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エミリー
警告音
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ジョージア先輩にカイル・ディロンについて、悩みを打ち明けた日から、カイルを近くで見かけることはなくなった。もしかしたら、先輩が何とかしてくれたのだろうか。
エミリーは生徒会での作業中にお礼を言おうと思っていたのに、その日を境にジョージア先輩にもあまり会えなくなった。
理由はすぐに分かった。他国からの留学生が来るからだ。ジョージア先輩は公爵家の人だから、他国の王族の学園での助け役として、指名されることは多いらしい。
友人のカレン嬢から先輩の不在の際の、エミリーの仕事について事細かな指示書を渡された。先輩の字は綺麗で、読みやすくわかりやすい。
カレン嬢や、キャサリンも自分達の分が終われば手伝ってくれる。エミリーは一人で作業しているのが気にならないくらい、忙しくしていた。
いつものように、調べ物をしに図書館へ向かう途中、何人かの女生徒に声をかけられる。
それは、いつも先輩に声をかけてくるご令嬢達で、これまで生徒会で調べ物をする時は、先輩と一緒だったので、声をかけられても先輩が対処してくれていたのだが、今日は様子が違った。
先輩に対するような優しげな可愛らしい表情ではなく、一見直視を躊躇うほどの、強い表情に、エミリーは何となく状況を理解した。
「トラッド伯爵令嬢、少しお時間いいかしら。」
有無を言わさないように回り込まれ、これはいよいよ危険では?と周りを見渡すと、エミリーの目線の先に、見たことのない物体が現れた。
(何、アレ)
エミリーの手を後ろ手に拘束しようとしていた御令嬢達は、エミリーが抵抗もせず、その物体に釘付けになっていることに気が付かない。単に抵抗を諦めたのだと口角を上げた。
エミリーの近くに浮いているものは、人の目を象ったように見えて、何だか奇妙だ。
「貴族科一年、リリアンヌ・ミロード、ライラ・コールウェル、エマ・クローヴ。学園長室までお越しなさい。繰り返します。貴族科一年……」
「呼ばれてますわよ。」
校内放送が鳴り響き、呼ばれているのは今まさにエミリーになにかをしようとしているこの三人。
エミリーの後ろに回ったライラ嬢と、エマ嬢は、命令されただけなのか、リリアンヌ嬢を見つめたまま不安げにしている。
少しして、教師が偶々通りかかり、御三方は強制的に、学園長室に呼ばれて行った。
「大丈夫だった?」
話したことはないが、図書館で良く見かけるこの教師は、エミリーを助けてくれたようだった。
「ありがとうございました。」
助けられたのは、校内放送のおかげでもあるが、偶々通りかかってくれたこそ、彼女達から助かったのだから、お礼を言うと、穏やかに微笑まれた。
「助かってよかった。警告音は、小さかったからね。間に合って良かった。」
ひとしきりお礼を言い、教師がいなくなれば、今度は先輩と、ディロン侯爵令息がいた。先輩は顔を見合わせると、ホッとした顔になり、労ってくれたが、ディロン侯爵令息は、エミリーの顔を凝視したと思ったら、何も言わずに去っていく。
タイミングが良すぎることに違和感を覚えていたのに、衝撃でさっさと忘れてしまった。
それにしても、警告音って何?
エミリーはまたもや謎に包まれることになった。
エミリーは生徒会での作業中にお礼を言おうと思っていたのに、その日を境にジョージア先輩にもあまり会えなくなった。
理由はすぐに分かった。他国からの留学生が来るからだ。ジョージア先輩は公爵家の人だから、他国の王族の学園での助け役として、指名されることは多いらしい。
友人のカレン嬢から先輩の不在の際の、エミリーの仕事について事細かな指示書を渡された。先輩の字は綺麗で、読みやすくわかりやすい。
カレン嬢や、キャサリンも自分達の分が終われば手伝ってくれる。エミリーは一人で作業しているのが気にならないくらい、忙しくしていた。
いつものように、調べ物をしに図書館へ向かう途中、何人かの女生徒に声をかけられる。
それは、いつも先輩に声をかけてくるご令嬢達で、これまで生徒会で調べ物をする時は、先輩と一緒だったので、声をかけられても先輩が対処してくれていたのだが、今日は様子が違った。
先輩に対するような優しげな可愛らしい表情ではなく、一見直視を躊躇うほどの、強い表情に、エミリーは何となく状況を理解した。
「トラッド伯爵令嬢、少しお時間いいかしら。」
有無を言わさないように回り込まれ、これはいよいよ危険では?と周りを見渡すと、エミリーの目線の先に、見たことのない物体が現れた。
(何、アレ)
エミリーの手を後ろ手に拘束しようとしていた御令嬢達は、エミリーが抵抗もせず、その物体に釘付けになっていることに気が付かない。単に抵抗を諦めたのだと口角を上げた。
エミリーの近くに浮いているものは、人の目を象ったように見えて、何だか奇妙だ。
「貴族科一年、リリアンヌ・ミロード、ライラ・コールウェル、エマ・クローヴ。学園長室までお越しなさい。繰り返します。貴族科一年……」
「呼ばれてますわよ。」
校内放送が鳴り響き、呼ばれているのは今まさにエミリーになにかをしようとしているこの三人。
エミリーの後ろに回ったライラ嬢と、エマ嬢は、命令されただけなのか、リリアンヌ嬢を見つめたまま不安げにしている。
少しして、教師が偶々通りかかり、御三方は強制的に、学園長室に呼ばれて行った。
「大丈夫だった?」
話したことはないが、図書館で良く見かけるこの教師は、エミリーを助けてくれたようだった。
「ありがとうございました。」
助けられたのは、校内放送のおかげでもあるが、偶々通りかかってくれたこそ、彼女達から助かったのだから、お礼を言うと、穏やかに微笑まれた。
「助かってよかった。警告音は、小さかったからね。間に合って良かった。」
ひとしきりお礼を言い、教師がいなくなれば、今度は先輩と、ディロン侯爵令息がいた。先輩は顔を見合わせると、ホッとした顔になり、労ってくれたが、ディロン侯爵令息は、エミリーの顔を凝視したと思ったら、何も言わずに去っていく。
タイミングが良すぎることに違和感を覚えていたのに、衝撃でさっさと忘れてしまった。
それにしても、警告音って何?
エミリーはまたもや謎に包まれることになった。
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