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本編
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12歳で殿下の傍に治癒係としてあがり、発作の度に彼にキスをした。天使のように美しい少年に恋するのに時間はかからなかった。そんな殿下と共に学院に通えることに、一時期私は有頂天になっていた。
だが、そんな私の惨めな鼻っぱしは、入学直後、メラニア様の登場であっさりと折れることになる。
「あなたがユーファミア様ですね。ずっとお話してみたいと思っていましたの。殿下の尊いお命を救ってくださる方ですもの、わたくしにとっても恩人ですわ」
初対面でありながら、爵位がずっと下の私の手を取り、琥珀色の瞳を潤わせながら微笑む少女は、もうひとりの天使そのものだった。メラニア様は私が殿下の傍にあがることになった経緯についてもよくご存知だった。
「ご実家の窮状を救うために、御身を王家に捧げる覚悟をなさったのですね。なんと勇敢で優しい心根なのでしょう。その家族思いの献身と王家への忠誠心に、殿下もわたくしも、必ず報いて差し上げるつもりですわ」
殿下の訳ありの側仕えという私に声をかける者もない中、メラニア様だけは話しかけ、微笑みかけてくれた。殿下の魔法実技の授業中、見学に回るしかない私のために、メラニア様は空き時間を利用して授業内容の解説をしてくれたりもした。魔法知識のない私にそんなことをしても無駄ではというマーガレット様たちの助言にも首を振り、「実にもならぬ授業を殿下のために付き合ってくれているのだから、少しでも退屈しのぎになればと思って。殿下は素敵な方ですけど、そういったことには疎いところがおありでしょう?」と微笑むのだ。
王太子殿下と幼馴染。小さい頃から王宮にもよく遊びにこられ、王妃様とも親交があったと聞く。殿下の魔力暴走が日常化し始めてからは何かの妨げになってはと王宮にあがることを遠慮してそうだが、本来なら殿下の一番近くで過ごすはずの人だ。
私はもう一度深く息をつき、参考書としてお借りした書籍のページを開いた。知識を総動員させれば、ひとつかふたつくらい、レポートにまとめられる箇所があるかもしれない。
そのまま読み進めるうちに、昼時間になった。いつもは殿下にカイエン様、メラニア様たちと一緒に食事をとる。だが先ほどのマーガレット様たちの叱責を思い出し、このままここでやり過ごそうと思った。一食抜くくらい問題はないし、午後はマナーや語学の授業だからお腹がすいたとしてもなんとかなる。殿下の傍を意図的に離れることは本来なら許されないが、魔力暴走の発作が昨晩あったばかりだから、大目に見てもらえるはずだ。
だが無断欠席はよくない。私はカバンから一枚の用紙を取り出した。伝令魔法を魔法陣化したものだ。これがあれば魔法が使えなくても伝令を飛ばすことができる。最も小さな魔法陣なので、学院の中くらいの範囲でしか使えない。
この魔法陣は、離れているとき用にと殿下から頂いた。けれど私が飛ばす相手はカイエン様だ。一度殿下の言葉を鵜呑みにして殿下宛に飛ばしたら、メラニア様にそれとなく注意された。
「皆が見ている中、突然ユーファミア様からの伝令が届いたものだから、殿下が少しご気分を害されたみたいなの。あまり目立つ行動は避けられた方がよろしいかと思いますわ」
それ以降は、殿下と必ず行動をともにされているであろうカイエン様宛に飛ばすようになった。今も、別で昼食をとらせてほしい旨をしたため、魔法陣を発動させる。
そのまま伸びをしつつ、ページをめくった。もう少しで1冊目を読み終えるところだ。もっと時間がかかるかと思ったが、難解な割に興味深い内容で、思っていた以上に進みがよかった。レポートの1本はこのテーマで書こうかしらと思いついたとき、いきなりノックの音が響いた。驚きながら扉を見つめると、「ユーファミア嬢?」と聞き慣れた声がした。
だが、そんな私の惨めな鼻っぱしは、入学直後、メラニア様の登場であっさりと折れることになる。
「あなたがユーファミア様ですね。ずっとお話してみたいと思っていましたの。殿下の尊いお命を救ってくださる方ですもの、わたくしにとっても恩人ですわ」
初対面でありながら、爵位がずっと下の私の手を取り、琥珀色の瞳を潤わせながら微笑む少女は、もうひとりの天使そのものだった。メラニア様は私が殿下の傍にあがることになった経緯についてもよくご存知だった。
「ご実家の窮状を救うために、御身を王家に捧げる覚悟をなさったのですね。なんと勇敢で優しい心根なのでしょう。その家族思いの献身と王家への忠誠心に、殿下もわたくしも、必ず報いて差し上げるつもりですわ」
殿下の訳ありの側仕えという私に声をかける者もない中、メラニア様だけは話しかけ、微笑みかけてくれた。殿下の魔法実技の授業中、見学に回るしかない私のために、メラニア様は空き時間を利用して授業内容の解説をしてくれたりもした。魔法知識のない私にそんなことをしても無駄ではというマーガレット様たちの助言にも首を振り、「実にもならぬ授業を殿下のために付き合ってくれているのだから、少しでも退屈しのぎになればと思って。殿下は素敵な方ですけど、そういったことには疎いところがおありでしょう?」と微笑むのだ。
王太子殿下と幼馴染。小さい頃から王宮にもよく遊びにこられ、王妃様とも親交があったと聞く。殿下の魔力暴走が日常化し始めてからは何かの妨げになってはと王宮にあがることを遠慮してそうだが、本来なら殿下の一番近くで過ごすはずの人だ。
私はもう一度深く息をつき、参考書としてお借りした書籍のページを開いた。知識を総動員させれば、ひとつかふたつくらい、レポートにまとめられる箇所があるかもしれない。
そのまま読み進めるうちに、昼時間になった。いつもは殿下にカイエン様、メラニア様たちと一緒に食事をとる。だが先ほどのマーガレット様たちの叱責を思い出し、このままここでやり過ごそうと思った。一食抜くくらい問題はないし、午後はマナーや語学の授業だからお腹がすいたとしてもなんとかなる。殿下の傍を意図的に離れることは本来なら許されないが、魔力暴走の発作が昨晩あったばかりだから、大目に見てもらえるはずだ。
だが無断欠席はよくない。私はカバンから一枚の用紙を取り出した。伝令魔法を魔法陣化したものだ。これがあれば魔法が使えなくても伝令を飛ばすことができる。最も小さな魔法陣なので、学院の中くらいの範囲でしか使えない。
この魔法陣は、離れているとき用にと殿下から頂いた。けれど私が飛ばす相手はカイエン様だ。一度殿下の言葉を鵜呑みにして殿下宛に飛ばしたら、メラニア様にそれとなく注意された。
「皆が見ている中、突然ユーファミア様からの伝令が届いたものだから、殿下が少しご気分を害されたみたいなの。あまり目立つ行動は避けられた方がよろしいかと思いますわ」
それ以降は、殿下と必ず行動をともにされているであろうカイエン様宛に飛ばすようになった。今も、別で昼食をとらせてほしい旨をしたため、魔法陣を発動させる。
そのまま伸びをしつつ、ページをめくった。もう少しで1冊目を読み終えるところだ。もっと時間がかかるかと思ったが、難解な割に興味深い内容で、思っていた以上に進みがよかった。レポートの1本はこのテーマで書こうかしらと思いついたとき、いきなりノックの音が響いた。驚きながら扉を見つめると、「ユーファミア嬢?」と聞き慣れた声がした。
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