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第四章 間違いと変化
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ジェスが訪ねてきたのはモニカがここに来てから二日後のことだった。モニカとしては、もう少し早くに詳細を聞くつもりだっただけに、少しだけ、裏切られた気分だったが、マミと言う侍女のおかげで何とか不安を押し殺すことができていた。
とは言え、ジェスの姿を見た瞬間、とてもホッとしたのは事実だけれど。
「すまない。来るのが遅くなった。」
ジェスはマミに胡乱な目を向けたが、すぐにモニカに向き直り、謝罪した。
侍女がお茶を用意しに部屋を出て行くと、彼は周りを気にしながら、ヒソヒソ声で、早口になった。
「あのマミとかいう女性を信じすぎないようにしろ。仲が良いと聞いている。彼女は、自分を聖女だと思い込み、こちらに接触してきた過去がある。新しい聖女となったモニカに何かしてくる可能性はない、とは言い切れないから。」
「え、そうなの?そんな素振りなかったよ?」
「んー、前の時に希望をへし折られてるから、もう夢は見ないとは思うんだけど、わからないからな。」
今までジェスと組んで依頼をこなしていて、彼自身が信頼に足る人物だという、評価は出ている。モニカとしては、マミと言う侍女のことも信じたいが、利用されて、最後に裏切られたりするのは嫌なので、そこは彼の言う通りちゃんと警戒は怠らないようにしよう。
「あと、ずっと身分を偽っていて、すまなかった。」
顔を上げた後の、捨てられた子犬感満載のその顔に、笑いが込み上げる。
「話せなかったんでしょ?いいよ。こっちも気づかなかったんだから。どこかの貴族かな、とか思ってたけどまさかまさか王族だったとはね。
ま、それも私みたいな庶民が、わかるわけはないんだけどさ。
それで?ちゃんと説明してくれるんでしょう?」
「うん。モニカに話すために、私自身さっき説明を受けてきた。
この間、帝国側からの干渉について、話していたのを覚えているか。」
「あの、勇者と聖女を送り込んでくるって話?」
「ああ、あの話。実は既にあるようでな。魔王やら勇者やらの話はないんだが帝国から我が国へ内密に話し合いを行いたいと、要望が来ている。返事はまだしていないが、多分断れない。この時何らかのアクションがある筈なんだ。だから、君をハリボテの聖女にするまでに時間はそんなに多くない。
あと、これは君には関係ない話なんだが、私は王太子妃に借りがある。昔色々やらかして、気まずいし、近づくことも今はできない。
彼女の為になることなら、命だってかける覚悟はあるのだが、それを君にも押し付ける気はない。だから、これから先、できる限りは協力してほしいが、命の危険や、絶対に無理!となったら無理せず逃げてくれ。後は私がどうにかするから。」
「わかった、そうする。」
ジェスの言った言葉は、モニカを助ける為の言葉に違いなかった。自分とは違い、モニカには選べる選択肢があると。
けれど、何故かモニカには違う意味に聞こえた。まるで、ここから入ってくるな、とばかりに一線を引かれてしまったような感覚に陥って足元がふわふわした。
気まずい空間に現れたマミが入れてくれたお茶はとても美味しくて、肩の力が抜けた。
ジェスはまたマミに静かに目を向けた後、お茶を一口飲む。モニカはあんなにジェスを待ち侘びておきながら、もう帰ってくれないかな、と失礼なことを考えていた。
とは言え、ジェスの姿を見た瞬間、とてもホッとしたのは事実だけれど。
「すまない。来るのが遅くなった。」
ジェスはマミに胡乱な目を向けたが、すぐにモニカに向き直り、謝罪した。
侍女がお茶を用意しに部屋を出て行くと、彼は周りを気にしながら、ヒソヒソ声で、早口になった。
「あのマミとかいう女性を信じすぎないようにしろ。仲が良いと聞いている。彼女は、自分を聖女だと思い込み、こちらに接触してきた過去がある。新しい聖女となったモニカに何かしてくる可能性はない、とは言い切れないから。」
「え、そうなの?そんな素振りなかったよ?」
「んー、前の時に希望をへし折られてるから、もう夢は見ないとは思うんだけど、わからないからな。」
今までジェスと組んで依頼をこなしていて、彼自身が信頼に足る人物だという、評価は出ている。モニカとしては、マミと言う侍女のことも信じたいが、利用されて、最後に裏切られたりするのは嫌なので、そこは彼の言う通りちゃんと警戒は怠らないようにしよう。
「あと、ずっと身分を偽っていて、すまなかった。」
顔を上げた後の、捨てられた子犬感満載のその顔に、笑いが込み上げる。
「話せなかったんでしょ?いいよ。こっちも気づかなかったんだから。どこかの貴族かな、とか思ってたけどまさかまさか王族だったとはね。
ま、それも私みたいな庶民が、わかるわけはないんだけどさ。
それで?ちゃんと説明してくれるんでしょう?」
「うん。モニカに話すために、私自身さっき説明を受けてきた。
この間、帝国側からの干渉について、話していたのを覚えているか。」
「あの、勇者と聖女を送り込んでくるって話?」
「ああ、あの話。実は既にあるようでな。魔王やら勇者やらの話はないんだが帝国から我が国へ内密に話し合いを行いたいと、要望が来ている。返事はまだしていないが、多分断れない。この時何らかのアクションがある筈なんだ。だから、君をハリボテの聖女にするまでに時間はそんなに多くない。
あと、これは君には関係ない話なんだが、私は王太子妃に借りがある。昔色々やらかして、気まずいし、近づくことも今はできない。
彼女の為になることなら、命だってかける覚悟はあるのだが、それを君にも押し付ける気はない。だから、これから先、できる限りは協力してほしいが、命の危険や、絶対に無理!となったら無理せず逃げてくれ。後は私がどうにかするから。」
「わかった、そうする。」
ジェスの言った言葉は、モニカを助ける為の言葉に違いなかった。自分とは違い、モニカには選べる選択肢があると。
けれど、何故かモニカには違う意味に聞こえた。まるで、ここから入ってくるな、とばかりに一線を引かれてしまったような感覚に陥って足元がふわふわした。
気まずい空間に現れたマミが入れてくれたお茶はとても美味しくて、肩の力が抜けた。
ジェスはまたマミに静かに目を向けた後、お茶を一口飲む。モニカはあんなにジェスを待ち侘びておきながら、もう帰ってくれないかな、と失礼なことを考えていた。
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