幼馴染は不幸の始まり

mios

文字の大きさ
24 / 30
本編

悪い人

しおりを挟む
昔から誰かの望む誰かになるのが得意だった。姉の望む妹、両親の望む娘、使用人達が望むお嬢様、人によって、敵対心のない友人や、可愛い女の子など、元の自分なんてわからなくても構わない程に自分を演じていた。皆簡単に騙されてくれたのに。

一人だけ、それが通用しない人物がいた。幼馴染のイーサンだ。彼は決してアリスを信用せず、いつも監視して来た。彼を懐柔するために、彼の婚約者に近づこうとしても、決して会わせて貰えない。ばかりか、私が動こうとすれば、婚約者を放ってまで釘を刺しに来る始末。

婚約者はイーサンがアリスを好きだと勘違いしているのに、それには気付かないところがイーサンの悪いところ。彼は良くも悪くも一生懸命で、周りを冷静に見ることができない。あまりにも此方を監視するから、それを利用して、彼にストーカーされているとミリアに話せば、自分を妹思いの姉だと自負している彼女は騙されてくれた。

皆を利用できるのは、自分にだけ許されたこと。皆の願望通りに動いた結果だ。イーサンだけが、と言ったがもう一人思い通りに動いてくれない人がいたわ。

私にこの話を持ってきたダニエル・ファーリ。彼はイーサンの所謂ライバルで、彼の婚約者である伯爵令嬢を手に入れようとしていた。最初の取り決め通りにしないと、ダニエルに殺されてしまうが、そうするつもりは毛頭ない。

ダニエルはわかっていないが、彼の近くにいたら、彼を敵に思う人が多くて、理由も知らないのに、皆が此方を助けてくれようとする。

対ダニエルでは、仲間が多い分、多分私が少しだけ強い筈。

イーサンはあれだけ婚約者を守るために走り回ったのに、結局は婚約解消となった。恨まれる前に、彼の正気を失わせたことには、同情するが、後悔はない。そもそも、アリスを危険視せずに、仲間になってくれたなら、幼馴染として愛してあげたのだ。身近な男性として、恋人にもしてあげた。

だけど、彼はアリスを選ばなかった。なら、仕方ないじゃない?

味方ではない、ということは、敵にしかならないのだから。

でも、これがまさかの悪手だった。イーサンを失った辺りから徐々に、綻びが見え始めた。あれだけ妹を可愛がっていたミリアがアリスを優先しなくなり、あれだけ仲が良かったヴィクトルが、何故かあの女、イーサンの元婚約者に興味を示し、護衛と称して近くにいるようになった。

残りは第二王子、という間抜けだけ。皆共通の敵に立ち向かうところだったじゃない?キエス侯爵家に大切な人を奪われて復讐する筈だったじゃない。あのクラリッサとかいう女はちょうど良いから濡れ衣を着せて、彼女殺しの犯人にしよう、って話し合った……いや、これはまだ言ってなかったかもしれない。だけどどの道、彼女はキエス侯爵令嬢に殺させる贄でしかなかったのに。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

真実の愛の祝福

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
皇太子フェルナンドは自らの恋人を苛める婚約者ティアラリーゼに辟易していた。 だが彼と彼女は、女神より『真実の愛の祝福』を賜っていた。 それでも強硬に婚約解消を願った彼は……。 カクヨム、小説家になろうにも掲載。 筆者は体調不良なことも多く、コメントなどを受け取らない設定にしております。 どうぞよろしくお願いいたします。

幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。 いつもありがとうございます。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

婚約破棄、別れた二人の結末

四季
恋愛
学園一優秀と言われていたエレナ・アイベルン。 その婚約者であったアソンダソン。 婚約していた二人だが、正式に結ばれることはなく、まったく別の道を歩むこととなる……。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

処理中です...