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第6章 呉との闘い
98 黒武者、黒妖
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魔法の衝撃によって、土煙が辺りを包み込んだ。
「や、やったか?」
完全なる負けフラグでボケてみるが、当然誰も反応してくれない。皆固唾を飲んで1点を見つめている。俺もおとなしく見守ることにする。
土煙が収まったとき、そいつは粛然とたたずんでいた。
――黒武者。
第一印象で誰もがそう思うであろう、出で立ちだ。
全身黒の甲冑に身を包んでいるが、動きやすさを重視しているのか、最低限の防具のみ。背はかなり高いが、鎧の袖から覗く腕を見れば、痩身だということが分かる。
右手に鉄扇を持ち、片手は後ろに組んでいる。そしてなにより目を引くのは顔に付けた《翁》の能面だ。
「お初にお目にかかります。我が主人」
「主人というのは僕のことでいいんですね?」
「もちろんでございます。主人様のお名前を伺っても?」
「巧魔といいます」
「巧魔様。・・・・・・我が主人に相応しい魔力を有しておられる。私の名は黒妖。以後お見知り置きを」
黒妖はそう言うと、俺に笑顔を向ける。
(うーん、なんというかうさんくさい奴だな。なんでおれの英霊の箱は一癖あるやつしか呼ばないんだろう・・・・・・)
「なんかうさんくさいやつじゃのう」
「こら鈴音! 俺がせっかく言わないでおいたのに!」
俺ははっとして黒妖の顔を覗き込む。
黒妖は依然としてにこにことしたままだ。それが余計に恐怖を増長させる。
鈴音は背中に氷でも入れられたように、びくんと総毛立った。
「分かる! ワシには分かる! こいつ絶対何か企みよるぞ! あるじ、こいつを送り返せ!」
「やめなさい! せっかくお越し頂いたんだから! ごめんなさい黒妖さん、こいつには後で言っておきますから」
「主人、私めの事は黒妖、とお呼び下さい。無理もありません、何の僥倖も無い私ごとき、当然の扱いでございます。――しかし」
黒妖は鉄扇を開いて顔を半分覆う。残りの瞳がねっとりと鈴音を見据えた。
「何のチャンスも与えられず、要望だけでいたずらに不当なご判断を下されるのはいかがな物かと存じます。もし、主人様の亡命例に対し、私の働きに不足が無ければ、その不当なご判断を改めて頂く必要がある。――そうですね、鈴音様とやら?」
「――ぐっ」
鈴音は猫の姿に変わると、ひらりと俺の背中に乗って黒妖の視線から逃れた。
「ワシはどうにもこいつが苦手じゃ。あとはあるじに任すぞ」
うーん、どうやら鈴音と黒妖の第一印象はお互いに最悪のようだ。
「黒妖さ・・・・・・いや、黒妖。僕は君を不当に扱ったりはしないよ」
「もったいなきお言葉を頂き、光栄にございます。して、私めをお作りになられたのには理由が御座いましょう?」
「ああ、そうだね。今は一刻を争う事態なんだ」
「なんなりとご命令を。主人様のお役に立てるゴーレムであることを証明致しましょう」
「うん、期待してるよ。それでさっそくお願いなんだけど――」
俺は乙葉が居なくなったこと、今の俺の力では調べきれないことをかいつまんで説明した。
「なるほど。そこで私めをお作りになったと」
「どうだい、いけそう?」
「そうですね・・・・・・それではこんな方法でどうでしょう」
ジャキッっと音が響く。
黒妖が右手にもった鉄扇を開いた音だ。その鉄扇を地面に向かって大きく振るうと、土煙が舞い上がった。
するとその土煙が墨汁でも差したかのようににじみ出し、それぞれが意思を持ったかのように羽ばたき出した。
「これは・・・・・・蝶?」
「左様。我が魔力で生み出された眷属に御座います」
気がつけば、俺たちは真っ黒な蝶に取り囲まれていた。
「なんじゃこれは」
鈴音が驚きを隠せない様子でそうつぶやいた。
また、千春さんも同様に驚いている様子だった。
「ゴーレムがゴーレムを召還? しかも、実態を持たない、魔力そのものに近いゴーレムだなんて。ゴーレムは土を媒介に生み出されるもの。実現不可能です」
「いや、これはれっきとしたゴーレムですよ」
俺はそう断言した。
「どういうことなのです?」
「さっき黒妖が鉄扇を使って起こした土煙。その土煙に魔力が込められていた。土煙一粒一粒にね」
「ご明察。さすがは我が主人様で御座います。この蝶は土煙を媒体に作られた微少なゴーレムです」
「こ、これ一つ一つがゴーレム?」
千春さんは空一面に羽ばたく黒い蝶を見渡している。
(しかし、何につかうんだろう。見たところ、戦闘能力は皆無だ。粒子化された魔力で形作られた蝶は、防御力なんて紙レベル。戦闘には使えなさそうだし・・・・・・コン先生、何か分かります?)
