転生プログラマのゴーレム王朝建国日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~

堀籠 遼ノ助

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第2章 幼児期

15 師匠現る

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 柵の内側へ等間隔にずらりと並ぶ84体のサムライゴーレム達。4メートルの体躯を誇る巨体が、蒼白く光る瞳で油断無く森を警戒している様は圧巻だ。
 森谷村の村民たちはゴーレムから離れた場所で所在なさげにうろうろしている。これだけ造ってしまうと、村民さん達が活躍する場面は無さそうだなあ。

「凄いです! 武器を装備したゴーレムを作成するというだけでも信じられないのに、それを同時に80体以上も! これは国家機密級の魔法ですよ! 一体どうすればこんな魔法が使えるのです? ああもう、あたしを弟子にして下さいよ巧魔氏!」

 千春がものすごい興奮している。若干引くレベルだ。魔女っ子だけあって、魔法に対して興味が強いのかもしれない。

「――ほう、面白そうな話をしてるじゃねえか千春。じゃあ、あたしの弟子はやめるってんだね。迷惑しかかけねえバカ弟子が居なくなるってのはこっちも大歓迎だがよ、その前に、何かあたいに言い忘れてることは無いかクソ弟子?」

 千春の顔がピキっと音をたてて固まり、ギギギ……と後ろを振り返る。

 鈴音の後ろには腕を組み、仁王立ちしている金髪のすらりと背の高い女性が立っていた。肌は透き通るように白く、目鼻立ちは彫刻のように美しい。一点目を引くのが耳だ。耳のてっぺんがピンと尖っている。
 大変美しい女性だが、眉間にこれでもかというほどシワを寄せた般若はんにゃ顔のため、その美しさは絶賛台無し中である。

「し……師匠? 何でここにいるです? 私は一切連絡していないです」

「ほう、それがお前の最後の言葉か。お前の家族には、不慮の事故に巻き込まれ死亡したと伝えておこう」

「わーー?! ごめんなさいです! 森の主が消滅したのに連絡しなくてごめんなさいですぅ!!」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「鈴音様、お久しぶりです」

 金髪の美人おねーさんは、にこやかに鈴音に話しかけた。……その背後では千春がピクピクしているが。死んでないよね?

「んー? すまんが覚えておらん。何処かで会ったかのう?」
「いえ、かなり前の話ですのでお気になさらず。それにあたしもあの頃と比べて随分大きくなりましたから。名はエマニエルと言います。お見知り置きを」

エマニエルさんは鈴音ににこりと頬笑む。さっきまでとはまるで別人だ。何故か、鈴音に対して敬意を払っているように見える。

「エマニエル……あ! えんの国から来た小娘か! あれからもう200年以上はつか? 懐かしいのう。敬語なんぞ使いおるから気付かなんだ。昔通り気楽に話さんか」

(200年だと? こいつあ指定文化財級のババア――)

 鈴音の鋭利なデコピンが俺のおでこに突き刺ささり、もうもうと煙があがる。こいつ、幼児虐待という言葉を知らんのか?
 
「はは、あのころは礼儀を知りませんでしたので。鈴音様のお立場を知った以上、言葉を崩すなどとても……」
「ほう。 やんちゃ娘が随分と愁傷しゅうしょうになったもんじゃ。まあ、好きにせい」
「痛み入ります。――それで、今鈴音様が抱えておられる方が今回の契約者様でしょうか?」
「うむ。面白そうなやつだったからのう」
「そうですか。そのあたりの話を詳しくお聞きしたいのですが、どうやらそうも言っていられないようです」

 エマニエルさんは森の方へ視線を向ける。

「うむ。そろそろじゃな。ではワシと主は少し離れた場所で経過を見守るとしよう」
「分かりました。私とこのバカ弟子は魔法で迎撃します。……まあ、これだけ戦力があるとお役に立てるか微妙なところですが」

エマニエルさんは千春へ「オラ! 起きやがれバカ弟子!」とおしとやかに声をかけると、柵の方へ向かって歩きだした。
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