ファーストキスは草の味

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好みのタイプではなかった

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「叔父さん、どうにかしてください。」
リカルドの母は、学園長と陛下の姉に当たり、陛下と学園長は、この姉に頭が上がらない。リカルドに対しては姉に似ていて可愛いと、子供の頃から可愛がってくれていた。

学園長は綺麗な迫力ある目を細めて、またこいつか、と呟いた。

「まだ彼女のことを諦めてなかったんだね。」

リカルドはミハイルが学園に入るなり、貴族令嬢達を集めて、初恋の君探しをしていたのを知っている。

中には確かに薬草に詳しいご令嬢もいたにはいたが、見た目が違うと言って、発見までには至らなかった。彼女で終わらせていれば良かったのだ。彼女こそが彼を救った張本人だったのだから。

ただ、彼女は彼には地味すぎる、と評された。リカルドは従兄弟の見る目のなさに呆れたが、同時に有り難いと思った。

先程も、彼女を見ることもせずに、ただのモブとして扱ったのだ。リカルドは彼の間違いを正してやる気もなければ、そんな義務もない。

「さっさと彼の好みの女性を薬師に仕立て上げ、与えてはどうでしょう。そういえば辺境伯家にはとても美しいご令嬢がいるようですよ。」

「辺境伯家は、ご令嬢の年が合わないだろう。」
「いえ、年齢など些細なことですよ。若くなくても若く見えれば良いのです。キスをやり直したいというのであれば、彼の方でしたら、経験豊富ですから、案外可愛がってもらえるのではないでしょうか。」


「本人を見つけても、好みじゃないと一蹴したぐらいだからな。タイプであれば少しぐらい齟齬があっても、問題ないか。」

辺境伯家のご令嬢は未婚だが、内縁の夫が二人いる。一人は辺境騎士の中で一、二を争うほどの強さを誇る者。もう一人は側近の一人でどちらとも長い付き合いであるが、その辺境という場所故に将来のことを考えられずに結婚せずにいたらこの年まで来てしまった形だ。勿論毒草やら薬草には強く、王妃とは歳の離れた友人で、一時期よく王宮には出入りしていた。とはいえ、王子と王妃だと、王妃から数えた方が歳は近く、王宮に出入りしていた頃には既に成人していた。

見た目は若く見える彼女は、既に三十路を過ぎているが、王子と同じ歳だと言っても納得するほどの美貌を保っている。

ミハイルのような若い男を誑かすのも、夫を手玉に取るのも、彼女にはお手のもので、ミハイルと会わせれば、ミハイルの方が一方的に骨抜きになることは確実だった。

そうなればお飾りの夫として、受け入れられ、内縁の夫達の隠れ蓑として嫉妬や羨望の的となり、多くの者から狙われる立場になるだろう。

「彼は可愛らしいタイプより妖艶な美女が好きですからね。愛があれば歳の差なんて気がつかないでしょう。」

リカルドの提案を否定しないあたり、学園長の中でも答えは出ているようで。

「なら、場所を提供しよう。生徒会として悪いがもう少しだけ、手伝ってくれ。」

リカルドはこれがミハイルに振り回される最後になりそうだと確信して頷いた。
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