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サイドストーリー
新緑の森の君へ6
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私の魔力暴走は所構わず起きる。当然学院でも何度かその苦しみに襲われた。そのたびにユーファミアが私を救ってくれる。
治療中は人払いが徹底され、私とユーファミアしかいない空間だ。魔力暴走に喘ぐ私の唇に、柔らかい熱が押し当てられる。溢れかえる魔力が一気に吸い取られる感覚が気持ちよくて、膝に乗り上げた彼女を思わず抱き寄せる。新緑の森を思わせる清しい香りが鼻腔をくすぐり、しなやかな肢体に触れた手からも熱持った体温が染み込んでくる。息を吸うタイミングで一瞬離れ、また近づく彼女の唇。粘膜音がやけに響いて耳朶をくすぐる。
視覚も、聴覚も、味覚も、臭覚も、触覚も。すべてが彼女で満たされる至福のとき。楽になりつつある意識の中で、もういいだろう、と欲望が首をもたげる。
私は意識して彼女を強く抱きしめた。びくりと跳ねる小さな背中。膝の上に感じる彼女のしなやかな太ももの重みまでもが愛しくて仕方ない。
卒業まであとわずか。6年耐えたのだ。もういい加減許されるだろう。そう自分を擁護しながら、目を開けて彼女の長い睫毛をとらえる。抱きせた胸元に感じる柔らかい感触に溺れそうになりながら、彼女の唇を貪った。
「殿っ……!」
一瞬離れた彼女の唇が惜しくて何度も追いかけては、舌を差し込む。ここは学校で、目の前には制服に身を包んだ好きな女性がいて、私の膝の上で身体を密着させながらキスをしていてーー。こんなシチュエーションを堪能しないなんて、不能もいいところだ。調子にのった私は片腕で彼女を抱き込むと、もう片方の手を彼女の脇腹に添えた。そのままするりと撫で上げると、彼女の震えがいっそう高まった。それでも律儀に唇だけは離すまいと、私の熱を追いかけてくる。それがまるで私自身を追い求めているようで、ずくりと身体の中の熱が呼応した。
卒業まであとわずか。私の魔力暴走は治り、彼女は自由の身となる。そうなれば私は自由に彼女に愛を囁ける。魔力がどうのこうのと言い訳をすることもなく、いつでも好きなだけ彼女を抱きしめ、その唇を求められる。この手が、彼女のさらに美しい内なる部分にも触れられるーー。
その期待に胸を躍らせていた私は、肝心の言葉を彼女にかけることがないままでいることに気づいていなかった。いや、気づいてはいたのだ。だが、それをどうやって伝えればいいのかわからずにいた。
「カーティス、いい加減になさい」
母の叱責に私は苦虫を噛み締めたようにふてくされ、そっぽを向いた。
「私も陛下も、何もあなたの思いを否定などしませんよ。ユーファミアは素晴らしい女性です。彼女が嫁いできてくれることには賛成なのです。なのに肝心のあなたがまだ思いを告げられていないというのはどういうことですか」
「……いろいろ準備があるんです」
「準備が必要なのは女性の方でしょう!? 卒業後の婚約発表の準備や、その後の結婚式の準備。今から行ったとしても最低2年はかかります」
「……なっ! 2年はかけすぎでしょう。結婚は1年後にします」
「ですから準備が間に合わないといっているのです! ウェディングドレスを作るのにどれだけかかると思っているのですか。それに貴族たちへのユーファミアの売り込みにも時間が必要です」
「1年です。それ以上は待てません! ドレスなど、何を着てもユーファミアは綺麗だからなんだっていいでしょう」
「なんてことを……! あなたみたいな甲斐性なしにユーファは嫁がせなくてはいけないなんて! やはり彼女にはもっと相応しい相手がいるわ。えぇ、今からでも間に合いますとも。お相手を見繕いましょう」
「余計なことをしたら王宮を焼き尽くしますよ」
「あなたって子は……! 母を脅すつもりですか!」
何かと横槍を入れてくる両親を躱すのが手間になってきたのと、いい加減彼女の卒業後の去就をはっきりさせなければならないこともあり、とりあえず王都内に別邸を用意させた。任期満了となった彼女はいったん王宮を辞し、時期を見て婚約発表をするための仮住まいだ。
