初恋は叶わないと知っている

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エミリー

違和感

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エミリーが家に帰ると、ルカからの手紙が届いていた。こちらからはあの日のことを何も話していないのに、ルカはあの御令嬢達に絡まれた日のことを知っていた。

ルカはあの日の原因は先輩にあると、彼を非難し、彼の補佐を辞めるようにと手紙に書いていた。

確かに競争率の高い先輩の周囲には彼のことを好きな方で溢れていて、こちらに対する目は厳しいが、エミリーにはやましいことなどない。辞めるとなると、不当な圧力に屈するようで嫌だし、何よりエミリーの能力をきちんと評価してくれた先輩に申し訳ない。

……確かに、婚約者候補の一人にしてほしい、とは言われたりしたけど。

実際に、ジョージアとの会話を思い出してみると、どれも仕事に関することばかり。私的なことといえば、今日の悩み相談ぐらいで、恋愛など持ってのほかだ。

こちらに事情があるように、先輩側にだって事情があるに違いない。何せ、エミリーに候補の打診をするぐらいだ。

もし、先輩と婚約したら、一方的にこちらにしか利のない、婚約になってしまう。先輩に私が何かできることがあるか?

エミリーは自分でいうのも悲しくなるが、地味で平凡だ。着飾れば何とかなるかというと、そうでもない。それこそ、エミリーに絡んできた侯爵家のリリアンヌ様などは、誰もが振り向く美少女で、誰から見ても先輩と並べばお似合いだと言うだろう。

だからといって、ルカに至っては、一緒にいて楽だから、という理由で婚約を打診され、しかも知らない平民の子に負けた存在である。

疲れた頭でつらつらと考えていると、お客様の来訪を伝えられる。相手はわかっている。カイル・ディロンの従者、イアンは、慣れた様子で手紙を受け取ると、一礼した。

「体調がお悪いのでしたら日を改めます。」

エミリーの顔色の悪さに、すぐに判断して、出ていこうとするイアンを呼び止めてあの、謎の物体について、聞くと、何故か驚かれてしまった。だが、

「私からは何も。どうしても、お気になるようでしたら、我が主人に取り次ぎます。あの方でしたら、お話しても構わないと思いますし。」

「それはディロン侯爵令息のことですか?」

「いえ、まあ厳密には異なりますが、カイル様でも構いません。今日は難しそうですので後日改めて、手紙の返事とその謎の物体について、話す機会を設けますね。」

イアンはそこまでいうと、では寝てください、とエミリーを気遣い、出て行ってしまった。

手紙の仲介をしてくれるのはありがたいが、エミリーのところへ態々来てくれるのは申し訳ないと思う。何か理由がない限りは二度手間ではないのだろうか。

忙しそうなイアンに悪いな、と思いつつ、今一瞬浮かんだ違和感には目を瞑った。

(何か、理由がないと、わざわざエミリーを仲介しない?)

理由について考えても、今はまだわからない。エミリーは無駄と、思いながらも目を瞑る。ただ先程までの怯えは既になくなっていたので、ぐっすりと眠ることに成功した。




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