幼馴染は不幸の始まり

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本編

友人と好奇心

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「お嬢様、お手紙が届いております。」
最近新しく家令の下についた侍従が、クラリッサ宛の手紙を持参する。

「ありがとう。」
差出人は学園で仲良くなった友人の伯爵令嬢。彼女は学園の図書室で、恋愛小説をきっかけに仲良くなった。溌剌とした可愛らしい女性である。

「ジュリエットから茶会の招待だわ。行きたいけど、これってアルバート様に護衛してもらわないといけないのかしら。」

勝手に出歩いて叱られるのは嫌だし、困るので聞いてみると、護衛としては勝手についていくので気にしなくて良いらしい。クラリッサにはわからないのだが、アルバートはクラリッサがどのように過ごしていても、何らかの仕組みで護衛ができるという。

詳細を説明されたからといってそれを此方が理解できるとは思わない。

クラリッサは当初の約束通り、アルバートにはあまり関わらないようにした。

ジュリエットの茶会が行われるカリウス伯爵家は広い薔薇園を所有しており、茶会の前後には見せて貰えるらしく、その機会が来るのを楽しみにしていた。

ジュリエットは隣国に従姉妹がいて、そのご令嬢が此方に遊びに来ているらしく、紹介したいと言ってきた。

「ジュリエットの従姉妹も刺繍が大好きなんですって。この機に仲良くなりたいから、何か作って持っていこうかしら。何か隣国で流行っているものはない?」

「隣国での流行はわかりませんが、薔薇園にあやかって薔薇の刺繍を施すのはいかがですか?」

「薔薇!良いわね。糸が必要だわ。赤と言っても一色では立体感がないから何色かで作らないと!」

茶会の人数は、主催のジュリエットと従姉妹のご令嬢と、隣国からついて来た仲良しのご令嬢だそうで。三枚ぐらいならこの期間でも可能だと、頑張って作ることにした。



刺繍は初めから上手だった訳ではない。ただ集中して手を動かす作業を繰り返すたびに、腕がどんどん上達していった。厳密には、婚約者が中々来なかったり、キャンセルされたりしている待ち時間の間に、刺繍が上手くなったクラリッサと、待ち時間で恋愛小説に詳しくなったジュリエット。互いに婚約者に恵まれていなかったことが仲良くなったきっかけなんて、とても皮肉だ。

ジュリエットは恋愛小説みたいな婚約破棄に巻き込まれて、当時の婚約者とはお別れをしているが、新たな婚約者は決めないのか気になるところだ。

ジュリエットの元婚約者を誑かした女狐は、他にも多くの婚約を壊した責任を取り、修道院に入ったそう。

ジュリエットは彼女が本当にちゃんと修道院に行くかどうか見届けたのだと言うから、その行動力に驚いた。

「あれだけのことをして、修道院で終わりだから。恨んだ相手に刺されたり襲われたりしないのかな、と思って。別に助けたいとかではないのよ。野次馬って言うの?あんな感じよ。趣味が悪いでしょう。」

彼女もまた政略結婚の相手をそこまで思ってはいなかった為に、彼女に対して特に恨みなどは抱かなかったらしい。

「彼女がどうこうじゃなくて、彼女に対する態度が熱狂的な人が何人かいたの。彼らが暴走して、彼女を逃したりしたら厄介じゃない?だから、見届けた、って言うね。我ながらお人好しなことをしたわ。」

それが丁度前回の茶会での話。



そして、今。ジュリエットは挨拶もそこそこに、キラキラした瞳で今度はクラリッサを見つめている。

「最近、あなたの周りが楽しいことになっていると聞いて飛んできたのよ。」
ジュリエットの従姉妹も、その友人も彼女と同じ目をしていたから、逃してくれないとはわかっていた。

彼女は生粋の恋愛小説脳。勝手に話せないと、断ったはずなのに、最終的に折れたのはクラリッサの方だった。
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