見えるものしか見ないから

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真実③

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「僕にも内緒にしていたなんて、酷いな。」

王太子殿下はシンシアに恨み言をいうが本当は怒ってはいない。彼女が自分の為にしてくれたことだとわかっているからだ。シンシアはいつも我が身を犠牲に自分を支えてくれていた。今までの感謝を対等な形で返せるようになったことに、改めて感謝する。それもあの愚かな弟のおかげであると、思うと、彼の存在を漸く認められるようで、少し心は軽くなった。

「だってあの方、気を抜くと誰かを好きになってしまう、みたいな方なんですもの。レオに纏わりつかれるのは嫌だったのですわ。」

「漸く名前で呼んでくれた。もう僕の名前を忘れてしまったのかと思っていたよ。」

レオナルド王太子殿下は泣きそうになるのをグッと堪え、シンシアに笑いかける。

「忘れたりしないわ。憂いが無くなるまでは不安だったのよ。最後まで。いつかひっくり返されるような気がして。」

シンシアの懸念は、全てが周りから綺麗さっぱりいなくなるまで続いた。

王妃はあの後、予定より少し早く、事故で亡くなった。伯爵家が全てを捨てて、逃げたことを知った時に、後先考えずに彼を追った結果、野盗に襲われたのだ。





王妃の死とほぼ同時期に辺境へ身を置くことになったミカエルは、向かう道中、アリスによく似た下位貴族を見かける。

彼女は辺境に住む子爵夫人で、騎士の夫と共に子供達と仲良く暮らしていた。

ミカエルは、彼女のその姿にアリスが生きていたら、と思いを馳せる。

いくら似ていても、自分以外の男に笑いかけるような彼女はアリスではない。しかもあんなに子供がいるのだ。アリスなどではあり得ない。

肩を落として馬車に戻るミカエルに彼女達は最後まで気づきもしなかった。







「でも、意外だったよ。君が彼女を助けるだなんて。」



シンシアはそう言われて初めて自分の行いが、他人にはそう見えるのかと理解した。


「助けた、とは違うのよね。彼ら、いえ、彼は特に彼女を純粋な好意とやらで手に入れたかった訳ではないみたいだったし。アレはちょっとした意趣返しみたいなものなの。人は信用すべきではないわよ、みたいな。

まあ責められたところで、知らなかったとシラを切れば良いだけだから。」

「彼は彼女を愛していたわけではないのか。だとしたら、あの顔は演技か……いや、気がつかなかったな。」

王妃の命でつけられていた彼女の護衛は、アリス嬢に恋焦がれていたように思えたのだが。

「あれはある意味恋には違いないと思うわ。だけど、私達の知る恋とは性質が違うものだと思って。アレは私達が知らなくて良いことよ。」

彼には昔、シンシアも告白されたことがある。ミカエルに理不尽なことを、させられて疲弊していたあの日。彼はシンシアに彼の性癖ごと自分の思いを打ち明けたのだった。勿論、丁重にお断りをした。

彼は理不尽な目にあっている女の子を見るのが好きなのだ。彼女が元気になった途端興味を失い、彼女が悲惨な状況にある時には優しくなる。

彼女は賢いからいつかその事実に気がつくだろう。

彼に優しくされたいならば、悲劇のヒロインをずっと続けなくてはならない。そうやって生きてきた彼女には、彼ほどぴったりな人はいないと思うのだ。

それは優しさからだろうか。シンシアは確信が持てないでいた。





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