「いろいろ不本意な面もありますが、とりあえずは良しとしましょう」
別邸準備が整った段階で再び母に報告すると、ひとまず及第点はもらえた。すべては順調なはずだった。私がその別邸を、ユーファミアになんの断りもなく準備した挙句、未だなんの返事も貰えていないこと以外は。もちろん、その真実を母に打ち明けられるはずもない。
治療中は人払いが徹底され、私とユーファミアしかいない空間だ。魔力暴走に喘ぐ私の唇に、柔らかい熱が押し当てられる。溢れかえる魔力が一気に吸い取られる感覚が気持ちよくて、膝に乗り上げた彼女を思わず抱き寄せる。新緑の森を思わせる清しい香りが鼻腔をくすぐり、しなやかな肢体に触れた手からも熱持った体温が染み込んでくる。息を吸うタイミングで一瞬離れ、また近づく彼女の唇。粘膜音がやけに響いて耳朶をくすぐる。
視覚も、聴覚も、味覚も、臭覚も、触覚も。すべてが彼女で満たされる至福のとき。楽になりつつある意識の中で、もういいだろう、と欲望が首をもたげる。
私は意識して彼女を強く抱きしめた。びくりと跳ねる小さな背中。膝の上に感じる彼女のしなやかな太ももの重みまでもが愛しくて仕方ない。
卒業まであとわずか。6年耐えたのだ。もういい加減許されるだろう。そう自分を擁護しながら、目を開けて彼女の長い睫毛をとらえる。抱きせた胸元に感じる柔らかい感触に溺れそうになりながら、彼女の唇を貪った。
「殿っ……!」
一瞬離れた彼女の唇が惜しくて何度も追いかけては、舌を差し込む。ここは学校で、目の前には制服に身を包んだ好きな女性がいて、私の膝の上で身体を密着させながらキスをしていてーー。こんなシチュエーションを堪能しないなんて、不能もいいところだ。調子にのった私は片腕で彼女を抱き込むと、もう片方の手を彼女の脇腹に添えた。そのままするりと撫で上げると、彼女の震えがいっそう高まった。それでも律儀に唇だけは離すまいと、私の熱を追いかけてくる。それがまるで私自身を追い求めているようで、ずくりと身体の中の熱が呼応した。
卒業まであとわずか。私の魔力暴走は治り、彼女は自由の身となる。そうなれば私は自由に彼女に愛を囁ける。魔力がどうのこうのと言い訳をすることもなく、いつでも好きなだけ彼女を抱きしめ、その唇を求められる。この手が、彼女のさらに美しい内なる部分にも触れられるーー。
その期待に胸を躍らせていた私は、肝心の言葉を彼女にかけることがないままでいることに気づいていなかった。いや、気づいてはいたのだ。だが、それをどうやって伝えればいいのかわからずにいた。
「カーティス、いい加減になさい」
母の叱責に私は苦虫を噛み締めたようにふてくされ、そっぽを向いた。
「私も陛下も、何もあなたの思いを否定などしませんよ。ユーファミアは素晴らしい女性です。彼女が嫁いできてくれることには賛成なのです。なのに肝心のあなたがまだ思いを告げられていないというのはどういうことですか」
「……いろいろ準備があるんです」
「準備が必要なのは女性の方でしょう!? 卒業後の婚約発表の準備や、その後の結婚式の準備。今から行ったとしても最低2年はかかります」
「……なっ! 2年はかけすぎでしょう。結婚は1年後にします」
「ですから準備が間に合わないといっているのです! ウェディングドレスを作るのにどれだけかかると思っているのですか。それに貴族たちへのユーファミアの売り込みにも時間が必要です」
「1年です。それ以上は待てません! ドレスなど、何を着てもユーファミアは綺麗だからなんだっていいでしょう」
「なんてことを……! あなたみたいな甲斐性なしにユーファは嫁がせなくてはいけないなんて! やはり彼女にはもっと相応しい相手がいるわ。えぇ、今からでも間に合いますとも。お相手を見繕いましょう」
「余計なことをしたら王宮を焼き尽くしますよ」
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