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第6章 呉との闘い
86 モンスター討伐依頼 強敵との再会
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馬車が傾き始め、上り坂にさしかかってきたかなと思っているところへ、獣の遠吠えが聞こえてきた。
「出たぞ、全員戦闘準備!」
全員緊張した面持ちで馬車を下り始める。
馬車から下りると、そこはすでに戦場となっていた。
針葉樹林の隙間をうねるように通っている細い馬車道。その周辺、木々の合間からわらわらとモンスターが歩みを進めている。頭部はオオカミだが、二足歩行だ。歯の潰れかけている巨大な段平を手にしている。その数、50は下らないだろう。
村にあった書物で見たことがある。あれはたしかワーウルフというモンスターだ。魔力を多く持って生まれたオオカミがまれに進化し、ワーウルフとなる。知能はそれなりで、群れを組んで行商人などを遅う事が多い、好戦的なモンスターだ。
「後方支援部隊、放て!」
龍選隊のかけ声により、魔道士や弓使いの攻撃が放たれる。
近くにいたワーウルフが数匹倒れたが、かなりの数がまだ残っている。木や窪みなどにうまく身を隠し、まぬがれたようだ。
だが魔道士たちの攻撃はまだまだ止まない。俺の隣でも、千春さんが詩詠唱を始めていた。
『――私は魔道を行使する
止まぬ雨は我の心を写したるか
吹き荒む風は我が憎しみの現れか
我が血涙は土塊を砕き汝らを覆い
我が慟哭は暴風と為りて汝らを巻き上げん
汝らの悲鳴が我が愉悦
汝らの絶望が我が恍惚
怨嗟の囃子を打ち鳴らせ 心血の二重奏』
千春さんが唱え終わると同時に地面から唸るような震動。警戒して足を止めるワーウルフだが、それがいけなかった。ワーウルフの足下から吹き出した水は、渦を巻きながら上昇。そのまま他のワーウルフを大量に巻き込みながら上っていき、大木に激突したところでようやく霧散した。
水の竜巻が通過した後には、ワーウルフの無残な肉片が散乱している。
「凄いですね、千春さん! あれは水属性……いや、風属性ですか?」
「両方の属性を同時に発動してますです。復讐の魔道士と名高い倉敷水羽の詩詠唱です。この詩詠唱を本人以外に使えるのは私だけで、師匠にも使えないんです」
千春さんが得意げに言った。
これは物陰に隠れた敵を倒すのにもってこいだな。基礎修行が終わったらぜひ教えてもらおう。
「よし、敵は浮き足立ったぞ! 前衛部隊は各個撃破にかかれ!」
龍選隊の合図で前衛部隊が一斉に駆け出す。戦士たちの刃は面白いほど簡単にワーウルフたちをやっつけていく。先ほど千春さんが放った魔法で浮き足立っているようだ。50はあったワーウルフの頭数は、半分も残っていない。
俺も少しは仕事をしないと……お、ちょうどいいところに2体のワーウルフが。
「私は魔道を行使し続ける――サポート・ゴーレム」
起動したゴーレムの力で一気にワーウルフとの距離を詰める。
間合いに入るより少し早く、手前の一体が俺に気づいた。
俺はゴーレムで緊急停止。
ワーウルフが振り下ろした鈍刀が目標を見失い空を切る。ゴーレムに魔力を送り、再加速。ワーウルフの横を通り過ぎながらがら空きの胴へ横薙ぎに一閃。
切られたワーウルフが悲鳴を上げるより速く、次の目標に方向を定め、加速。
次のワーウルフが慌てて武器を振り下ろす。
先ほどのワーウルフと同じ、代わり映えしない攻撃手段だ。手慣れた冒険者であれば、深くを取ることは無いだろう。サポートゴーレムで身体能力を強化している俺であればなおさらだ。
先ほどと同じく緊急停止で刃を剃らす。刃が地面に突き刺さると同時に跳躍。ワーウルフを飛び越える瞬間に頭部へ振り下ろしの一撃。
地面へ降り立つと同時にワーウルフがばったりと倒れた。……人型の生き物を直接殺めるのはこれが初めてだ。知能の低いモンスターとはいえ、とてつもなく罪悪感がある。
《気に病むことはありませんマスター。ワーウフルは人々を襲う残虐な種族です。マスターのご活躍で多くの人が命を救われることになります》
(ありがとうコン先生。うーん、しかしこれは気持ちの問題だからなあ。いくら理性的に納得しようとしても、この罪悪感だけは拭えない気がします)
《マスタ。これから始まる呉と戦いで殺すのは人間です。マスタはその罪悪感という感情を捨てなくてはいけない》
(それは……考えないようにしていたんだが。……まあ、そうなるよな)
これから始まる戦争は、人間同士の争いだ。モンスターなんかでためらっているばあいでは無いだろう。
俺が煩悶していると、突然の頭痛に襲われる。この痛みは……まさか。
『おーい、あるじ。修行は中断じゃ。また影が出てくるぞ』
馬車から顔を出した鈴音が言った。あいつ、さぼっていやがったな。
『グロォォオオオオオ』
ん、なんだか懐かしい鳴き声。
声の正体へ視線を向ける。
