幼馴染は不幸の始まり

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本編

噂の幼馴染

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アリス嬢と初めて会ったのは、彼女が解毒剤を飲み、体力をある程度回復してからだった。

骨と皮だけだった彼女が、ようやく人間らしい見た目になったと言われていたが、実際に会ってみると、まだまだ細い。元はミリアとよく似た美少女らしいが、面影すらもなく、ほっそりしすぎた風貌は、奇妙の一言に尽きる。

アリスはクラリッサと会うなり美しいカーテシーを見せて、姉との差を示した。


ミリア嬢がカーテシーをするところを見たことはあるが、こんなに完璧ではなかった。やはりダニエルの調べた通り、教育を受けて来たのは此方の方だと納得した。

アリス嬢は、クラリッサがイーサンの婚約者だと知り、顔を青ざめさせた。嫌なことを思い出させたことを申し訳なく思っていると、アリス嬢は青い顔のまま、クラリッサに頭を下げて謝ってくれた。

「申し訳ありません。私達のトラブルにつきあわせてしまって。」

「悪いのは婚約者とあなたのお姉様であって、あなたではないので大丈夫ですよ。あなたこそ、大丈夫なのですか。」
「私は、解毒剤をいただいたので。あとは体力さえ戻れば、大丈夫です。」

彼女は自分が表情に乏しい事を謝って来た。「表情筋って言うのがうまく動かないんです。笑いたくてもうまくできなくて。悲しいとか嫌だとかそう言うのもうまく表現できなくて。すみません。」

「そんなのはこれからでいいのよ。もうあの家には戻らなくていいんでしょう?」

「勿論。アリス嬢はこのまま体力の回復に努めて貰って、来るべき時に備えて貰う。彼女を逃してくれた侍従も、保護してるしね。

彼方も、アリス嬢の不在が今じわじわと効いてきてるみたいだから。もうすぐボロが出てくるよ。今危ないのは、アリス嬢ではなくて……クラリッサだね。」

「え?私?」

ダニエルは、アリス嬢を失ったイーサンがクラリッサに執着してくるのではないか、またずっと隠していた本性を見せてくるのではないか、と心配していた。

「そういえば、アリス嬢が居なくなってから我が家へ来た時にちょっと怖い顔をしていたわ。アレが彼の本性だって、ことね。」

「だから、できるだけ、彼には会わないようにしてほしい。例えば、何か理由をつけて、物理的に距離を取るんだ。もしどうしても会わないといけない時は俺が護衛に付くから、心配するな。」

「ありがとう。じゃあ、とりあえず両親に相談してみるわ。婚約の件も合わせて聞いてみる。」

婚約は家同士のものであっても、クラリッサの気持ちを尊重してくれる両親が、彼の本性を知れば、きっと婚約をどうにかしてくれるはずだ。

「ミリア嬢の件はどうなっているの?」
厳密には彼女の婚約者の兄の件。

「毒は一致した。今は入手方法を探しているところだ。ミリア嬢の交友関係がとんでもなく広くてね。特定するのに、時間がかかっている。どうやら誰かの入れ知恵があったようで。」

「姉だけだと考えつかないことばかりですから。考える人がいたんでしょう。」

アリス嬢の表情がないのは、表情筋云々ばかりではないようだ。姉の話になると、毎回彼女は淡々とした話し方になる。虐げられていたのであればその態度は当然だ。

アリス嬢は今は王宮内で保護されている。第二王子のご学友の死に関連した生き証人アリスを保護するために、一番安全なところと考えた結果らしい。だけど正直に言って、誰がミリア嬢をけしかけたのかわからない状況では、どこも安全とは言い難い。

「ミリア嬢は?どちらに?」
「それが、彼女もまだ見つかっていないんだ。協力者のところか、友人のところか。全く見つからないと言うことなら、多分隠されているんだろう。」
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