美少年は男嫌い

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幸せ(隼人)

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朝起きて、好きな人の寝顔が側にある、そんな幸せを今噛み締めている。伸ばしていた前髪を切ると、少し幼く見える光は美少年の類ではあるが、以前ほどの危なっかしさはない。無防備な寝顔も、以前なら少し怯えが混じっていて、可哀想に見えたが、今は惰眠を貪る猫のように幸せそうだ。

起こさないように、ひっそりとキスをする。起きないことを確認しながら、二度寝をするために、目を閉じた。

二度目に目覚めたら、光の顔が目の前にあったのは、さっきと同じ。でも今回は目が開いていて、真っ直ぐにこっちを見ている。

「可愛い……」
言ってから気づいた。

「ごめん。嫌だったよな。可愛いって言われるの。」

光は目を伏せて少し動きを止めた。

「いや、もう今更だし。隼人さんになら、言われても良い。どう言う意味か流石にわかるから。」

表情が戸惑っているような恥じらっているようなように見えて、愛しさが増す。

「何で、お前……こんな可愛いの……」
光を抱きしめて、おでこにキスをすると、もぞもぞと光が抱きついてきた。

「今日……どうする?」
考えてみると、休みの日には朝からたくさん働いて一日中家事やら何やらで疲れてしまうのが多かった。


「久しぶりに、デートするか。……昼から。」
「昼から?まだ寝るってこと?」
「寝るって言うか、」
「……朝から元気だね。」
「ごめんな。」
「それ、謝る気ないよね。」

呆れた顔を浮かべながらも、嫌がってはいないように見える。正直、光と一緒にただ眠るだけでも十分幸せだが、本当にそうしてしまうと、何だか光自身が不安に思うんじゃないか、と、これでも気を遣ってるつもり。


いや、欲に忠実すぎるか?

「隼人さん、好き。」
「知ってる。」

少し意地悪を言ってみる。一瞬泣きそうな顔になって、笑う顔が好き。

「俺も好きだよ。光のこと、一生揶揄いたいぐらい好き。」
「それ、喜んでいいの?」
「喜んでいいんじゃない?」
「そうかなぁ。」


一応、プロポーズみたいなものだったのだが、気づかれていない。まあ、少しずつ言い聞かせていけばいいか。

「じゃあ、僕は一生隼人さんに文句を言えば良い?」

俺はニヤけ顔を我慢できなかった。

「それで良い。」
「本当に?文句だよ?良いのー。」
「良いよ。一生側にいてくれるんだろ。他には何も望まない。」
「本当……隼人さんって、調子いいよね。」
突然の、悪口に驚くが、泣きそうな顔をしている光をみると、俺は安堵した。

「何で泣きそうになってんだ。」
「隼人さんもでしょ。」

言われて気がついた。幸せに慣れていない二人はあまりの幸せに遭遇すると、泣き笑いみたいな顔になるらしい。

「だって、幸せだ。」
光は返事をしなかった。代わりに俺を抱きしめて珍しく光からキスをしてきた。

本当に、幸せすぎて、泣きそう。

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