって、奈緒もノリノリだったじゃん。全然お仕置きにならなかったもんな」
顔をのぞきこまれて、奈緒は赤くなった頬を押さえた。その手には、銀の指輪が光っている。
晴翔はそんな奈緒の頭をくしゃりと撫でると、奈緒の手をとった。
奈緒の左手の薬指にはまっているのは、普段の奈緒の服装には似合わない、ごついデザインの指輪。晴翔が好んで着けるブランドのものだ。晴翔の左手にも、お揃いのデザインの指輪が光っている。
2人の関係を、晴翔はこれまで以上に大っぴらにすることにしたらしい。大きなダイヤのついた指輪と迷った結果、揃いの指輪を着けることにしたのだ。奈緒の指に光る指輪を、晴翔は満足そうに見つめる。
「指輪、絶対外すなよ。それも」
「うん」
笑顔でうなずく奈緒の首元で光るのは、華奢なチョーカー。バングルと揃いのそれは、ベッドの外でも奈緒を縛りつけておきたい晴翔の独占欲の現れ。見た目は可愛らしいアクセサリーだけど、2人にとってそれは、首輪であり手錠だ。
「よし、じゃあ行くか」
「行くって、どこに?」
奈緒は首をかしげた。昼から指輪などを買うために色々と連れ回されていたけど、まだ行くところがあるのだろうか。
「前に奈緒、行ってみたいって言ってただろ」
晴翔が口にしたのは、有名なテーマパークの名前。地方出身の奈緒にとって、一度は行ってみたい場所だった。
「今から行ったら、夜のショーには間に合うから」
どう?と笑いかけられて、奈緒は大きくうなずく。
「嬉しい!一度行ってみたかったんだ」
「良かった。これからは、ちゃんとデートもしような。もちろんバイトは大事だけど、たまには俺を優先してくれたら嬉しい」
「うん、これからはそうする」
差し出された手を握って、奈緒は笑った。
後日、2人が手を繋いで歩いているのを見た晴翔の友人たちは、一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐに受け入れた。
彼ら曰く、晴翔が奈緒にべた惚れなのは見ていて分かったし、今までクールな対応だった奈緒がついにデレた!ということで、むしろ祝杯をあげる勢いで喜んだとか。
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