いた、大型のモンスターが2体。馬車道の上から俺たちを見下ろしている。そのモンスターにはとても見覚えがある。
グレーターウルフ。俺がこの世界で始めに出会った強敵だ。
「出たぞ、全員戦闘準備!」
全員緊張した面持ちで馬車を下り始める。
馬車から下りると、そこはすでに戦場となっていた。
針葉樹林の隙間をうねるように通っている細い馬車道。その周辺、木々の合間からわらわらとモンスターが歩みを進めている。頭部はオオカミだが、二足歩行だ。歯の潰れかけている巨大な段平を手にしている。その数、50は下らないだろう。
村にあった書物で見たことがある。あれはたしかワーウルフというモンスターだ。魔力を多く持って生まれたオオカミがまれに進化し、ワーウルフとなる。知能はそれなりで、群れを組んで行商人などを遅う事が多い、好戦的なモンスターだ。
「後方支援部隊、放て!」
龍選隊のかけ声により、魔道士や弓使いの攻撃が放たれる。
近くにいたワーウルフが数匹倒れたが、かなりの数がまだ残っている。木や窪みなどにうまく身を隠し、まぬがれたようだ。
だが魔道士たちの攻撃はまだまだ止まない。俺の隣でも、千春さんが詩詠唱を始めていた。
『――私は魔道を行使する
止まぬ雨は我の心を写したるか
吹き荒む風は我が憎しみの現れか
我が血涙は土塊を砕き汝らを覆い
我が慟哭は暴風と為りて汝らを巻き上げん
汝らの悲鳴が我が愉悦
汝らの絶望が我が恍惚
怨嗟の囃子を打ち鳴らせ 心血の二重奏』
千春さんが唱え終わると同時に地面から唸るような震動。警戒して足を止めるワーウルフだが、それがいけなかった。ワーウルフの足下から吹き出した水は、渦を巻きながら上昇。そのまま他のワーウルフを大量に巻き込みながら上っていき、大木に激突したところでようやく霧散した。
水の竜巻が通過した後には、ワーウルフの無残な肉片が散乱している。
「凄いですね、千春さん! あれは水属性……いや、風属性ですか?」
「両方の属性を同時に発動してますです。復讐の魔道士と名高い倉敷水羽の詩詠唱です。この詩詠唱を本人以外に使えるのは私だけで、師匠にも使えないんです」
千春さんが得意げに言った。
これは物陰に隠れた敵を倒すのにもってこいだな。基礎修行が終わったらぜひ教えてもらおう。
「よし、敵は浮き足立ったぞ! 前衛部隊は各個撃破にかかれ!」
龍選隊の合図で前衛部隊が一斉に駆け出す。戦士たちの刃は面白いほど簡単にワーウルフたちをやっつけていく。先ほど千春さんが放った魔法で浮き足立っているようだ。50はあったワーウルフの頭数は、半分も残っていない。
俺も少しは仕事をしないと……お、ちょうどいいところに2体のワーウルフが。
「私は魔道を行使し続ける――サポート・ゴーレム」
起動したゴーレムの力で一気にワーウルフとの距離を詰める。
間合いに入るより少し早く、手前の一体が俺に気づいた。
俺はゴーレムで緊急停止。
ワーウルフが振り下ろした鈍刀が目標を見失い空を切る。ゴーレムに魔力を送り、再加速。ワーウルフの横を通り過ぎながらがら空きの胴へ横薙ぎに一閃。
切られたワーウルフが悲鳴を上げるより速く、次の目標に方向を定め、加速。
次のワーウルフが慌てて武器を振り下ろす。
先ほどのワーウルフと同じ、代わり映えしない攻撃手段だ。手慣れた冒険者であれば、深くを取ることは無いだろう。サポートゴーレムで身体能力を強化している俺であればなおさらだ。
先ほどと同じく緊急停止で刃を剃らす。刃が地面に突き刺さると同時に跳躍。ワーウルフを飛び越える瞬間に頭部へ振り下ろしの一撃。
地面へ降り立つと同時にワーウルフがばったりと倒れた。……人型の生き物を直接殺めるのはこれが初めてだ。知能の低いモンスターとはいえ、とてつもなく罪悪感がある。
《気に病むことはありませんマスター。ワーウフルは人々を襲う残虐な種族です。マスターのご活躍で多くの人が命を救われることになります》
(ありがとうコン先生。うーん、しかしこれは気持ちの問題だからなあ。いくら理性的に納得しようとしても、この罪悪感だけは拭えない気がします)
《マスタ。これから始まる呉と戦いで殺すのは人間です。マスタはその罪悪感という感情を捨てなくてはいけない》
(それは……考えないようにしていたんだが。……まあ、そうなるよな)
これから始まる戦争は、人間同士の争いだ。モンスターなんかでためらっているばあいでは無いだろう。
俺が煩悶していると、突然の頭痛に襲われる。この痛みは……まさか。
『おーい、あるじ。修行は中断じゃ。また影が出てくるぞ』
馬車から顔を出した鈴音が言った。あいつ、さぼっていやがったな。
『グロォォオオオオオ』
ん、なんだか懐かしい鳴き声。
声の正体へ視線を向ける。
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グレーターウルフ。俺がこの世界で始めに出会った強敵だ。
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