《蝶型ゴーレムそれぞれと黒妖に魔力の繋がりがあります。情報伝達経路かと推察されます》
「なるほど、つまり索敵用ゴーレムって訳か」
「そこまでおわかりになるとは。主人様の仰るとおり、これらは乙葉様を索敵する為の《目》で御座います。そちらにある――」
黒妖は乙葉が飛び立ったであろう、えぐれた大地を鉄扇で指し示す。
「乙葉様の魔力の残滓を蝶達に記憶させ、四方八方を探索させます」
「どのくらいで乙葉を見つけられそうかな?」
「10日あれば」
「うん、分かった。じゃあよろしく頼むよ」
「かしこまりました。では早速――」
黒妖が扇子を振り上げると、近くでホバリングしていた蝶々が散り散りになっていった。
「それでは、吉報有り次第参上つかまつります故・・・・・・」
黒妖はそう言い残し、足元に出現させた魔方陣の中へと消えていった。
「や、やったか?」
完全なる負けフラグでボケてみるが、当然誰も反応してくれない。皆固唾を飲んで1点を見つめている。俺もおとなしく見守ることにする。
土煙が収まったとき、そいつは粛然とたたずんでいた。
――黒武者。
第一印象で誰もがそう思うであろう、出で立ちだ。
全身黒の甲冑に身を包んでいるが、動きやすさを重視しているのか、最低限の防具のみ。背はかなり高いが、鎧の袖から覗く腕を見れば、痩身だということが分かる。
右手に鉄扇を持ち、片手は後ろに組んでいる。そしてなにより目を引くのは顔に付けた《翁》の能面だ。
「お初にお目にかかります。我が主人」
「主人というのは僕のことでいいんですね?」
「もちろんでございます。主人様のお名前を伺っても?」
「巧魔といいます」
「巧魔様。・・・・・・我が主人に相応しい魔力を有しておられる。私の名は黒妖。以後お見知り置きを」
黒妖はそう言うと、俺に笑顔を向ける。
(うーん、なんというかうさんくさい奴だな。なんでおれの英霊の箱は一癖あるやつしか呼ばないんだろう・・・・・・)
「なんかうさんくさいやつじゃのう」
「こら鈴音! 俺がせっかく言わないでおいたのに!」
俺ははっとして黒妖の顔を覗き込む。
黒妖は依然としてにこにことしたままだ。それが余計に恐怖を増長させる。
鈴音は背中に氷でも入れられたように、びくんと総毛立った。
「分かる! ワシには分かる! こいつ絶対何か企みよるぞ! あるじ、こいつを送り返せ!」
「やめなさい! せっかくお越し頂いたんだから! ごめんなさい黒妖さん、こいつには後で言っておきますから」
「主人、私めの事は黒妖、とお呼び下さい。無理もありません、何の僥倖も無い私ごとき、当然の扱いでございます。――しかし」
黒妖は鉄扇を開いて顔を半分覆う。残りの瞳がねっとりと鈴音を見据えた。
「何のチャンスも与えられず、要望だけでいたずらに不当なご判断を下されるのはいかがな物かと存じます。もし、主人様の亡命例に対し、私の働きに不足が無ければ、その不当なご判断を改めて頂く必要がある。――そうですね、鈴音様とやら?」
「――ぐっ」
鈴音は猫の姿に変わると、ひらりと俺の背中に乗って黒妖の視線から逃れた。
「ワシはどうにもこいつが苦手じゃ。あとはあるじに任すぞ」
