転生プログラマのゴーレム王朝建国日誌~自重せずにゴーレムを量産していたら大変なことになりました~

堀籠 遼ノ助

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第4章 呉の進出

51 チェックメイト

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「ほらー、触っちゃうぞー」

 正義さんはいつの間にか俺のすぐ左手に回り込んでいた。ってか言い方。変態か。

『ライト!』

 俺の体が突き動かされるようにして右へ飛びのく。

「その魔法自分にも使えるんだー。アイデアマンだね君は」
「プッシュ!」
「おおっとー」

 正義はのんびりした口調で話ながらも追撃の手を緩めない。ゆっくり歩いているようにしか見えないのだが、気がつけばすぐ近くにいるのだ。

『プッシュ!』
「はっはっはー、もうその技は見慣れちゃったよー」

 くそー、のらりくらりと避けられて全然当たらない。本来ならデキム・ウォーターで逃げ場を狭めたいところだが、いかんせん殺傷能力が高すぎる。ん? 殺傷能力か……。よし。

「あれ? もう諦めたのかい? それじゃあ捕まえちゃおうかなー」

『クリエイト・ミドルゴーレム・武器50』

 ずん、と地面に振動が走り、正義が歩みを止める。地面から沸いた50体の土人形。それぞれ剣、鎧、盾を一式装備している。
 クラス定義により、50体のミドルゴーレムを同時召喚出来る。
 魔法量の消費が半端ではなく、一日一回の使用が限度だが、正義さんを止めるには使うしかあるまい。

「これはしんどい。規格外だねまったく」
「東商店仕入用ゴーレムですが、鎮圧にも使えます。お怪我をしないようにお気をつけください」
「気にするなって。どうせ触れはしないよん」

 むかっ。じゃあもう遠慮しないぞ!

 俺は正義さんに向かって指を指す。

『ゴーレム、全員制圧モードへ移行』

 ゴーレム達の蒼い眼に強い光が灯り、一斉に襲いかかった。

「おおー! 流石にヤバイかなー」

 やりすぎたか? と思った瞬間、破壊音と共に砂煙が舞った。
 犯人は正義さんだ。ゴーレムの攻撃をかわしながら、掌底で次々とゴーレムを破壊している。

「よっ、と」

 後ろから襲い掛かったゴーレムの攻撃をくるりと反転して躱し、そのまま掌底を顔へ叩き込む。後ろに目でも付いているんだろうか。だが――

「お! そうきたか」

 正義の顔に引き攣った笑みが浮かぶ。
 背後から襲い掛かったゴーレム、その後ろに回り込んだ俺が現れたからだ。ゴーレムはただの陽動だ。虚を突いたこのタイミングでは、どんなに鍛え上げた人間でも避けられるものではない。

(チェックメイトです、正義さん)

『プッシュ!』 

 俺は正義さんの腹部、ちょうど鳩尾を狙って空気弾を放つ。
 空気弾は外れる筈も無く命中。可哀そうだが、夕飯は食べられまい。
 だがその直後、正義さんの姿が掻き消えた。
 
 へ? いったいどこに?

 首に衝撃。
 ぐらりと視界歪む。
 後ろに回り込まれたか。あの一撃を食らって動けるなんて完全に想定外だ。

「最後の一手はよかったねー。でも、油断大敵だよ。躱されたあとの事も考えておかないとね。戦闘は最後まで気を抜いちゃ駄目さ。じゃあ、巧魔っち。またあとでねー」

 俺の意識はそのまま戻ることなく、そのまま深く深くへと沈んでいった。
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