うーん、どうやら鈴音と黒妖の第一印象はお互いに最悪のようだ。
「黒妖さ・・・・・・いや、黒妖。僕は君を不当に扱ったりはしないよ」
「もったいなきお言葉を頂き、光栄にございます。して、私めをお作りになられたのには理由が御座いましょう?」
「ああ、そうだね。今は一刻を争う事態なんだ」
「なんなりとご命令を。主人様のお役に立てるゴーレムであることを証明致しましょう」
「うん、期待してるよ。それでさっそくお願いなんだけど――」
俺は乙葉が居なくなったこと、今の俺の力では調べきれないことをかいつまんで説明した。
「なるほど。そこで私めをお作りになったと」
「どうだい、いけそう?」
「そうですね・・・・・・それではこんな方法でどうでしょう」
ジャキッっと音が響く。
黒妖が右手にもった鉄扇を開いた音だ。その鉄扇を地面に向かって大きく振るうと、土煙が舞い上がった。
するとその土煙が墨汁でも差したかのようににじみ出し、それぞれが意思を持ったかのように羽ばたき出した。
「これは・・・・・・蝶?」
「左様。我が魔力で生み出された眷属に御座います」
気がつけば、俺たちは真っ黒な蝶に取り囲まれていた。
「なんじゃこれは」
鈴音が驚きを隠せない様子でそうつぶやいた。
また、千春さんも同様に驚いている様子だった。
「ゴーレムがゴーレムを召還? しかも、実態を持たない、魔力そのものに近いゴーレムだなんて。ゴーレムは土を媒介に生み出されるもの。実現不可能です」
「いや、これはれっきとしたゴーレムですよ」
俺はそう断言した。
「どういうことなのです?」
「さっき黒妖が鉄扇を使って起こした土煙。その土煙に魔力が込められていた。土煙一粒一粒にね」
「ご明察。さすがは我が主人様で御座います。この蝶は土煙を媒体に作られた微少なゴーレムです」
「こ、これ一つ一つがゴーレム?」
千春さんは空一面に羽ばたく黒い蝶を見渡している。
(しかし、何につかうんだろう。見たところ、戦闘能力は皆無だ。粒子化された魔力で形作られた蝶は、防御力なんて紙レベル。戦闘には使えなさそうだし・・・・・・コン先生、何か分かります?)
《蝶型ゴーレムそれぞれと黒妖に魔力の繋がりがあります。情報伝達経路かと推察されます》
「なるほど、つまり索敵用ゴーレムって訳か」
「そこまでおわかりになるとは。主人様の仰るとおり、これらは乙葉様を索敵する為の《目》で御座います。そちらにある――」
黒妖は乙葉が飛び立ったであろう、えぐれた大地を鉄扇で指し示す。
「乙葉様の魔力の残滓を蝶達に記憶させ、四方八方を探索させます」
「どのくらいで乙葉を見つけられそうかな?」
「10日あれば」
「うん、分かった。じゃあよろしく頼むよ」
「かしこまりました。では早速――」
黒妖が扇子を振り上げると、近くでホバリングしていた蝶々が散り散りになっていった。
「それでは、吉報有り次第参上つかまつります故・・・・・・」
黒妖はそう言い残し、足元に出現させた魔方陣の中へと消えていった。
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